トーク風景

TALK
EVENT
REPORTトークイベントレポート

愛着をつむぐという感性を⼤切に。
皆川 明さん、佐藤 友⼦さんと考える
⾃分らしい暮らし

愛着を持てる住まいに長く暮らしたい、
自分らしい住まいに暮らしたい。
そんなふうに、理想の住まい、理想の暮らしに
思いを巡らせたことはありますか?

先日、私たち積水ハウスは、
「愛着をもち、経年を楽しむ暮らし」をテーマに
住まいや暮らしを考えるトークイベントを
開催しました。

ゲストに
「ミナ ペルホネン」デザイナー/ファウンダーである
皆川 明さんと、
「北欧、暮らしの道具店」店長 
佐藤 友子さんをお迎えし、
暮らしで大切にしてきたことや、
これからも大切にしていきたいことについて
考えを巡らせました。

トークの内容とともに、
イベントをレポートします。

時間とともに愛着を編み込む
「life knit design」とは

皆川さん、佐藤さん、クリス智子さん、積水ハウス 矢野

イベントの進行を務めてくださったのは、クリス 智子さん。皆川さん、佐藤さん、そして、積水ハウスのデザイン設計部長 矢野 直子でトークを繰り広げていきました。

今回のイベントは、積水ハウスが提案する新しい住まいづくりの考え方「life knit design(ライフニットデザイン)」に皆川さんと佐藤さんが共感してくださったことがきっかけで実現したもの。冒頭では「life knit design」について、矢野から説明がありました。

矢野

「『life knit design』とは、“時間とともに愛着を編み込む”という意味を込めた言葉です。これからは長く住める機能だけでなく、住み続けたくなる住まいを目指していこうという考えから生まれたのが『life knit design』です」

life knit designの6つの感性フィールド
矢野

「今までは北欧スタイルやジャパニーズモダンのようなテイストでご提案することが多かったのですが、暮らし方や好みが多様化する中で既存のテイストでお話を進めることが難しくなってきたんです。愛着のある住まいの実現のためには、流行に左右されない視点で、お客様の感性に寄り添っていくことが重要となってきます。

そこで、インテリアを6つの感性フィールドに分類し、対話を進めていくことを提案する『life knit design』が誕生しました。この6つの感性は、積水ハウスがこれまで60年間つくってきた250万戸以上の住まいを分析、分類した結果に基づいています。6つの大らかな感性で、お客様のお好みにより近づけていき、満足していただける空間を実現することを目指しています。

そのためには、まず感性を受け入れる器となる美しい空間をつくります。そこに先ほどの6つの感性を掛け合わせていくというのが、『life knit design』の住まいづくりです」

暮らしの変化に寄り添う住まいとは?皆川さんと考えたHUE。

中庭を介して家族の気配を感じる木漏れ日のリビング スキップフロア(トレジャールーム)家族の気配を感じるコージーコーナーキッチンとダイニングを心地よく繋ぐカウンターテーブルのイドコロ

そして、「life knit design」の考えに共感してくださったのが皆川 明さん。その考えを体現するモデルハウス「HUE(ヒュー)」のディレクションを手がけてもらいました。

皆川さん
皆川さん

「家族や暮らす人のいろいろな思いをつなぐようなひとつの輪でありながらも、多様性がある。そんなイメージを色相という色の輪を表す『HUE』という言葉に込めました。

長く住み続ける家ということで、暮らし方や家族構成が変化していくことが前提となります。家もそれに呼応しながらつながって続いていけるような、そんな関係をつくりたいと思ったんです」

矢野

「皆川さんからいろんなアドバイスをいただいたのですが、ひとつは光、風、目線の線をつくりましょうということでした。『この部屋には、この時間にこういう光が入ってもらいたいよね』という言葉に、設計者が図面で返すという少し不思議な書簡のやり取りを1年間続けてできあがりました」

佐藤さんと矢野
佐藤さん

「私も見学させてもらいましたが、本当に居心地が良かったです。光や風の入り方が計算されていたから、あんなに気持ちよく感じたんだなと納得できました。

キッチンが個室タイプだったり、一人でゆったりできるコージーコーナーがあったり、孤独になれる場所が家の中に埋め込まれているというのがいいなと思いました。家族で時を紡いでいく家ではあるけれど、その家族を構成している一人ひとりの個人なんだということが尊重されているような家だなと」

