世帯年収1834万円でも子ども2人分…なのに働く低所得層に届かぬ懸念 政府の現金給付案 大筋了承

2021年11月17日 20時23分
 自民党は17日の党会合で、18歳以下の子どもや住民税非課税世帯、困窮学生への10万円給付を含む経済対策案を大筋了承した。党内手続きを経て19日に閣議決定する。与党協議開始から約10日間の議論で決まった給付金制度は、所得制限のかかる世帯より収入の多い共働き世帯にも支給される一方で、住民税を納めながらも生活が苦しい低所得層に給付金が渡らないなど、国民の間に不公平感が生じる懸念がぬぐえないまま。与野党からも疑問視する声が上がっている。(村上一樹)

◆子どもへの給付

 子どもへの給付は、迅速な支給を理由に児童手当の仕組みを利用。夫婦でより高い収入(社会保険料や税金が引かれる前の金額)を得ている方が所得制限の対象になるが、与党は「対象の9割をカバーできる」(自民党の茂木敏充幹事長)としている。
 だが、18歳以下の子ども2人の夫婦の場合、片方が年収961万円でもう片方が無収入だと給付を受けられず、共働きで夫婦それぞれが年収917万円なら子ども2人分が給付される。児童手当の対象は15歳以下で、今回対象に含まれる16~18歳への給付手続きには結局、時間がかかりかねない。
 自民党の高市早苗政調会長は17日の会合で「世帯合算ではなく、主たる所得者の金額で判断すると、不公平な状況が起きる」と指摘。福田達夫総務会長も16日、「個人的には(世帯で)合算した方が当然だと思う」と異論を唱えた。
 日本政策金融公庫の調査によると、19歳以上の大学生がいる家庭は在学費用だけで年間1人100万円以上の負担がかかるのに、子ども向け給付の対象外。政府・与党は困窮学生にも10万円を給付するとしているが、基準は未定だ。
 政府が昨年実施した学生向け緊急給付金では、家庭から自立しアルバイトで学費を賄っていることや「修学支援制度」を利用していることなど厳しい要件が課された。対象者は大学生や短大生らの1割にも満たなかったとみられ、十分な支援だったとは言い難い。

◆低所得者層への給付

 住民税非課税世帯には10万円が給付される一方、住民税を課されていても年収100万~200万円程度にとどまり、全国で数百万世帯あるとされる「ワーキングプア」層には給付が行き渡らない懸念もある。
 立憲民主党の長妻昭氏は「コロナ禍で格差が急拡大して困難な状況に陥っている人には子どもでもそうでなくても、緊急に支援しないといけない」と指摘している。
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◆950万円を917万円と訂正

 この記事の見出し、文中、図で当初、子ども2人分が給付される共働き夫婦世帯の年収として「共働き年収1900万円」「それぞれが950万円」と例示したのは誤りでした。
 政府・与党は18歳以下の子どもに対する10万円給付の所得制限について、児童手当の制度を活用する方針です。児童手当の所得制限の目安は、夫婦と子ども2人の世帯で収入が少ない方の配偶者の年収が103万円以下の場合、「年収960万円未満」です。
 しかし、配偶者の年収が103万円を超えると、所得制限の目安は「年収917万8000円」に下がります。まだ政府は10万円給付の基準を正式に決めていませんが、児童手当に当てはめた場合の冒頭に示した例では、この目安を超えているため対象外になります。

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