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解説記事2013年12月23日 【税務マエストロ】 特定新規設立法人の事業者免税点制度の不適用制度(2013年12月23日号・№528)

税務マエストロ
税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
特定新規設立法人の事業者免税点制度の不適用制度
#99 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#100 多国籍企業の国際的租税回避問題
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 品川克己 税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一人者がそのリスクを検証する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
  e-mail:ta@lotus21.co.jp

マエストロの解説  資本金1,000万円未満で設立した法人は、設立事業年度とその翌事業年度は基準期間そのものが存在しないことから、どんなに多額の売上げがあったとしても免税事業者になることができる。また、諸外国のようにインボイス制度を採用せず、帳簿方式で仕入控除税額を計算する日本の消費税システムでは、課税仕入れの相手方が課税事業者か免税事業者かを判断することができないという課税技術上の問題点がある。この問題点を解消すべく、現行消費税法では、免税事業者や消費者からの仕入れも課税仕入れに取り込むことを認めている(消基通11-1-3)。
 実務の世界では、計画的に資本金1,000万円未満で法人を設立し、この免税事業者である新設法人に支払った外注費や人材派遣料を仕入控除税額の計算に取り込んで節税を図ろうとする動きがある。平成23年度改正は、新設法人を使った上記のような節税スキームを是正するために、事実上小規模事業者とはいえないような新設法人などを、1年前倒しで課税事業者に取り込むこととした。
 しかし、平成23年度改正には、いわゆる「抜け道」と呼ばれるようなケースが多数あり、悪戯に制度を複雑化しただけで、さしたる効果が期待できなかったことが問題となった。そこで、この平成23年度改正の不備を補うべく、「特定新規設立法人の事業者免税点制度の不適用制度」が新設されたものである。
 今月は、平成23年度改正の問題点と会計検査院の指摘事項を確認した上で、新設された特定新規設立法人の取扱いを確認する。

1 平成23年度改正の問題点と会計検査院の指摘事項  平成23年度改正により新設された「特定期間中の課税売上高による納税義務の判定」は、次の①~③のように適用除外となるケースが数多くある。
① 設立事業年度の納税義務は免除されたままであること。
② 設立事業年度が7か月以下の場合には、その翌事業年度についても免税事業者になることができること。
③ 特定期間中の課税売上高と給与等の支払額のいずれかが1,000万円以下であれば免税事業者になることができること。
<具体例>  直前期の月数が7か月以下の事業者は、原則として改正法の適用除外とされている。したがって、資本金1,000万円未満の新設法人については、設立事業年度の月数を7か月以下にしておけば、改正法の適用除外となり、結果、従来どおり設立事業年度とその翌事業年度の納税義務は免除されることになる(図表1参照)。

 これに対し、平成23年10月17日、会計検査院から財務省に対し、消費税の事業者免税点制度のあり方について再検討を求める旨の報告が行われた(会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書~平成23年10月/会計検査院)。
 同院は、平成18年中に設立された資本金1,000万円未満の新設法人などを対象に抽出検査を実施した結果、次のような問題点を指摘している。
① 新設法人であっても設立事業年度からかなりの売上高を有する法人が相当数ある。
② 個人事業者が法人成りをし、かなりの売上高を有しているのに、設立第1期と第2期が免税事業者となるケースが相当数ある。
③ 資本金1,000万円未満で法人を設立し、設立第2期になってから増資をする法人がある。
④ 免税期間を経過した設立第3期以降に解散してしまう法人がある。
 今回の改正で創設された「特定新規設立法人の事業者免税点制度の不適用制度」は、会計検査院の指摘事項もさることながら、上記のような平成23年度改正の不備を補うことが目的ではないかと推察されるところである。

2 改正の内容と適用時期  大規模事業者等(課税売上高が5億円を超える規模の事業者が属するグループ)が、一定要件の下、50%超の持分や議決権などを有する法人を設立した場合には、その新規設立法人の資本金が1,000万円未満であっても、基準期間がない事業年度については納税義務は免除されないこととなった(図表2参照)。また、図表34のように、これらの事業年度開始日前1年以内に大規模事業者等に属する特殊関係法人が解散した場合であっても、新規設立法人は免税事業者となることはできない(改消法12の3、改消令25の2~25の4)。

 この規定の適用を受けることとなる新規設立法人を「特定新規設立法人」という。また、本改正は、平成26年4月1日以後に設立される特定新規設立法人について適用される(消法附則(平24年)4)。

