(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
橋本匠護のコラム
ET(受精卵移植)が有効なケース

コラム一覧に戻る

2023年12月11日

前回のコラムでは、
■ AIで受胎するためには、複数のステップが存在すること。
■ ETは、いくつかのステップを飛ばすことができること。
を、紹介しました。

今回は、ETが有効なケースについて書いてみます。
ETが有効なケースとして代表的な例が、「暑熱シーズン」ではないでしょうか。
(12月なのに暑熱の話で、すみません!!)

暑熱は卵(卵母細胞)の品質低下、受精卵の発育阻害(早期胚死滅)等により、受胎率に悪影響を及ぼすとされています。

そこで、ETの登場です。
ETでは、ある程度まで発育した受精卵(桑実胚、胚盤胞)を移植するため、前述した卵母細胞の品質低下や、早期胚死滅の影響を回避することが出来ます。

そのため、これらの影響により受胎率が低下している場合、ETが有効になるわけです!

一方、暑熱はホルモン分泌や妊娠認識物質への影響なども報告されています。また、凍結融解後の受精卵は熱耐性が低下するとも言われていますので、暑熱問題をETで完全に解決できるわけではありませんが、選択肢としては非常に良いと思います。

暑熱シーズン以外にも、そもそも母牛の卵母細胞の品質や卵管での輸送に問題がある場合などは、AIでの受胎が難しくなります。こういった牛たちにも、ETが有効だったりします。

(ちなみにAIで受胎しづらい牛は潜在性子宮内膜炎等をもっている場合もあります。その場合、ETでも受胎しづらく、まず治療が必要になります。)

前提として、暑熱期は飼養管理などからのアプローチが重要です。しかし、選択肢の一つとして、「ET」はいかがでしょうか??

 
 
 
今週の動画
種牛の鼻環

|