時間が育む暮らしの中の愛着

トーク風景

ここからは愛着をテーマにお話を繰り広げていきます。まず、最初の問いかけは「愛着をもって経年を楽しむ暮らしって、どういう暮らしなんだろう」というもの。

皆川さん

「僕たちも洋服をつくる時は、長く着ていただきたいということを第一に考えています。そのためには、丈夫であることはもちろん、ずっと着ていたいと思ってもらわないといけません。そのとき、愛着というものがとても重要な要素だと思っています。

家や家具は洋服よりもさらに長い時間付き合っていくことになるので、機能だけではなく、それがあることで暮らしに温度が感じられるということがすごく重要になると思っています。自分たちが大事にしたいものを部屋に配置していき、それがだんだんと自然な景色となった時に、愛着が生まれるのかなと」

佐藤さん

「愛着って時間軸がある言葉なのかなと、私は思っています。ときめいたり、『好きだ』という瞬間の気持ちとは少し種類が違っていて、自分の個性や歴史をかたちづくってきてくれたものたちに対して感じる深い感情というか。好きとかワクワクを超えたのが愛着になるのかなというようなことを私は考えていました」

矢野

「たしかにそうですね。たとえば、あのコージーコーナーで子どもの時に遊んでいた記憶や思春期に親と喧嘩して籠もってしまった思い出、一人で本を読んで過ごした日のこととか。そういう場所と紐づいた記憶も愛着につながるのかもしれないですよね」

愛着のあるものが自分をかたちづくる

皆川さん、佐藤さんはご自宅でどんな場所や過ごし方に愛着を持っているのか気になるところ。お二人のご自宅のお写真を見ながら、お話してもらいました。

皆川さんのご自宅風景 皆川さんのご自宅風景 皆川さんのご自宅風景 皆川さんのご自宅風景
皆川さん

「僕は、愛着のある場所として、ダイニングから階段を降りていく風景とリビングの写真を持ってきました。階段から見える場所に、天井近くから富士山の写真、その下に木のオブジェ、小さく鳥のモチーフと、徐々に地上に近づくようなイメージでいろいろな作家の作品を飾っています。

リビングは朝日が入るので、いつも朝食が終わると、ここでお茶を飲むんです。いろいろなところで見つけた雑貨や、出会った作家さんのものを自由に置いています。景色が変わっていくような感じで、ときどき配置を変えるのを楽しんだりして。ここで過ごす時間が好きですね」

佐藤さんのご自宅風景 佐藤さんのご自宅風景
佐藤さん

「私の自宅は皆川さんのお部屋に比べるとものがいっぱいありますね(笑)。リビングダイニングには、『北欧、暮らしの道具店』を始めるきっかけにもなった、スウェーデンでの買い付けのときに買ってきた、カップ&ソーサーを並べています。

手前のダイニングにあるのがヴィンテージの椅子です。これは子どもが生まれたときなど、ライフステージに変化があるごとに1脚ずつ買い足してきたものなんです。家具や雑貨が目に入るたびに、自分の原点や人生の節目を思い出せるのが気に入っています。

もうひとつの写真は、本棚。本もまた自分をかたちづくってきた、愛着のあるもの。雑多に並べていますが、本が私を見守ってくれてるような気がするんですよね。そんな愛着のある風景です」

自分らしい暮らしは、自分の視点で選ぶこと

イベント会場

愛着のあるものに、皆川さんらしさ、佐藤さんらしさが感じられる気がするお話に、「自分の場合はどうだろう?」といろいろと考えが巡っていきます。

お二人は、暮らしのなかでどのように自分らしさを大切にされているのでしょうか?

皆川さん

「生活の道具にしても、飾るものにしても、情報で選ぶのではなく、自分の目で見て、好きだな、自分の人生とともに過ごしていけるな、と思えるようなものを選ぶことが大事だと僕は思っています。選び方というよりは、その選ぶ視点に自分らしさが出てくるのではないかと思うんです」

佐藤さん
佐藤さん

「たしかにそうですね。皆川さんのお話にも通じますが、やっぱり自分らしさは、自分が感じるものであって、『自分らしいでしょう?』と人に見せるためのものではないと思っているので。自分自身がフィジカルに『ああ、好きだな、居心地がいいな』という快不快みたいなことを積み重ねていくなかで、感じ取れていくものなのかなっていうふうに思っています。

私たち『北欧、暮らしの道具店』は開店当初から“フィットする暮らし作ろう”というスローガンを掲げて運営してきているので、この自分らしさというテーマは、ずっと考え続けていることです」

