1. 球磨川下り 日本三大急流を木船で体感

達人指南

現地の達人が旅行の楽しみ方を伝える観光コラムです。人気の観光地から知る人ぞ知る穴場まで、達人だからこそ分かる一歩踏み込んだ“通”な情報を紹介しています。

球磨川下り 日本三大急流を木船で体感

  最上川、富士川と並ぶ日本三大急流の一つ、球磨川(くまがわ)。そんな九州きっての急流を木船で下るアクティビティが「球磨川下り」だ。間近に迫る巨岩や大小の荒波を、船頭が巧みな舵さばきですり抜けていく川下りは、人吉球磨を代表する体験メニューでもある。

球磨川下りの木船からは、人吉の美しい自然が味わえる

  船上から人吉の豊かな自然を満喫できる「球磨川下り」は、100年以上の昔から球磨川で楽しまれてきた。15人ほどが乗れる木船を操るのは、船の先頭にいる“船頭”と、船の後ろで舵を握る“ともはり”の2人。人力だけで、エンジンなどの動力はない。たった2人の巧みな舵さばきで船が進む球磨川下りの、魅力と楽しみ方を教わった。

取材/熊本の編集プロダクション「ポルト」、2015年 9月


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井上幸生さん
(いのうえ ゆきお)
井上 幸生さん

球磨川下りの達人
  熊本県球磨郡あさぎり町出身。くま川下り株式会社の元代表取締役社長。大阪で就職後、地元のホテルや旅館などの支配人を経て、前職に就任。球磨川を熟知するスペシャリストでもある船頭の育成に尽力。「球磨川下りは貴重な文化遺産。国内はもちろん、世界中の方々に楽しんでほしい」と語る。

100年以上の歴史を持つ球磨川下り

与謝野鉄幹・晶子夫妻も球磨川下りを楽しんだという

  人吉盆地や八代平野を経由して八代海(不知火海)に注ぐ球磨川は、日本三大急流の一つとしても知られる。そんな急流を人力の木船で下る「球磨川下り」は、豪快でスリリングなアクティビティだ。

球磨川下りの歴史は古く、生まれたのは今から100年以上前といわれる。球磨川は昔から物資輸送の手段として利用されてきたのだが、1909年に門司-人吉-鹿児島間に鉄道が全線開業すると、物資輸送の中心は船から鉄道へと変わっていってしまった。

そこで、交通手段の移行に伴って使われなくなった船を活用しようと、老舗旅館が考案したのが球磨川下りだったのだという。かの与謝野鉄幹・晶子夫妻も、人吉を訪れた際に球磨川下りを楽しみ、球磨川についての句を詠んでいる。

船を操る“船頭”と“ともはり”の熟練の技術

川岸から見る球磨川下りの木船は、人吉ならではの光景だ

  球磨川下りの木船には、エンジンなどの動力装置は一切ない。“船頭”と“ともはり”の2人が、船の前後に立って船を操るだけだ。船頭は川の流れを読みながら進行方向に舵を取り、ともはりは木製の長い艪(ろ)をこぐ。一見すると簡単に動かしているように見えるのだが、どちらの役目にも熟練の技術が必要で、経験を積まなければ務めることはできない。

ともはりがこぐ艪は、てこの原理で動いている。この艪には1センチにも満たない穴が開いており、それを船にある突起部分とかみ合わせて、極力少ない力で艪を動かす。時には球磨川下りの最中に、高い波や巨岩に艪がぶつかって外れ、ともはりが川に飛び込んで取りに行くこともある。

球磨川下りの船頭になるためには、ともはりとして10年以上の修業を積まなければならない。船頭は水位や水の流れ、岩の場所、支流の水量などを確認しながら、瞬時の判断で進路を決める。風の強さも船の進行に大きな影響を与える要素だという。

船頭たちは川面を見て風が来る予兆が分かるため、風の向きや強さによって船の進路を変える。そのため時には危険を予測して、川下りの途中で船を止めることもある。こうした船頭の的確な状況判断によって、船と乗客の安全が守られているのだ。

球磨川下りの船上から眺める自然も見どころ

球磨川の両岸に広がる雄大な自然を水上から眺められる

  球磨川下りの船上からは、球磨川沿いの雄大な自然を眺めることができる。季節ごとに表情が変わる山々や、切り立った断崖を水上から見る景色は、まさに山水画のようだ。また、球磨川の水は透明度が高いので、水をのぞき込むとアユが泳ぐ姿を目にできることも。船上で聞こえるのは、“チャプッ、チャプッ”という艪をこぐ音と、波や風、野鳥のさえずりだけだ。

「これだけ自然の情緒を楽しめる乗り物は他にないと、皆さん感激されますよ」(井上さん)

ちなみに球磨川下りでは、飲食物の持ち込みは自由。船上で名物の鮎弁当を味わうもよし、地元の球磨焼酎を楽しむもよし。ただし、コースによっては船が大きく揺れることもあるので、こぼしたり落としたりしないように注意が必要だ。

人吉城跡や街並みを眺められるミドルコースがおすすめ

春は球磨川に沿うように人吉城跡の石垣に桜が咲く

  球磨川下りのコースの中で、達人・井上さんのおすすめは「ミドルコース」。JR人吉駅から歩いて20分ほどの場所にある人吉発船場から出発し、約50分で温泉町へと向かうコースだ。鎌倉時代から幕末まで、およそ700年間にわたって人吉・球磨地方を統治した相良氏の居城跡である「人吉城跡」をはじめ、人吉の街並みを球磨川に浮かぶ船上から眺めることができる。おすすめの時期は春で、人吉城跡の石垣に桜が咲き誇るさまは風物詩となっている。

