池上彰さんの著書『知識ゼロからの池上彰の世界経済地図入門』より、ニュースを読むときに役立つ内容を厳選して、メールマガジン会員の皆様へ特別にお届けします。

連載第1回は、G7をはじめとする先進国と新興国、GDPについてご紹介します。

今年6月に、主要7カ国首脳会議(G7サミット)が議長国のイギリスで開催されました。昨年は新型コロナウィルスの影響で実施できなかったため、対面形式での開催は2年ぶり。新型コロナへの対策や世界経済の回復、気候変動問題などが主なテーマとなりました。

サミットが初めて行われたのは1975年のこと。パリ郊外のランブイエ城で開催されました。1973年のオイルショックで世界経済が大混乱となったことをきっかけに、フランスの提案で先進国の首脳が集まり、経済政策が話し合われたのです。それ以降、各国が持ち回りで議長国を務めつつ、年に1回開かれています。

さて、G7サミットのほかにG20サミットの話題も、国際ニュースで大きく取り上げられますよね。G7とG20は何が違うのでしょうか。今回は、世界経済を理解するうえでの基本的な知識についてお話しします。

【第1回】 先進国と新興国のいま

世界のリーダーは7カ国から20カ国に

G7とは、フランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・イタリア・カナダ(議長国順)の7カ国のこと。「Group of Seven」の略です。長らく、日本を含めた西側の先進国がグループをつくり、経済政策で世界をリードしてきました。

ところが、経済面での新興国の影響力が年々増大し、世界のパワーバランスは大きく変化しています。現在は、中国やインドなどの新興国とEU(欧州連合)を加えたG20で、世界経済・金融の重要問題を議論しています。G20とは、前述の7カ国に、アルゼンチン・オーストラリア・ブラジル・中国・インド・インドネシア・メキシコ・韓国・ロシア・サウジアラビア・南アフリカ・トルコ・EUを加えた20カ国・地域のことです。2008年のリーマンショックによる経済・金融危機に対応するために開かれた緊急会合がきっかけで始まりました。

G7ではアジア唯一の代表だった日本。G20では中国やインドなど他のアジア新興国の発言力が強まり、日本の存在感は以前よりも小さくなっています。日本のリーダーシップをどう示していくかが今後の課題となるでしょう。

先進国とは1人あたりGDP1万ドル以上

国の経済力の目安としてよく用いられるGDP(国内総生産)を見てみると、G20参加国のGDPは世界全体の8割以上を占めます。一方で、G7のGDPシェアは低下し、5割を切っているのが現状です。

G20の中でも、特に中国は目覚ましいスピードで経済成長を遂げ、2010年にはGDPで日本を抜いて、アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となりました。2030年までに中国がGDP世界一になるという予測もあります。メディアは、かつての先進国日本の凋落を伝えましたが、本当に中国は日本より豊かになったのでしょうか?

実は、国民一人ひとりの豊かさのレベルを表す「1人あたりGDP」(GDPをその国の人口で割ったもの)では、中国はまだ日本の4分の1程度です。1万ドルの大台を超えましたが、中国は地域によって貧富の差も大きく、先進国と呼べるような状況ではないという見方もあります。

1人あたりGDPで見ると、ヨーロッパのルクセンブルクが第1位。スイス、アイルランド、ノルウェーと続きます。日本は第23位にとどまっています。

成長率の高い新興国が勢いをつけてきた

「BRICs(ブリックス)」や「VISTA(ビスタ)」「NEXT11」「CIVETS(シビッツ)」などという言葉を聞いたことがあるでしょう。これは、成長著しい新興国の頭文字や国の数から名付けたもの。「BRICs」は、ブラジル(Brazil)・ロシア(Russia)・インド(India)・中国(China)の総称です。「VISTA」は、ベトナム(Vietnam)・インドネシア(Indonesia)・南アフリカ(South Africa)・トルコ(Turkey)・アルゼンチン(Argentina)の総称。「NEXT11」は、ベトナム・フィリピン・インドネシア・韓国・パキスタン・バングラデシュ・イラン・ナイジェリア・エジプト・トルコ・メキシコの11カ国の総称。「CIVETS」は、コロンビア(Colombia)・インドネシア(Indonesia)・ベトナム(Vietnam)・エジプト(Egypt)・トルコ(Turkey)・南アフリカ(South Africa)の総称です。投資の対象として、投資銀行や金融グループなどがつくり出しました。

先進国の経済が停滞する中、新興国は高い成長率を実現しています。こうした新興国は、広大な国土、豊富な資源、人口の多さ、経済改革の進展という共通点を持つのが特徴です。一時期注目されていた「BRICs」ですが、世界の目は、次の新興国グループに注がれています。

日本においても、経済成長で消費が拡大する新興国に向けて企業が続々進出し、新興国市場向けの商品戦略が重要度を増しています。

こちらでもお読みいただけます。
『知識ゼロからの池上彰の世界経済地図入門』
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執筆者紹介池上 彰いけがみ あきら

1950年8月9日長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。

元NHK記者主幹。現在はフリージャーナリスト。名城大学教授、東京工業大学特命教授、東京大学客員教授、立教大学客員教授、信州大学特任教授、愛知学院大学特任教授、関西学院大学特任教授、順天堂大学特任教授。

1973年NHK入局。報道局記者を歴任し1994年から「NHK週刊こどもニュース」の初代お父さん役を11年間続けた後、2005年にNHKを退職。在職中から執筆活動を始め、現在は出版、講演会、放送など各メディアにおいてフリーランスの立場で活動する。鋭い取材力に基づいたわかりやすい解説に定評がある。

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