白鵬、名古屋場所で引退すると決めていた…花道を飾った全勝優勝

2021年9月28日 06時00分
 数々の金字塔を打ち立てた横綱も、最後はけがに勝てなかった。全勝優勝を果たした名古屋場所での土俵下でのインタビュー。「右膝がもうぼろぼろで言うことを聞かなかったので、この一番(千秋楽の照ノ富士戦)ですべて懸けようと思って気合入れてやりました」。結果的に、その一番が最後の土俵となる。

名古屋場所千秋楽、小手投げで照ノ富士㊦を下し雄たけびを上げる白鵬=7月18日、ドルフィンズアリーナで

 関係者は「名古屋場所の時点で、引退すると決めていたようだ」と明かす。ただ、全勝優勝したことで決意が揺らいだ可能性もある。続く9月の秋場所は、所属する宮城野部屋の力士にコロナ感染者が出たため全休。名古屋場所千秋楽から2カ月余り。熟考の上での決断なのだろう。
 組んで良し、離れて良し。四つ相撲でも押し相撲でも対応し、無類の強さを発揮した白鵬。基本は右四つ。鋭い立ち合いの踏み込みで、左の前まわしを奪い、右も差して組み止め、相手に何もさせずに寄り切る。全盛期の白鵬の理想の型だった。
 年を重ね、体のあちこちに細かいけがも増え、理想の相撲が取れなくなってきた。たびたび批判されたひじうちのようなかち上げ、荒っぽい張り手、猫だましなどは、立ち合いで思い通り踏み込んでまわしが奪えなくなったことの裏返しだった。いうまでもなく、鋭い踏み込みを支えていたのは強靱きょうじんな下半身。右膝が万全でない以上、15日間相撲を取り、横綱として責任を果たせないと判断したようだ。
 横綱という地位は陥落することなく、勝てなくなったら引退しか道はない。進退を懸けた名古屋場所では「本当に肉体的にも精神的にも追い込まれた状態」だったという。照ノ富士という新たな横綱と闘っていく気力も生まれなかったのかもしれない。(平松功嗣)

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