3 適用除外
(1)新規設立法人の定義から除外される法人
 この規定は、特定新規設立法人の基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間について適用することとされている。ただし、次の①と②の法人については適用対象となる新規設立法人の定義から除外されている(消法12の3①前半かっこ書)。
① 期首の資本金等の額が1,000万円以上であることにより、基準期間がない事業年度において課税事業者となる新設法人(消費税法第12条の2第1項に規定する新設法人)
② 社会福祉法人
 上記①の新設法人はそもそもが課税事業者となること、②の社会福祉法人は専ら非課税事業を行うことを目的として設立された法人であることから適用対象法人から除外したものである。
(2)特例規定の適用除外となる課税期間  次の①~⑤の課税期間については、基準期間がない事業年度であっても他の規定の適用により課税事業者となることから適用除外としている(消法12の3①後半かっこ書)。
① 課税事業者を選択した場合
② 特定期間中の課税売上高が1,000万円を超えたことにより課税事業者となる場合
③ 新設合併があった場合の納税義務の免除の特例規定により課税事業者となる場合
④ 分割があった場合の納税義務の免除の特例規定により、新設分割子法人が課税事業者となる場合
⑤ 期首の資本金等の額が1,000万円以上であることにより、基準期間がない事業年度において課税事業者となった新設法人が、その基準期間がない事業年度中に調整対象固定資産を取得した場合(消費税法第12条の2第2項)

4 期首の資本金等の額が1,000万円以上の新設法人の取扱い  上記3(1)①のとおり、期首の資本金等の額が1,000万円以上の新設法人は、新規設立法人の定義から除外されている。そうすると、期首の資本金等の額が1,000万円以上の新設法人が基準期間がない事業年度中に調整対象固定資産を取得した場合であっても、あえて上記3(2)⑤の規定を設ける必要はないようにも思えるところである。この点について検討する。
(1)設立事業年度中に減資をした場合の取扱い  新設法人の基準期間がない事業年度における納税義務については、設立事業年度とその翌事業年度を別々に判定することになる。
 例えば、資本金1,000万円で法人を設立し、設立事業年度中に減資をして資本金を1,000万円未満にした場合には、設立事業年度については課税事業者となるものの、翌事業年度については期首の資本金が1,000万円未満の基準期間のない新設法人に該当し、免税事業者になることができる(図表5参照)。

(2)基準期間がない事業年度中に固定資産を取得した場合の取扱い  資本金が1,000万円以上の新設法人は、基準期間のない設立事業年度とその翌事業年度については課税事業者となるのであるが、資本金1,000万円以上の法人が、基準期間のない事業年度中に調整対象固定資産を取得した場合には、課税事業者としての拘束期間が更に延長されることとなる(消法12の2②)。
 具体的には、調整対象固定資産を取得した日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間(第三年度の課税期間)までの間は課税事業者として拘束されるとともに、この期間中は簡易課税制度の適用を受けることはできない(消法37②)。結果、第三年度の課税期間において、課税売上割合が著しく変動した場合の税額調整の適用判定が義務付けられることになるのである。
 ただし、調整対象固定資産を取得した日の属する課税期間において簡易課税制度の適用を受けている場合には、課税事業者としての拘束期間が延長されることはない。
(3)消費税法第12条の3第1項の整合性  消費税法第12条の3第1項の前半かっこ書と後半かっこ書の関係であるが、これは、新設法人が設立事業年度中に調整対象固定資産を取得するとともに減資をした場合を想定しているものと思われる。
 すなわち、資本金1,000万円で設立した法人が設立事業年度において調整対象固定資産を取得するとともに資本金を1,000万円未満に減額した場合には、その翌事業年度は消費税法第12条の2第1項に規定する新設法人には該当しないことから同項の規定は適用されない。しかし、同法第2項の規定により第三年度の課税期間まで課税事業者として拘束されることとなるため、結果として設立2期目においても課税事業者に該当することとなる。よって、同法12条の3(特定新規設立法人の納税義務の免除の特例)第1項との重複適用を避けるため、同項後半のかっこ書で適用除外としたものである。

