海での事故の原因となることも多い「離岸流(りがんりゅう)」について、専門家に話を伺いました。

 愛知県の渥美半島の赤羽根海岸で、第四管区海上保安本部が撮影した映像。潜水士が海に入り浮いていると…およそ30秒で元の位置から沖へ流されていきます。波は岸に向かって流れていますが、これとは逆方向に沖へと強く流れる海流を「離岸流」といいます。

こちらは石川県の内灘海岸。砂浜のそばの2カ所に、人体や魚に無害な着色剤を投入します。

【動画で見る】海の事故の一因『離岸流』の恐ろしさ 専門家が指摘する“勘違いに潜む危険性”

すると、まず右のマーカーが横や沖へ進み、その後もう一つのマーカーも沖へ向かい、お互いのマーカーが合流しました。およそ4分後には、先端は50mほど沖にまで流れました。このとき、海岸沿いの横の流れを並岸流(へいがんりゅう)、沖へ縦に延びる流れを離岸流(りがんりゅう)と呼びます。

「離岸流」の専門家、長岡技術科学大学の犬飼直之准教授に話を伺いました。

離岸流のメカニズムは、まず沖からの水の流れが陸に到達します。そして行き場を失った流れが横に流れます。これを並岸流と呼び、並岸流同士がぶつかり合って、沖へ向かう離岸流になります。

離岸流の幅は長くて30m程度、長さは数十mから数百mにわたります。

■離岸流の誤ったイメージに注意! 専門家「何も無い砂浜海岸でも発生する」

 離岸流に関して、「世界レベルの水泳選手が泳いでも逆らえない速さ」「太平洋など大きな海に面している所でのみ起こる」といったウワサがありますが、実はどちらも正しくありません。こうした勘違いに危険が潜んでいると犬飼准教授は指摘します。

犬飼准教授:
「もっと遅い秒速、例えば毎秒0.2mとか毎秒0.5mとか、そういう遅い流速の離岸流も発生しています。毎秒0.3mでもすぐに足の届かない所に流されるとか、そういう意味ではとても危ない流れになります」

毎秒20~30cmと聞くと大したことがないようにも感じますが、5秒でおよそ1m流されます。

油断することで、気が付いたら足が届かない場所まで流され、足が地面に着かないことで踏ん張りが効かなくなり、余分にエネルギーを使ったり、間違えて海水を飲み込んでしまい、溺れる危険性が高まるといいます。

 また、離岸流が発生するのは大きな海に面した所だけではありません。

犬飼准教授:
「何も無い砂浜海岸でも離岸流って発生するんですよ。これが一番一般的な離岸流になります。離岸流の発生する場所というのは、実は見つけるのが大変でして、構造物の横とかそういうものは基本的に危ない」

波がある所、つまり海であればどこでも発生するといいます。100m~200mおきに一つは発生し、加えて突堤(とってい)など人工物がある場所では、流れが集中して発生しやすいということです。

■「落ち着いて浮くこと」に専念を…沖に流されてしまった時の対処法

 もし沖に流された場合の対応で最も大切なのは、パニックにならずに落ち着いて、その場で浮くことに専念することです。通常であれば、海水浴場はライフセーバーがすぐに異変に気付いて助けてくれるシステムがあるので、とにかく浮き続けることが重要です。

また体力があり水泳が得意という場合に限り、自分がどの方向に流されているのか確認し「岸に対して平行に進む」と、幅は狭いので離岸流から脱出できます。

 犬飼准教授は「離岸流は発生するものであるという認識の元、しっかり監視をしてルールを守って遊べば、事故は発生しない」と話しています。