業績動向からみる株式相場

2021年3月5日

1.10-12月期決算では、総じて業績回復を確認

2.4-12月期累計期間における好業績銘柄とその要因

3.2極化の修正から本格的な業績相場へ

1.10-12月期決算では、総じて業績回復を確認

■2020年度10-12月期決算が概ね終了しました。今年度は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による経済悪化を背景に、非常に厳しい業績結果となっています。足元でも新型コロナの感染拡大は継続しており、地域によっては部分的な行動制限も続いていますが、各国・地域が行った積極的な金融・財政政策などによって経済活動は徐々に改善を見せており、10-12月期決算は総じて業績回復を確認する結果となりました。


■東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融を除く)の内、2月24日時点で集計した1,347社の決算によると、4-12月期累計では売上高が前年同期比▲10.6%減、営業利益が同▲25.2%減と大幅減収減益の厳しい結果となりました。


■但し、10-12月期の業績を見ると、売上高は同▲1.9%の減収となりましたが、費用削減が大幅に進んだことから営業利益は同+16.6%の増益となりました。4-6月期の同▲18.6%減収、同▲52.6%減益や7-9月期の同▲11.9%減収、同▲26.0%減益と比較すると、企業業績は着実に回復していることが見て取れます。


■10-12月期業績の内容を見ると、製造業は同▲1.3%減収、同+43.9%増益となったのに対して、非製造業は同▲2.8%減収、同▲16.1%減益と回復が遅れています。これは非製造業は行動制限の影響が大きい空運業や陸運業の業績改善が遅れているのに対し、製造業は各国の経済対策によって生産活動が改善していることに加え、大規模な費用削減に取り組んでいることから業績改善が進んでいると考えられます。

2.4-12月期累計期間における好業績銘柄とその要因

■次に、今年度、好業績となっている業種(東証業種)や銘柄についてその要因を見ていきたいと思います。


■4-12月期累計期間の増益率でみると、業績が良かった業種は鉄鋼、その他製品、食料品、医薬品、情報・通信業となっています。


■その他製品では任天堂の増益が大きく寄与しています。新型コロナの感染拡大を受け、家でゲームを楽しむ巣ごもり需要が世界的に増加しました。


■情報・通信業も同様にゲームソフト需要が拡大したコナミHDやスクウェア・エニックスHDが大幅増益となり、テレワーク関連需要の増加によってインターネットイニシアティブも大幅増益となりました。また、ソフトバンクグループは世界的な株高の恩恵を受け投資先の企業価値が増加したことから好調な業績となり、決済サービス手数料収入やコンテンツ配信収入増加により通信3社の業績も堅調に推移しました。


■食料品では業務用が厳しかったものの、自粛を受けた内食需要の拡大によって、味の素(調味料や冷凍食品)や日清食品HD(即席麺)などが大幅増益となりました。


■医薬品はもともと業績の安定性が高く、既存薬の販売を伸ばし順調であった武田薬品工業を中心に堅調に推移しました。また、鉄鋼は前期に大幅な赤字を出した日本製鉄の業績が改善していますが、その他は厳しい業績となっています。


■その他の業種でも、エレクトロニクス化の進展により半導体・電子部品需要が増加した東京エレクトロンや村田製作所や、巣ごもり需要の恩恵を受けたヤマトHDやSGホールディングスなども業績が伸長しました。


✓一方、コロナ禍によって業績が大幅に悪化した業種も


■一方、新型コロナ禍による行動制限を受けて、空運業や電鉄を中心とした陸運業は厳しい決算となり、業種全体でも赤字転落となりました。


■輸送用機器も新型コロナの影響から上期を中心に生産が大幅に落ち込んでいたため、4-12月期累計では大幅減益となっていますが、10-12月期は生産が回復し、費用削減が進んだことから大幅増益となっています。


※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。


3.2極化の修正から本格的な業績相場へ

✓業績動向を背景に極端な2極化が進展


■昨年の企業業績はコロナ禍の影響で大きく落ち込んだのちに改善に向かっていますが、株式相場も昨年3月にかけて急落したのち、大きく反発してきました。その中で目立っているのが極端な「2極化」の進展です。


■東証株価指数(TOPIX)の業種指数でみると、電気機器、その他製品、情報・通信業などの株価が大きく上昇する一方、鉱業、陸・空運業、石油・石炭製品などの株価は急落後の回復が限定的でした。これは新型コロナがもたらす事業環境の変化とそれらによる業績動向の差が背景となっており、まさにこの4-12月期業績を見越した動きであったと言えます。


✓足元、出遅れ業種・銘柄の見直しが進む


■2021年に入ってからも国内株式相場は堅調に推移してきましたが、業種動向から見た内容は2020年とは大きく様変わりし、出遅れ業種・銘柄の見直しが進んでいます。


■これは2020年の相場をけん引した業種や銘柄に割高感が出てきたこともありますが、新型コロナのワクチン接種の進展により経済の正常化を期待する動きが強まったことや、この10-12月期決算でここまで業績が厳しかった銘柄において大規模な費用削減などによる業績回復の動きが確認されたことが背景となっていると考えられます。


■足元、株式市場は米国長期金利上昇を懸念しやや不安定な動きとなっていますが、今後は「金融相場」から「業績相場」への移行が期待されます。市場では業績回復は織り込みが進んできているとの声もあることから、経済正常化によって売り上げが想定以上に回復するとともに、企業には新常態への適応の加速と構造改革による収益性の改善が求められます。

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