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有限会社ナスカ一級建築士事務所
162-0052 東京都新宿区戸山3-15-1 日本駐車ビル4F
T 03-5272-4808 F 03-5272-4021

早稲田大学理工カフェCampus café, Waseda University

東京都新宿区

設計 古谷誠章+NASCA
用途 大学(飲食店)
構造 RC
規模 地上1
敷地 44,333.06㎡
延床 61.85㎡
竣工 2009.05
掲載 新建築2009.01

大学も究極的には、人が人に出会うための場所だ。だから、授業のための教室があって廊下かがあれば事足りるというわけにはいかない。40年余り前にこのキャンパスを設計した安東勝男教授は、明治通り側には学部全体の学生が集まる講堂を構想していた。その後実際には大学院生数の大幅な増加などにより、主に研究室棟である65号館や55号館(「早稲田大学大久保キャンパス理工学総合研究センター・研究棟」)が建てられ、さらに昨年6月には地下鉄副都心線も開業して、その出口もここに新設された。いわば東側の新しいメインエントランスになったわけである。
元もとの正面入口はキャンパス中央の南側にあるが、人びとの出入りは、実質的にJR,西部新宿線などからの西側と、地下鉄やバスなどの東側からが圧倒的に多くなった。人の出入りするところには、人の憩う場所がほしいと考えるのが自然だ。そこで構想したのが西側の63号館(「早稲田大学大久保キャンパス63号館」)1階においたレストランと、この東側のカフェである。レストランには公園に面するギャラリースペースが、このカフェには既存55号館のアトリウム空間が接続している。建築学科の課題作品の講評会などを開く場所だ。両者ともに「広場」とそこに面するカフェやレストランのような関係になる。
既存建物と道路の間のわずかな空地には見事なケヤキが立っていた。デザイン的にこれを建築と一体のものにしたくて、コンクリートにしかできない造形を考え、木の幹に当たる部分をくり貫いた。結果、道路に面する細長いくさび状の室内空間と、木陰のオープンデッキ空間が生まれている。ガラスの折れ戸を全開放することで、木立とデッキと室内のすべてが一体化する。高崎市立桜山小学校に続いて、ここにもわれわれの考案したアルミ製の自然換気窓を組み込んだ。

撮影 淺川 敏