自民党の政治資金パーティーをめぐる疑惑は、東京地検特捜部が捜査を進めています。検察官と衆議院議員の経験がある菅野志桜里(かんの・しおり)さん、旧姓・山尾志桜里さんに、東京地検特捜部の捜査がどこまで伸びるとみているのか、話を聞きました。

 愛知7区で当選を重ねた前衆議院議員の菅野志桜里、旧姓・山尾志桜里さんはかつて、名古屋地検の検察官でした。
 
菅野志桜里さん:
「なぜ領収書に書かなくていい、いわば裏金を作る必要があったのか。その裏金は一体何に使われたのか」

 菅野さんに今回の捜査のポイントを聞きました。

菅野志桜里さん:
「今回検察の動きを見ていますと、不記載をしたそれぞれの議員の調べを進めているようですけれども、そういった各議員の不記載を束ねて、最後は派閥の違法問題にもっていこうとしているように見えますよね。一人一人の議員が不記載という違法を犯したということではなくて、派閥の指示であったと」

 菅野さんがポイントに挙げたのは、安倍派所属で防衛副大臣を辞任した、宮沢博行衆議院議員の12月13日の発言です。

宮沢博行衆議院議員:
「派閥の方からかつて『収支報告書に記載しなくてよい』という指示がございました」

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菅野志桜里さん:
「検察官の立場としては、そのまま調書にとりたいような内容だったと思います。派閥からのお金で、それを記載するなと指示があったんだけれども、自分としてはあまりよくないことではないかという認識で領収書をとっておいた、という内容だったと思うんですね。そうすると、きれいに必要とされる2つの認識が供述に表れているわけなんですね。ああいった公の、メディアのカメラの前で議員として発言があった、供述があったというのは、捜査にとっても大きな方針を立てていくための一つの要素になっていると思います」

 菅野さんは同じ愛知7区で争った自民党・安倍派の鈴木淳司議員の「派閥からの還流は文化」という発言にも触れました。

菅野志桜里さん:
「無防備で、検察からすると事前に弁解を予想して防ぐことができるという『ありがたい発言と』。全くじゃべらない議員もたくさんいる中で、ご自身の認識をしゃべっているというところは、私は一定程度評価してもいいのではないかなと思います。昔からみんなやっているということで、派閥という単位で違法の常態化、繰り返されて、みんなで感覚がマヒしてしまっている」

 東京地検特捜部は派閥の事務所に家宅捜索に入ったものの、議員個人の事務所などには強制捜査に入っていません。今後の狙いについては…。

菅野志桜里さん:
「特捜部も人や労力に限りがあるわけなので、最大限本丸に迫る事案を選別していくんだと思います。派閥の幹部議員に集中する可能性もあるんだろうと。議員本人が罪に問われる可能性は必ずしも高くない。ただ、そういった議員の『知っていました』『指示がありました』というような供述が、派閥の幹部議員の有罪を立証していく証拠として積み上がっていくと。不記載の金額が大きい個々の議員まで起訴していくというような方針であれば、議員の事務所の家宅捜索の可能性はあり得るんだろうと」

 菅野さんは、今回の疑惑は派閥の「長年の独特の文化」が背景にあったと指摘しています。

菅野志桜里さん:
「やっぱり親分が子分をつくるための原資という面が大きいんだと思うんですよね。派閥の親分は、総裁になるために支えてくれる国会議員にお金を配るとかですね。あるいは逆に、派閥の子分が親分に忠誠心を示すために、集めたお金を派閥に持っていく。集金力が出世階段の通行手形になっているという、独特の長年にわたる文化があると思わざるを得ない。今の自民党の派閥は、政策集団というよりも集金集団になっているように見えるわけですよね。集金のノルマをクリアした議員から派閥の出世を上っていって、大臣というポストに近づいていくというシステムなので。不適材・不適所人事みたいなものの源になっていて、日本の国益も害しているんじゃないかなと私には見えます」

 菅野さんは「派閥の解消」にも触れました。

菅野志桜里さん:
「いわゆる派閥というのは解消していただいて、政策を集約したりとかリーダー候補を絞り込んでいく、そういった別の集団として構成し直す方がいいんじゃないかと思います」