睡眠時無呼吸に対応したセンサ

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睡眠時無呼吸検査機器および睡眠検査機器

医療業界のモノのインターネット (IoMT) 分野で最も急成長している睡眠監視において、センサがどのように重要な役割を果たしているのかをご覧ください。

はじめに

現在最も話題になっているトピックの 1 つがモノのインターネット、つまり IoT であり、それによって私たちの働き方や遊び方、くつろぎ方などがどのように変わるのかということです。IoT という用語はネットワーク接続されたすべての製品を指す用語ですが、現在では IIoT (産業界のモノのインターネット) や IoMT (医療業界のモノのインターネット) など、さらに具体的な用語が普及し始めています。

医療の分野では、さまざまな用途に対応した IoT 接続の機器が開発されています。たとえば、診断用途や治療用途、そして監視用途

です。IoMT 機器は連続した情報をリアルタイムで中央のポイントに提供するため、

医師などの医療技師は患者に関する幅広い診断および臨床情報を

リモートから安全かつ確実に収集することができます。このような

情報を自動的に、あるいは医療従事者が分析することで、医療ニーズの判断に役立てることができます。また、既に病状がわかっている患者については、自宅環境での監視が可能になるため、監視にかかるコストを大幅に低減することができます。これにより、患者が自宅で快適に過ごせる時間が増えるだけでなく、病院などの施設において他の患者のために確保できる病床数も増えることになります。

 

リモートでのヘルスケア監視は、患者が自身の医療データの提供に前向きでない場合、または不可能な場合にさらに大きな意味を持ちます。たとえば、患者が睡眠中のデータなどです。最近の報告によると、睡眠監視と睡眠療法は IoMT ヘルスケア市場で最も急成長している分野であり、睡眠療法の患者数は、ここ数年で 2 倍以上の増加率を見せています。

睡眠監視用機器

ここに示す方法は、患者の睡眠パターンを監視する方法として効果的かつ無理なく実施できるものです。
これにより患者の睡眠サイクルを監視し、異変を追跡できるため、睡眠時無呼吸や広範な健康上の問題を診断する目的で活用できます。医療従事者はこの情報を使用することで、患者の治療について十分な情報に基づいた判断を下すことができます。睡眠療法機器は、さまざまな睡眠障害の管理と治療を目的として使用できます。また、解消に至らないまでも、いびきを軽減する IoMT 機器も存在します。センサ技術とコネクティビティの進歩は、一般的な睡眠障害の診断と治療において、さまざまな発展をもたらしています。

睡眠障害に対応するセンシング技術

図 1. 睡眠障害の診断と治療に使用されるセンシング技術

睡眠検査

これまで睡眠検査の実施には、患者に病院または専門の施設に来てもらい、1 泊以上滞在してもらう必要がありました。この間に、次のようなさまざまなデータを記録します。

  • 心拍数と呼吸数
  • 血中酸素濃度
  • 全体の睡眠時間
  • 熟睡時間
  • instances of snoring
  • 呼吸停止の回数 

 

臨床的な睡眠検査には、コストの高さや来院に積極的な患者があまりいないという問題のほか、病院環境と平常時の家庭環境との違いから、収集したデータ全体の妥当性の問題も伴っていました。このような背景から、睡眠検査の実施は、この数年間で病院環境から在宅環境へと移行が進んでおり、問題の一部は解決されています。しかし、睡眠データの収集はより困難なものとなりました。

 

そこで開発されたのが家庭用の検査システムです。これにより、心拍数や呼吸数、血中酸素濃度、呼吸停止が発生した回数などの連続的な監視が可能になりました。また、より高度なシステムでは、睡眠時の姿勢や室温、湿度なども監視できます。このようなシステムは、収集したデータを連続的にクラウドに格納するものと、すべてのデータをシステム内部のメモリに格納するものに分けられます。収集したデータは自動的に分析するか、睡眠障害の種類と重症度を判定する目的で使用されます。

睡眠監視システム

睡眠監視システムは、心拍数や呼吸数などの生理的パラメータを監視できるセンサと、温度や湿度などの環境条件を監視できるセンサで構成されているのが一般的です。また、体動や血中酸素濃度、空気流量の測定値など、睡眠または呼吸に関連するその他の情報を特定できるセンサも含まれている場合があります。システムを構成するセンサとしては、次のものが挙げられます。

