令和2年の年末調整 昨年との変更点:その3
令和2年の年末調整 昨年との変更点 |
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その1 給与所得控除及び基礎控除等の改正 1 給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替 2 給与所得控除の改正 3 公的年金等控除の改正 4 基礎控除の改正 5 合計所得金額要件等の改正 |
その2 所得金額調整控除の創設 1 所得金額調整控除とは 2 子ども・特別障害者等を有する者等 3 給与所得と年金所得の双方を有する者 |
その3 基礎控除申告書等の新設 1 「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」の新設 2 基礎控除申告書への記入と内容の確認 3 所得金額調整控除申告書への記入と内容の確認 |
その 4 ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除に関する改正 1 改正の趣旨と概要 2 未婚のひとり親に対する税制上の措置 3 寡婦(寡夫)控除の見直し 4 令和2年分の年末調整の際の申告 5 令和2年分の源泉徴収簿の記載 |
その 5 源泉徴収簿の様式変更等 1 源泉徴収簿の様式変更 2 控除額の合計額の早見表の変更 3 年末調整のための人的所得控除等の要件と控除額の概要 |
その 6 年末調整関係手続の電子化 1 年末調整関係書類の電磁的方法による提供の可能化 2 年調ソフトの無償提供 3 年末調整手続の電子化に向けた準備 |
その7 その他の留意事項 1 非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける者への周知 2 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書の受理と内容の確認 3 令和3年分の給与の源泉徴収事務 4 e-Tax又は光ディスク等による法定調書提出義務基準の引下げ 5 Q&A |
その3 基礎控除申告書等の新設
1 「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」の新設
基礎控除の改正及び所得金額調整控除の創設に伴い、それぞれ「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」が新設され、年末調整において基礎控除又は子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受けようとする所得者は、その年最後に給与の支払を受ける日の前日までこれらの申告書を給与の支払者に提出しなければならないこととされました。
所得控除等 | 令和2年分の申告書 |
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扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除 | 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 |
基礎控除 【所得制限設定】 | 給与所得者の基礎控除申告書 【新設】 |
配偶者控除、配偶者特別控除 | 給与所得者の配偶者控除等申告書 |
所得金額調整控除 【新設】 | 所得金額調整控除申告書 【新設】 |
生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除(申告分)、小規模企業共済等掛金控除(申告分) | 給与所得者の保険料控除申告書 |
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除 | 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 |
(注)国税庁ホームページに掲載している「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」は、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の3様式の兼用様式となっています。
2 基礎控除申告書への記入と内容の確認
(1)❶ あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算
給与所得については、直近の源泉徴収票や給与支払明細書を参考にして見積もった令和2年中の給与の収入金額(給与を2か所以上から受けている場合には、その合計額)を「収入金額」欄に記載し、その給与の収入金額を基に「●給与所得の計算欄」を使用して所得金額を計算します。給与所得以外の所得がある場合には、その合計額を記載します。
次の記載例では、「所得金額調整控除額」が控除されています。
(2)❷ 控除額の計算
「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」の表で計算した合計額を基に「判定」欄の該当箇所にチェックを付け、判定結果に対応する控除額を「基礎控除の額」欄に記載します。
(3)❸ 区分Ⅰへの記入
配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けようとする人は、「控除額の計算」の「判定」欄の判定結果に対応する記号(A~C)を記載します。
配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けない人は記載不要です。
3 所得金額調整控除申告書への記入と内容の確認
(1)❶「要件」欄への記入
年末調整において所得金額調整控除の適用を受けようとする場合は、「要件」欄の該当する項目にチェックを付け、その項目に応じて「☆扶養親族等」欄及び「★特別障害者」欄にその該当する者について記載します。
なお、「要件」欄の2以上の項目に該当する場合は、いずれか1つの要件について、チェックを付け記載をすることで差し支えありません。
また、年末調整における所得金額調整控除の額については給与の支払者が計算しますので、この申告書に所得金額調整控除の額を記載する欄はありません。
(2)❷ 「☆扶養親族等」欄への記入
「要件」欄で「同一生計配偶者が特別障害者」、「扶養親族が特別障害者」、「扶養親族が年齢23歳未満」の項目にチェックを付けた場合、その要件に該当する同一生計配偶者又は扶養親族の氏名、個人番号及び生年月日等を記載します。
なお、一定の要件の下、個人番号の記載を要しない場合があります(給与の支払者が、これらの申告書に記載すべき提出者本人、控除対象配偶者又は控除対象扶養親族等のマイナンバーなどの事項を記載した帳簿を備えている場合)ので、給与の支払者に確認してください。
(3)❸ 「★特別障害者」欄への記入
「特別障害者に該当する事実」欄には、障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(障害の等級)などの特別障害者に該当する事実を記載します。
なお、特別障害者に該当する人が「扶養控除等(異動)申告書」に記載している特別障害者と同一である場合には、「扶養控除等申告書のとおり」と記載して差し支えありません。
(4)記入に当たっての注意事項
イ 年末調整において、所得金額調整控除の適用を受けようとする場合における「給与の収入金額」が850万円を超えるかどうかの判定は、主たる給与の支払者(扶養控除等(異動)申告書の提出先)から受ける給与などの年末調整の対象となる給与(注①)の総額が850万円を超えるかどうかにより行います(注②)。
(注)
① 年末調整の対象となる給与については、未払給与や、現物給与のうち課税の対象となるものを含みます。
② 給与の支払を受ける人が基礎控除申告書や配偶者控除等申告書の作成に当たって行う「本年中の合計所得金額の見積額」の計算において、給与の支払を受ける人が2か所以上から給与の支払を受けている場合には、その給与の全部を基にその計算を行う必要があります。
なお、「所得金額調整控除申告書」は、所得金額調整控除の適用を受けようとする旨等を記載するものであるため、給与の収入金額が850万円を超えるかどうかが明らかではない場合であっても、所得金額調整控除の適用を受けようとするときは、「所得金額調整控除申告書」に必要事項を記載し給与の支払者に提出してください。
ロ 例えば、同一世帯に属する夫婦において、夫婦の両方がその年中の給与の収入金額が850万円を超える人に該当し、年齢23歳未満の扶養親族に該当する子どもがいるような場合には、扶養控除とは異なり、その夫婦の両方が所得金額調整控除の適用を受けることができます。
(5)給与所得控除後の給与等の金額(調整控除後)の計算
イ 本年分の給与の総額(源泉徴収簿の「年末調整」の「計⑦」欄の金額)を、「令和2年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に当てはめて、「給与等の金額」欄に対応する「給与所得控除後の給与等の金額⑨」欄の金額を求めます。
ロ 次の算式により、本年分の給与の総額(源泉徴収簿の「年末調整」の「計⑦」欄の金額)から所得金額調整控除額を求め、その控除額を源泉徴収簿の「所得金額調整控除額⑩」欄に記入します。
所得金額調整控除額 =(本年分の給与の総額-850万円)×10%
(最高15万円)
なお、控除額の計算において算出した金額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り上げます。