特に冬季(12月~2月)に登場するミドルコースのこたつ船バージョンは、木船に設置されたこたつに入りながらの川下りが体験できる。少々冷え込みはするが、夏場とは違った風情を味わえるので、ぜひ挑戦してほしい。


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球磨川下りとあわせておすすめ! 人吉・球磨の観光スポット

人吉・球磨の歴史を感じられる神社や仏閣

  約700年にわたって相良氏が統治していた人吉には、国宝に指定された青井阿蘇神社をはじめ、由緒正しい神社や仏閣が点在している。球磨川下りとあわせて巡ってみよう。

  • 非業の死を遂げた女性の幽霊が出たとされる「永国寺」
  • 歴代藩主の夫人や親戚のものを含めると、墓の数は200を超える
  • 県道304号沿いにあり、裏手に球磨川が流れる「柴立姫神社」
おすすめポイント
  別名“幽霊寺”とも呼ばれる「永国寺」には、幽霊が描かれた掛け軸があり、年に一度の「幽霊祭り」で公開される(レプリカはいつでも見学可能)。「願成寺」は人吉を治めた相良氏の氏寺として創建された。球磨村の「柴立姫神社」は、婦人病や子宝、安産祈願に訪れる人が多い、知る人ぞ知る神社だ。球磨川沿いにあるので、球磨川下りの途中で船上から見ることもできる。

球磨川を望む眺望抜群の温泉宿

  球磨川下りを目的に人吉を訪れた際には、球磨川を望むロケーションの良い温泉宿に泊まってほしい。清流を眺めながら、良質の温泉や地元ならではの食材を使用した料理を味わおう。

  • 歴史ある浴槽と泉質を堪能できる「翠嵐楼」
  • 球磨川に面した「清流山水花 あゆの里」の露天風呂付き和洋室
  • 「鍋屋本館」の大浴場にある御影石の浴槽
おすすめポイント
  北原白秋や斎藤茂吉などの文豪にも愛されてきたのが、客室から悠然と流れる球磨川を眺められる「翠嵐楼」。「清流山水花 あゆの里」と「鍋屋別館」は球磨川の河畔にあり、人吉城跡が望める。抜群の眺望とともに人吉の山・川の幸も堪能できる。時間があれば、球磨川の河畔や城下町を散策してみよう。

人吉でおすすめの土産物ランキング

  人吉ならではの土産を厳選。銘菓から郷土玩具まで、個性あふれる品ばかりだ。

  • 一口サイズで食べやすい「焼酎もなか」
  • 丸く大きな目がどこか愛らしい郷土玩具「きじ馬」
  • 温もりのある木目に、鮮やかな椿柄が映える「花手箱」
おすすめポイント
  銘菓「焼酎もなか」は、球磨焼酎のボトルを形どったもなかに、焼酎を練り込んだあんが入っている。アルコール分は残っていないので、アルコールが苦手な人でも楽しめる。「きじ馬」と飾り箱の「花手箱」は、人吉・球磨に伝わる郷土玩具。木の温もりを感じられる素朴さと鮮やかな絵柄が特徴だ。

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球磨川下りの交通アクセス・施設情報

車(レンタカー)で

  人吉発船場:九州自動車道・人吉インターチェンジから県道54号経由2キロ、約5分/肥薩線JR人吉駅から国道445号経由1.5キロ、約5分。

電車(JR)で

  人吉発船場:肥薩線JR人吉駅から徒歩約20分。

球磨川下りの施設情報

  くま川下り株式会社
【住所】熊本県人吉市下新町333-1
【電話番号(問い合わせ)】0966-22-5555
【営業時間】8時~18時
【定休日】なし
【料金】
・ミドルコース(50分)
 大人2700円、子供1782円、幼児648円、貸し切り4万500円(定員12名)
・ミドルコース こたつ船(12月~2月/50分)
 貸し切り3万2400円(定員10名)

球磨川下りの達人が答える旅のQ&A

Q 雨が降っても、球磨川下りの営業はある?
A 球磨川下りでは、雨が降っても木船に雨除けのテントを張って出航する。ただし、河川の増水などにより危険と判断された場合は、川下りが中止になることもある。
Q 球磨川下りのコースと所要時間は?
A 球磨川下りのコースは、現在、「ミドルコース」(50分)のみ運行している。12月~2月は「ミドルコース」にこたつ船も登場。
Q 船の上で濡れることはある?
A 波の高さは日によって変わるが、多少の水しぶきは覚悟しよう。もし気になる場合は、レインコートを着用するといい。発船場の売店でも販売されている。また、カメラなども濡れる可能性があるため、持ち込む場合は自己責任で。
Q 船酔いをすることはある?
A 海のように上下に揺れることがなく、船の揺れ自体が少ないので、基本的に船酔いはない。ただし、二日酔いで乗船した場合はその限りではない。
Q 球磨川下りの発船場までは、マイカーで行くことは可能?
A 人吉発船場には無料の駐車場も完備。川下り終了後、着船場から人吉発船場まで戻る際の交通手段は、無料シャトルバスがある。詳細は事前に「くま川下り株式会社」へ電話で確認するかホームページでの確認を。
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