藤井王位への挑戦者はだれに? 王位リーグが佳境、紅白両組とも3人が争う

2021年5月1日 06時00分
 将棋のお~いお茶杯第62期王位戦(東京新聞主催)の挑戦者決定リーグが佳境を迎えている。同リーグは6人ずつ紅白2組に分かれ、各組の優勝者が藤井聡太王位(18)=棋聖=への挑戦権を懸けた決定戦に進出する仕組み。両組とも全勝者が消え、3勝1敗の3人が優勝を争う大混戦になっている。5月7日、東京と大阪で一斉に指される最終5回戦のゆくえに注目が集まる。(樋口薫)

◆白組 永瀬王座、佐々木五段、羽生九段が並ぶ

 4月27日、白組の優勝争いに波乱が起きた。無敗でトップを走っていた永瀬拓矢王座(28)が、若手の佐々木大地五段(25)に敗れたのだ。永瀬王座は藤井王位らとともに「4強」と称されるトップ棋士の1人。今期リーグは羽生善治九段(50)との全勝対決を制し、勢いに乗ったかと思われたが、手痛い敗戦に「序盤から作戦負けで、とても反省の多い1局になってしまった」と語った。これで白組は永瀬王座、佐々木五段と羽生九段が3勝1敗で並んだ。

 白組で全勝だった永瀬拓矢王座(右)を破った佐々木大地五段。これで優勝争いは混戦に =東京都渋谷区の将棋会館

 佐々木五段は藤井王位に過去2勝1敗と勝ち越している実力者だが、まだ大舞台で結果を残していない。師匠の深浦康市九段(49)がかつて3連覇した王位戦は、4期連続で予選を勝ち上がってリーグ入りするなど相性が良い棋戦。「これまで陥落が続いていたので結果を出したい」と、飛躍への決意を語る。
 その佐々木五段と5回戦で当たる羽生九段は、前人未到のタイトル100期に向けた王位挑戦の可能性を残す一方、敗れれば初の王位リーグ陥落となる。初めてリーグ入りした1993年以降、四半世紀以上にわたり常に王位を獲得(18期)するか、各組上位2人の残留枠に入り続けてきた。この驚異的な記録を維持できるかも見どころの一つだ。

◆紅組 前王位の木村九段が奮闘、澤田七段、豊島竜王と争い


 
 紅組は、前王位のベテラン木村一基九段(47)の奮闘が光った。前期の7番勝負で藤井王位に4連敗を喫したが、今年に入って復調。王位リーグでは初戦で「4強」の一角、豊島将之竜王(31)=叡王=との大激戦を制し、元名人の佐藤天彦九段(33)も破って3勝1敗。「ここまでは出来過ぎ。あとは精いっぱい指すだけ」と、藤井王位への雪辱を期す。

 佐藤天彦九段との激闘を制し、優勝争いに踏みとどまった木村一基九段 =東京都渋谷区の将棋会館

 その木村九段を破った澤田真吾七段(29)も2017年にリーグ優勝するなど、王位戦と相性のいい棋士だ。昨年度の将棋大賞「連勝賞」(14連勝)を受賞するなど好調を維持しており、悲願のタイトル戦初出場を目指す。
 優勝の可能性を残すもう1人が豊島竜王。本紙のインタビューにも「自分から(藤井王位に)挑戦していきたい。気持ち的にも挑戦する方がいい」と意欲を語っている。対藤井王位戦の成績では6勝1敗と大きく勝ち越しているだけに、挑戦となれば激闘が期待できそうだ。

◆同星で優勝、残留の決め方は複雑に

 王位リーグは各組6人中4人が陥落と入れ替わりが激しく、残留争いも熾烈になる。複数の棋士が同星の場合の優勝者と残留者の決め方は、少し複雑になっている。4勝1敗で並んだ場合はプレーオフで優勝を決めるが、3勝2敗で並んだ時は直接対決の結果や前期の成績などで自動的に決定される。これは最大で5人が横並びになる可能性があるため、日程的にプレーオフを組むのが難しいという事情がある。

前人未到のタイトル100期へ前進か、初の王位リーグ陥落か、5回戦が大きなヤマ場となる羽生善治九段 =東京都渋谷区の将棋会館で

 今期をみると、白組は永瀬王座が5回戦で近藤誠也七段(24)に勝てば、羽生―佐々木戦の勝者とともに4勝1敗となり、プレーオフで優勝を決め、その敗者がリーグ残留となる。永瀬王座が負ければ、羽生―佐々木戦の勝者が唯一の4勝1敗となり優勝。そして3人が3勝2敗で並ぶ。永瀬王座、羽生九段、近藤七段の3人ならば、3者間の対局結果はいずれも1勝1敗のため、前期の成績が最良(紅組優勝)の永瀬王座が残留となる。永瀬王座、佐々木五段、近藤七段の3人ならば、3者間の対局結果で2勝している佐々木五段が残留する。
 紅組は、上位3人が全員勝てば、3者によるプレーオフを実施。3者間の対局結果はいずれも1勝1敗のため、前王位の木村九段がシードとなり、残留者決定戦を兼ねたプレーオフ1回戦を豊島竜王と澤田七段で行う。その勝者と木村九段が戦い、勝った方が優勝となる。
 上位3人のうち1人だけ勝った場合は、その棋士が優勝。残留者の決め方は複雑になるので結果のみ記すと、木村九段が優勝だと豊島竜王、豊島竜王が優勝だと澤田七段、澤田七段が優勝だと木村九段が残留となる。斎藤慎太郎八段(28)は5回戦で勝てば3勝2敗になるが、直接対決と前期の成績の関係で残留の可能性はない。

紅組では、全勝の澤田真吾七段(左)に豊島将之竜王(右)がストップをかけ、3人が1敗で並んだ =大阪市の関西将棋会館で

 上位3人のうち2人が勝てば、両者によるプレーオフを行い、その勝者が優勝、敗者が残留となる。上位3人とも敗れれば、3勝2敗で斎藤八段を加えた4人が並ぶ。この場合はまず4者間の対局結果をみて、2勝1敗の豊島竜王と澤田七段が残留決定。さらにその2人の直接対決に勝っている豊島竜王が優勝となる。
     ◇
 両組とも、タイトル保持者、ベテラン、20代の棋士による三つどもえの戦いとなった。挑戦者決定戦に駒を進めるのは誰か。5月7日の最終5回戦当日は、ユーチューブの東京新聞チャンネルで、終局後のインタビューや控室の様子を配信する予定。

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