 

  • 睡眠監視機能を備えたピエゾ フィルム睡眠センサ: 呼吸数、心拍数、身体活動、熟睡時間、浅眠時間などを監視します
  • フォト光 SpO2 センサ: 血中酸素濃度を非侵襲的に測定します
  • 低圧空気流量センサ: 吸気時および呼気時の圧力を測定します
  • 温度・湿度センサ: 吸気および呼気の温度と湿度を測定します

 

睡眠障害の診断後は、一連の機器や食事、運動のほか、睡眠パターンなどの生理的データの監視を取り入れた治療計画を作成できます。

センサ製品が組み込まれた睡眠時無呼吸装置

図 2. TE Connectivity のセンサ製品が組み込まれた睡眠時無呼吸装置

睡眠時無呼吸

睡眠障害で最も一般的なものが睡眠時無呼吸で、呼吸停止と呼吸開始が繰り返し発生するという症状が見られます。睡眠時無呼吸の患者は大きないびきを伴う場合があり、一晩睡眠を取った後でも疲労を感じます。

 

睡眠時無呼吸は、主に次の 3 種類に分類できます。

  • 閉塞性睡眠時無呼吸: 最も一般的な形態で、咽頭筋が弛緩した状態で発生します
  • 中枢性睡眠時無呼吸: 脳から筋肉に正常な信号が送られず、呼吸を制御できない場合に発生します
  • 複合性睡眠時無呼吸症候群: 閉塞性睡眠時無呼吸と中枢性睡眠時無呼吸を併発した場合に発生します

 

認知度と使いやすさから、睡眠時無呼吸装置の普及率は高まっています。人によっては、咽頭、舌、口蓋周辺の軟組織が熟睡時に沈下します。これにより呼吸路が狭窄されるため、いびきが発生します。いびきは、わずかな陽圧を加えて気管を開くことで軽減できます。このように動作するように設計されているのが睡眠時無呼吸装置です。

気道陽圧 (PAP) 装置

症状の治療に使用される気道陽圧 (PAP) 装置は、主に CPAP、AutoCPAP、BiLevel の 3 種類に分けられます。どの装置も患者への空気の流れを制御するものですが、その方法はそれぞれ異なり、複雑さとコストも上昇します。

 

CPAP とは、Continuous Positive Airway Pressure (持続的気道陽圧) の略であり、患者が吸気して呼気する一定かつ連続した空気の流れを供給します。最も基本的な PAP 装置であり、最初に処方されることが最も多い装置です。多くの場合、保険の適用対象として最初に規定されるのが CPAP です。これはコストが低く、ほとんどの患者に適しているためです。CPAP への順応において最も大きな課題となるのが、呼気時に発生する連続的な空気圧の流れに抗えない感覚です。多くのメーカーは、呼気時に装置の圧力をセンシングしたり低減したりすることで、この課題に対処しています。

 

AutoCPAP、つまり自動持続的気道内陽圧 (APAP) は、一定の圧力を継続的に供給する CPAP とは異なり、変化する吸気のニーズに対応するために、高圧と低圧の範囲を設定します。この範囲は事前に決定されるのが一般的で、呼吸ごとに必要な吸気圧を検出できる繊細なアルゴリズム技術が搭載されています。範囲として提供するのは、圧力のニーズは毎晩、あるいは睡眠時間中にも変化する可能性があるという理由からです。吸気圧に影響する要素としては、睡眠時の姿勢、風邪またはアレルギー症状、アルコールや薬物の摂取などが挙げられます。

 

BiLevel は、2 種類の異なる圧力を供給する PAP 装置です。一方は吸気用で、もう一方は呼気用です。ここに挙げる装置の中では最も複雑であり、最も高価であるため、通常は特殊なニーズ以外では使用しません。BiLevel は人工呼吸器と同様の動作を行うため、ALS やパーキンソン病など、呼吸の補助が必要な疾患を持つ患者に対して使用するのが一般的です。また、中枢性睡眠時無呼吸が見られる患者の多くは CPAP または APAP でも十分対応できるものの、このような患者に対して BiLevel を処方することもよくあります。

 

