<ひと ゆめ みらい>社会人から決意の大相撲 秋場所で序二段優勝・日翔志(24)=立川市出身

2021年11月22日 07時06分

立川出身の日翔志=本人提供

 今年の夏場所で初土俵を踏み、秋場所では七戦全勝で序二段優勝を果たした。「うれしいよりも安堵(あんど)感が大きい」。名門の日大相撲部出身だが、卒業後は就職して社会人の道に進んだ。再び土俵を目指したのは、新型コロナウイルス禍がきっかけだった。
 立川市出身。相撲に出合ったのも、この土地だ。相撲好きだった祖父の影響で四歳上の兄が先に習い始め、「一人じゃ嫌だから」と一緒に稽古に通うように。当時小学一年で、体は小さかったが、負けん気の強さは備わっていた。以来、生活に常に相撲があった。兄の後を追うように同じ高校、大学に進学。大学四年時には、兄の代と同じ団体優勝を四年ぶりに成し遂げた。
 大学まで「王道を進んできたと思う」。このまま大相撲を目指すか、指導者の道を目指すか。悩んだ末に昨年四月、誘われていた日大事業部に就職し、実業団の選手兼コーチの道を選んだ。その直後にコロナ禍に見舞われた。
 在宅勤務となり、稽古も全くできなかった。自宅で一人で過ごす日々が続き、初めて相撲と離れて暮らした。一方、制限下で開かれた大相撲では同級生や先輩、後輩らが奮闘していた。「血が騒ぐ感じがした」。自分と向き合う時間は、大相撲への思いを強くした。
 昨年十二月、天皇杯に出場。約一年ぶりの大会に「生きてるなって感じた」。見失った目標を再び手にした実感だった。周囲からはプロの厳しさを心配する声もあったが「死ぬ時に後悔するくらいなら挑戦しよう」と覚悟を決めた。
 名古屋場所は序ノ口で二敗に。一日一番の独特な緊張感。「これを十五日間続ける関取の精神力」を思い知り、気持ちを切り替えて挑んだ秋場所だった。「学生出身と注目されやすい分、名古屋場所では期待を裏切った気持ちだった。優勝で少しは格好ついたかな」
 今月の九州場所で三段目に昇進したが、現在は休場中。「幕下からが勝負と思う。しっかり治して関取を目指したい」と意気込む。(佐々木香理)
<ひとし> 本名は沢田日登志。埼玉県草加市の追手風部屋所属。1997年8月生まれ。埼玉栄高、日大相撲部出身。趣味は音楽。ジャンルを問わず「ごりごりのヒップホップも、昭和の歌謡曲も聴きます」。

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