地震の被害に遭った石川県能登地方では、医療の現場もひっ迫しています。珠洲(すず)市の病院で医療支援を行った愛知県の「さくら総合病院」の医療チームに、現状を聞きました。

 愛知県大口町にあるさくら総合病院では1月4日の深夜、石川県で独自に支援活動を行った医療チームが帰還しました。

さくら総合病院の小林豊院長:
「珠洲市をあとにするのは本当に心苦しく、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら離れて来たわけです」

 このチームは、地震発生翌日の朝にドクターカー2台、病院長や看護師ら8人の態勢で珠洲市に向かいました。

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小林院長:
「行く道行く道、本当に陸路が阻まれている状態で。1台は左のバンパー部分が破損しまして、ガムテープで補修して何とか珠洲市にたどり着きました」

 珠洲市総合病院に着いたのは12時間後。現地の病院では、医療体制がひっ迫した状態だったといいます。

小林院長:
「水がないということで、十分な滅菌ができなかったりとか、現実的には手術はできない状態。透析は週に3回ぐらい病院で血液をきれいにしなきゃいけないわけなんですけども、そういった処置が水不足のためにできない。最低限のレベルの医療をやるにも水は必要なんですよ。採血検査をするのにも水が必要ですし」

 不足しているのは水だけではありません。

看護師の藤井さん:
「家屋が全壊しているところがほとんどで、そこから持病のお薬を持ち出すことができなかったという方がすごくたくさん避難所にもみえて、容易に渡してあげられるほどのお薬がないこともすごく心苦しくて」

小林院長:
「メディカルスタッフとしてのマンパワーがやはり足りない」

 治療や救命に欠かせない医薬品、さらに医療スタッフの数も全く足りていないといいます。

小林院長:
「やはり外傷が多くて、骨折、打撲、切り傷、そういったものが中心。直下型の地震で家屋の倒壊がかなり著しかったことによるものだと思われました」

 医療の現場がひっ迫しているため、大ケガをしていても受診を自粛してしまう人がいたといいます。

看護師の藤井さん:
「『たくさん患者さんがいるから、私がたかがねん挫で行ったら困っちゃうだろう』と言って我慢して、結局骨折だったじゃないかという方もいたので。みんながみんなを気遣うことによって自分の健康を害している場面を見て、とても心苦しくなるような場面もあった」

 現地で活動した小林院長は、停電や断水などが続く中で避難生活を強いられている被災者を目の当たりにし、大きな不安を抱いているといいます。

小林院長:
「災害関連死ですよね。寒冷な環境とか避難所の劣悪な環境によって、今度は肺炎を起こしたりとか、もしくは新たな他の感染症を起こしたりと、命に関わるような疾病を伴う可能性も十分にありますし。既に極限ながら、それがいつまで続くか分からないというところがむごいなと思います」