再出発!千葉競輪 国際基準の250メートル木製バンク ダンスあり、カラフル照明あり
2021年10月14日 07時09分
最先端の音響と照明が盛り上げるスピード感あふれるレース。千葉競輪場(千葉市中央区)の跡地に、ドーム形の自転車競技施設「TIPSTAR(ティップスター) DOME(ドーム) CHIBA」がオープンした。二日から国際基準の一周二百五十メートルバンクで競う日本初の競輪「250競走」が始まった。脱「ギャンブル」イメージで、新たなファンの獲得を目指す。
◆脱「ギャンブル」色
ここはコンサート会場か? 大音量とともに赤、青、緑などの色とりどりのレーザー照明が縦横無尽に駆け巡り、バンク内側のスペースでは専属グループがダンスを披露した。ファッショナブルなユニホームに身を包んだ選手たちは、思い思いの決めポーズで入場。レースを終えると、「気分が盛り上がった」「選手冥利(みょうり)に尽きる」と笑顔を見せた。
ここまでの道のりは平たんではなかった。一時は存続の危機にあった千葉競輪。初日の第一レースで一位となった中村浩士選手(43)=日本競輪選手会千葉支部長=は、「やってきて良かった」と声を詰まらせた。
ドームの前身施設「千葉競輪場」は一九四九(昭和二十四)年に開設。市直営の公営競技「千葉競輪」が始まり、八〇年代には現在は日本競輪選手養成所長を務める滝沢正光さん=千葉県八千代市出身=らの活躍などで、首都圏屈指の人気を誇った。売り上げの一部は市の一般会計に繰り入れられ、市の財政運営にも貢献した。
だが、売り上げは九五年度の六百五十二億円をピークに、二〇一七年度は百十億円まで減少。入場者も七四年度の約百三十九万人に対し、一七年度には約五万二千六百人まで落ち込んだ。
千葉競輪の客層は六十代以上が中心。ガールズケイリンの開催、入場料の無料化、選手のトークショーなどで新規開拓を図ったが、初心者にはレース展開が分かりにくい上に、現金のやりとりを伴う場外車券売り場の存在がネックに。関係者は「初心者や家族連れには入りにくい雰囲気があったと思う」と振り返る。
歯止めがかからない入場者数の減少。施設の老朽化…。ついに一五年、市は一七年度末をめどに事業を廃止する方針を打ち出した。
ところが、ここで流れが変わる。事業運営を委託された「JPF」(旧・日本写真判定)=東京都千代田区=が建設費約八十億円を負担して、競輪場の新築を決断。市も一転、方針を転換し、「最後の年」になるはずだった一七年七月、競輪事業の継続を決めた。
この施設で行われている「250競走」は、これまでの競輪にはない新種目だ。国内バンクより短い、国際基準の一周二百五十メートルの木製バンクを六周して、順位を競う。スピードが出やすく、脚力のある選手が力を発揮できるため、初心者でもレース展開が分かりやすいという。国内外のトップアスリートが年間を通したトーナメント形式の大会「PIST6 チャンピオンシップ」を戦う。
場外車券売り場は撤去され、車券の販売はインターネットに限定。金銭をやりとりする場をなくすことで、ギャンブルのイメージを薄めた。
初日の二日、JPFの渡辺俊太郎社長は「たくさんの人の支援があり、この日を迎えることができた」と感慨深げ。神谷俊一市長は「家族連れでも楽しめる、これまでにない新しい競輪をお届けしたい」と期待を込めた。
レースは今は無観客だが、十一月十三日からは観客を入れ、場内の飲食店やバー、グッズショップなども営業を始める。
文・山口登史/写真・池田まみ、安江実
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