基本的な PAP 装置は、圧縮空気を供給するファンまたはモータ、空気を送達するマスク、 そして何らかの制御用ディスプレイで構成されているのが一般的です。高度なシステムの場合は、その他の機能やコントロール類が追加されます。患者はマスクを装着し、圧力を使用して鼻腔に空気が送られます。これにより、呼吸が停止する原因となる軟組織の沈下を防ぎます。空気圧の監視および制御のほか、環境要因や機器の他の要素の監視には、一連のセンサを使用するのが一般的です。当社では、睡眠時無呼吸装置で使用できるさまざまなセンサを製造しています。各センサは、空気流量、空気圧、温度、湿度を監視および制御し、モータ、ファン、ブロワーにフィードバックを提供できるように設計されています。

 

気管が開いた状態を維持するために、睡眠時無呼吸装置の呼吸マスクに継続的に低圧空気を送り込んでいる場合、空気を加温および加湿することで、患者の快適性が大幅に向上します。比較的新しい睡眠時無呼吸装置のいくつかは、このような機能が搭載されています。気流の湿度は監視および制御する必要がありますが、TE では、湿度や温度などのパラメータを測定および調整することに特化したセンサを提供しています。

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エレクトロニクス全般に言えることですが、センサもさらなる小型化、高精度化、完全デジタル出力、

省電力化を実現しながら進化しています。省電力での動作が可能になったことで、

バッテリー駆動のシステムを含め、幅広い用途で使用されるようになりました。また、センサの小型化により、

呼吸マスクのすぐ近くにセンサを設定できるようになったため、対象となる場所で

測定および制御することができます。

デジタルまたはアナログ htu31 複合センサ
図 3. デジタルまたはアナログ HTU31 湿度/温度複合センサ

TE は、表面実装可能な HTU31 湿度/温度デジタル出力複合センサ (2.5 x 2.5 x 0.9 mm パッケージ) を発表しました。個別にキャリブレーションされた高精度センサであり、トレーサビリティーを確保するためにシリアル番号が割り当てられています。通常精度は相対湿度では ±2%、温度では ±0.2°C となります。コンパクトな 6 ピン DFN パッケージで迅速な応答時間を提供し、電力消費の代表値はわずか 3.78 µW です。このセンサは、アドレスを設定可能なデジタル I2C 形式のものと、アナログ式のものが用意されています。

 

TE では、気管が開いた状態を維持するライン圧の監視と調整に使用できる低圧センサも提供しています。また、流量の監視/調整に使用できる差動タイプも提供しています。これらの圧力センサは、表面実装に適した 16 ピン SOIC パッケージで提供されます。TE では、スタンドアローンの温度センシング技術も幅広く提供しており、PAP 用途では圧縮空気の温度を監視および制御する目的で使用できます。また、睡眠監視用途の一環として、室温の監視に使用することもできます。このような技術には次のようなものがあります。

 

パッケージは、わずか 1.5 mm² x 0.38 mm と超小型の XDFN6 パッケージで提供され、0°C ~ 60°C の範囲で ±0.5°C の精度を誇る新しい完全デジタルの TSYS03 から、さまざまな温度範囲、精度、サイズを備えたパッケージ化されたアセンブリまで、多岐にわたります。

睡眠監視に対応した超低圧製品
図 4. 睡眠監視および治療用途に対応した超低圧センシング製品

そして TE では、広範な表面実装異方性磁気抵抗 (AMR) 位置センサを製造しており、回転と線形変位の正確な監視を目的として、モータとファンの制御に幅広く使用されています。小さなサイズ、高精度、高信頼性という特徴から、PAP 装置など、コンパクトで高性能なさまざまな在宅医療製品に採用されています。

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まとめ

睡眠医学の分野は、ここ数十年でその適用範囲を広げてきました。睡眠障害の有病率は上昇しており、その監視と治療を目的とした幅広い製品の開発が続けられています。また、睡眠を記録し、睡眠障害を診断する新しい手法も、さまざまなものが開発されてきました。睡眠障害は慢性的な症状であり、継続的な治療と、治療効果の監視が必要とされます。初期診断と治療のフォローアップ監視に対応したコスト効率の高い技術は重要です。今回取り上げた内容は、睡眠障害の診断と治療の需要に応える遠隔医療技術の一例にすぎません。センサは、臨床環境または在宅環境で睡眠を監視する用途でも、最も一般的な睡眠障害である睡眠時無呼吸の治療に使用する装置のどちらにおいても、非常に重要な役割を担っています。