明秀学園日立・田中杏璃さん 女子マネジャー兼副主将として春夏連続聖地へ

[ 2022年6月21日 05:30 ]

ノックを手伝う田中杏璃さん(撮影・柳内 遼平)
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 第104回全国高校野球選手権(8月6日開幕、甲子園)の地方大会は沖縄で開幕し、各地区の組み合わせが続々と決定。球児以外にも最後の夏にかける人々がいる。22日に組み合わせ抽選が行われる茨城では今春選抜出場の明秀学園日立で、女子マネジャーの田中杏璃(あんり)さん(3年)が副主将を兼務し選手を支える。(取材・構成 柳内 遼平)

 宮城から越境してもうすぐ2年半。最後の夏の開幕まで1カ月を切った。明秀学園日立の副主将、田中マネジャーは、練習場を真っ赤に照らす夕日が落ちるころ、作業室で1年生マネジャーと「必勝」と刻まれたお守りに糸を紡ぐ。部員104人分。一つ一つに「甲子園に行けますように」と思いを込める。

 再び聖地を目指す最後の夏だ。「三塁側の通路からグラウンドに入った時の光はスポットライトみたいでした。ドキドキして楽しかった。また行きたいなと思っています」。今春選抜で4年ぶり2度目の甲子園出場。田中マネジャーは記録員でベンチ入りした。金沢成奉監督のそばに立ち、スコアをつけながら指揮官の意思を高い声で選手に届けた。単なるマネジャーではなく、副主将として戦力の一人だった。

 宮城県出身。小学生時代は外野手としてプレーし、中学では祖父と父が指導する「宮城仙北ボーイズ」でマネジャーを務めた。光星学院(青森)監督時代に坂本勇人(巨人)らを育てた金沢監督がチーム創設時の顧問でもあり、練習に顔を出すことがあった。選手へ語りかける言葉に耳を傾けるうちに「監督さんの下で人間性を磨きたい」と思うようになった。金沢監督は12年から明秀学園日立を指揮。従来、同校野球部はマネジャー募集がなかったが、受験前に指揮官にマネジャー志望の手紙を書き、2学年上の兄・大誠さんに続き入部を果たした。

 甲子園を知る名将からは入部直後に「ただの手伝いであればここまで来てやる必要はない。ともに戦うメンバーの一人として何をすべきか、考えなさい」と厳しく説かれた。「自分でマネジャーの姿をつくっていこう」と誓った。消毒液や包帯などの発注を保護者会に頼み、それまでなかった救急箱を作った。練習ではノック後のグラウンド整備も進んで参加。記録員でベンチ入りした際は、相手投手のけん制球に誰よりも早く「バック!」と声を張り上げた。チームに献身する姿勢が認められて昨秋、副主将に就任。異例だったが、反対する部員はいなかった。指揮官は「野球に向き合う姿勢をみんなに示してくれた」と抜てきの理由を語った。

 今春、1年生の女子マネジャーが2人加わった。甲子園初出場だった18年選抜で、根尾(中日)擁する大阪桐蔭との3回戦を現地観戦した杉山花音(かのん)さん(1年)がその一人。田中さんの活躍を知りマネジャーを志した。増えた仲間とともに夏を迎える副主将。「悔いの残らない夏にしたい。目標は日本一です」とにっこり笑った。

 【高校野球の女性参加】

 ☆部長で甲子園ベンチ入り 95年夏の甲子園で柳川(福岡)の高木功美子さんが女性部長として初のベンチ入りを果たした。

 ☆記録員で甲子園ベンチ入り 96年夏の甲子園から女子マネジャーの記録員が認められた。東筑(福岡)の三井由佳子さんら9人がベンチ入りした。

 ☆監督 千葉では02年に多古の小原満里子監督が就任3年目で夏初勝利を挙げた。西東京では東京電機大高の市川麻紀子監督が就任6年目の16年に夏初勝利。19年に沖縄初の女性監督として、石川の東佳奈子監督が沖縄高専を破って初戦突破した。

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