5 適用要件  次の①、②のいずれにも該当する場合に限り、新規設立法人の基準期間がない事業年度における納税義務は免除されない。
① 大規模事業者等が新規設立法人を支配していること(特定要件)
② 大規模事業者等に該当する他の者又は特殊関係法人の基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超えること
○大規模事業者等による支配要件(特定要件)  新規設立法人を支配している場合とは、大規模事業者等が次の(イ)、(ロ)、(ハ)のいずれかに該当する場合をいう。
(イ)新規設立法人の発行済株式等を直接又は間接に50%超保有すること
(ロ)新規設立法人の事業計画などに関する重要な議決権を直接又は間接に50%超保有すること
(ハ)新規設立法人の株主等の数の50%超を直接又は間接に占めること
○大規模事業者等  他の者(個人又は法人)が、直接又は間接に上記(イ)~(ハ)の発行済株式等、議決権、株主等の数を実質的に100%保有(占有)する会社を「特殊関係法人」という。
※「大規模事業者等」とは、他の者と特殊関係法人の総称であるが、これは税制調査会の説明資料で用いられた用語であり、法令用語ではない。
○同意者の取扱い  上記(ロ)又は(ハ)の50%判定において、個人又は法人との間で、その個人又は法人の意志と同一内容の議決権を行使することに同意している者がある場合には、その議決権は(ロ)の議決権の数に含め、また、その者は(ハ)の株主等の数に含めて判定することとされている。
○情報提供義務  大規模事業者等は、新設法人から課税売上高が5億円を超えるかどうかの判定に関し、必要事項についての情報提供を求められた場合には、これに応じなければならない。
○その他の注意事項 ・支配要件の判定に当たっては、他の者が個人の場合には、その親族の保有株式数なども加算する。
・親族には、内縁関係者や使用人などが含まれる。
・新規設立法人の自己株式等は判定に含めない。
・他の者の100%支配会社(子会社など)、孫会社、ひ孫会社も大規模事業者等のグループに含まれる。
・議決権とは、会社の合併や分割、役員の専任や解任、役員報酬や賞与、利益 配当などに関する議決権をいい、行使ができない議決権は判定に含めない。

6 ケーススタディ  大規模事業者による支配をケース別に見ると以下となる。
(1)直接に支配するケース
(2)間接に支配するケース①
(3)間接に支配するケース②
(4)間接に支配するケース③
 なお、上記(4)のケースにおいて、甲と乙が別生計の場合には、新設法人は「特定新規設立法人」には該当しない。この場合における乙を「別生計親族等」、丙社を「非支配特殊関係法人」という。

7 基準期間相当期間における課税売上高の計算
(1)個人事業者

(2)法人(判定対象者が12月決算法人のケース)
(3)基準期間相当期間が変則な場合  基準期間相当期間が設立事業年度に該当する場合など、基準期間相当期間が変則な場合について考えてみる。例えば、平成26年4月1日に設立したA社の納税義務を判定をする場合において、判定対象者となるB社も新設法人の場合には、基準期間相当期間はどこになるのであろうか?
(注)A社の設立事業年度は平成26年4月1日から平成27年3月31日までであり、B社の設立事業年度は平成25年1月10日から平成25年12月31日までである。
 このケースでは、第一次判定における基準期間相当期間(新設開始日の2年前の日の前日から1年間の間に終了した事業年度)がなく、第二次判定により、基準期間相当期間(新設開始日の1年前の日の前日から1年間の間に終了した事業年度)であるB社の設立事業年度における課税売上高により判定する。これが5億円以下の場合には、第三次判定により、基準期間相当期間(新設開始日の1年前の日の前日から1年間の間に半期の末日が到来する場合のその半期)の課税売上高により判定する。
 この場合における基準期間相当期間であるが、平成25年1月10日から6月の期間と杓子定規にとらえると、平成25年1月10日から平成25年7月9日までの期間が基準期間相当期間となり、月末決算法人であるにもかかわらず、7月9日という中途半端な時期に売上高を集計しなければいけないことになる。
 そこで、月末決算法人の半期の末日が月末でない場合には、直前月末日までの期間を基準期間相当期間とすることにより、売上高の集計を実務に合わせることとしている。結果、本事例であれば、図表6のように、平成25年1月10日から平成25年6月30日までの期間が基準期間相当期間となる。

 また、月の中途に決算日を設定している法人で、半期の末日が事業年度の終了応当日でない場合には、直前の終了応当日までの期間が基準期間相当期間となる。例えば、本事例において、判定対象者が1月10日に設立した12月20日決算法人の場合には、6月の期間(半期)の末日は7月9日となるので、これを直前の事業年度終了応当日である6月20日に繰り上げるということである。
 結果、基準期間相当期間は1月10日から6月20日までの期間となる。

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