“怪優”でんでん 役者への道は「お笑いスタ誕」8週連続勝ち抜き

[ 2015年12月20日 10:00 ]

柔和な表情を見せるでんでん

でんでんインタビュー(上)

 ひょうひょうとした雰囲気の俳優でんでん(65)。人の良さそうな風貌で、身近にいそうなおじさんから笑顔まで不気味に見える連続殺人鬼までピッタリはまり、作品を見るたびに正体が分からなくなる。その経歴はお笑いからスタートし、30歳でテレビに初めて出演した。60歳を過ぎてから映画賞を初めて受賞した遅咲きの“怪優”が存在感を増している。

 自身の顔で気に入っているところを尋ねると「この老け顔ですね」とニヤリ。「昔、漫談をやっていた時に僕のネタであったの。“女にもてる方法。この老け顔だ”っていうんですよ」。今ではドラマや映画で重宝されるバイプレーヤーだが、テレビ初出演は日本テレビ「お笑いスター誕生!!」での一人芸。人を笑わせることが好きで、インタビュー中に巧みに登場人物を演じ分けながら昔話を披露する様子は、落語家のような軽妙さだ。

 渥美清さんに憧れ、19歳の時、弟子入りを志願し福岡県から上京。自宅を訪れたが、不在で会えず断念。「マルイ」に就職したが役者の夢を諦めきれず4年で退社した。ガードマンとして働きながら、30歳だった80年に「お笑いスター誕生!!」に応募した。

 「予選で審査員の一人だけが○を付けてくれた。それが今でもお付き合いしてる(演出家、劇作家の)水谷龍二さん。いつも誰かに助けてもらって生き永らえてるの」

 「みんな!ハッピーかい?」などのネタがウケ、8週連続で勝ち抜き。これが俳優の道に入るきっかけになった。森田芳光監督(11年死去、享年61)のデビュー作「の・ようなもの」(81年)のプロデューサーがテレビを見ていて「志ん水はこいつだ」と指さしたという。主人公の兄弟子で二ツ目落語家の出船亭志ん水役。「映画って簡単に出られるんだなと思った。それきり出られなくて、そんな甘いもんじゃないと分かりましたけどね」

 35年後を描く「の・ようなもの の ようなもの」(来年1月16日公開)に伊藤克信(57)、尾藤イサオ(72)らと前作と同じ役で登場。「“久しぶり”“変わったなあ”って同窓会みたいでした。まだこの業界にいるなんて当時は思いもしなかった。僕もだいぶサビみたいなのがくっついて、あの時の初々しさがなくなってる。純な気持ちでやろうと思いました」と初心に帰った。前作の自分を見て「髪の毛はかろうじてあった。これを境にだんだん抜けてったんだよ。あーあ」とひょうきんに笑った。

 ≪主演松ケンに思いを重ねる≫「の・ようなもの の ようなもの」は森田監督へのオマージュ的作品で、スタッフも再結集。森田組で長年助監督や監督補を務めた杉山泰一氏が監督デビューし、松山ケンイチ(30)が新米落語家役で主演する。でんでんは「何十年後に集まって、またこういう映画を作れると思わなかった。考えてみたら松山くんくらいの時に僕らがやってるんだもんね」と感慨深げに話した。

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