自分の理想の住まいを意識化する

皆川さん、佐藤さんのもの選びの視点や自分らしさを大切にする暮らしが少し垣間見られたところで、お二人にも「life knit design」の感性フィールドのなかから「いいな、好きだな」と思うものを選んでもらいました。

皆川さんセレクト写真 皆川さんセレクト写真 皆川さんセレクト写真
皆川さん

「並べて見ると僕は椅子があるシーンですね。ここに座ったら気持ちがいいだろうなということを想像して選びました」

佐藤さんセレクト写真 佐藤さんセレクト写真 佐藤さんセレクト写真
佐藤さん

「私は、皆川さんの選んだものに比べると空間の雰囲気に着目している感じがありますね。ほぼ直感でぱっぱっぱっと選んだのですが、並べてみると、こういう家を思い描いているんだなということが意識化、言語化された気がします」

矢野

「皆川さんは家具、佐藤さんは全体の空気感を重視しているのがわかりますよね。この感性フィールドは、『これを選んだから、このテイスト』と、決めつけるためのものではなくて、このイメージをきっかけに『どんなことがお好きなのか』『どこに興味があるのか』という会話を楽しむというのが目的でもあります。

私はこういうのが好きなんだ、なんでこれを選んだのだろうというところから対話を広げ、住まいづくりをしていくことで、より愛着が持てる住まいになるのではないかなと思っています」

イベント会場でのお客さま
イベントにご参加いただいた皆さまにもこの6つの感性を体験してもらうために、会場入口に18種類のポストカードを設置。それぞれの感性で1〜3枚のカードを選んでもらいました。
自分のカードを見つめながら「どんなところが好きなんだろう?」と考える方、一緒に来場されたパートナーと「なんでそれを選んだの?」「これ、一緒だね」と会話を楽しむ方の姿も見られました。

飽きた先にしかない視点で見つけられるもの

イベント会場でのお客さま

トークの後半では、参加者の皆さんから事前にいただいていた質問に答える質問タイムもありました。

「一生懸命、選んで、長く愛していこうと思って買ったものに対して、ときどき飽きてしまうことがあり、悔しくなります。お二人は、住まい自体や家具、配置などに対して飽きるということはありますか?」という質問に佐藤さんは――。

佐藤さん

「すごいありますよ。でも、そのときどきで自分の中に変化があって、価値観や好みって変わるので、飽きることは別に悪いことじゃないのかなと思ってる部分もあります。

同時に飽きてからしか見えない景色っていうのもあると思っています。住まいのように飽きたからといって、そう簡単に手放せないものもありますが、そういうときは飽きた先にしかない視点で新鮮なところを探したり、いいところを探したりというのも楽しいんじゃないかなと思っています」

あっという間に1時間のトークが終了し、「愛着と経年」を巡るおしゃべりが幕を閉じました。

私らしい暮らしを考えるきっかけに

当日は、積水ハウス社員もお客様を直接ご案内したりと交流を深めました。トークセッション以外のイベントの様子もご紹介したいと思います。

たくさんのお客さまにご参加いただきました
猛暑のなか100名近くのお客さまにご来場いただき、
また2000名以上のお客さまにオンラインでご視聴いただきました。
感性フィールドを体験できるエリア
入り口には、感性フィールドを体験できるエリアも設置。
皆さん「これかな?」「なんでそれを選んだの?」と楽しそうに選んでくれました。
感性フィールドを素材で表現した展示エリア
会場内には6つの感性フィールドを素材で表現した展示エリアも。
開場前には佐藤さんも見学。興味津々で矢野にいろいろと質問していました。
イベント終了後には、おみやげを
イベント終了後には、ちょっとしたおみやげも。
イベント会場

積水ハウスはこれまでハウスメーカーとして、安全・安心・快適な「長く住める住まい」を開発、供給してきました。これからは、お客様一人ひとりが時間とともに住まいに愛着を“編み込んで”いけるようになっていってほしい、そんな願いとともに、「life knit design」を発表しました。

愛着というものは、かたちがなく、一人ひとり違うもの。自分がどういう状態が心地いいか、どういうものに愛着を感じるかを一つの言葉で伝えることは難しいからこそ、対話が必要だと私たちは考えています。

住まいづくりのプロセスから見直し、提案するインテリアデザインや家づくりのシステムを一新することで、お客様にフィットした暮らしや住まいの実現につなげていきます。

具体的に住まいづくりを考え始めている方も、まだこれからという方も日常からふと立ち止まって、「私らしい」暮らしや住まいについて考えるきっかけになれていたら幸いです。

Q&A

イベントにご参加いただいた皆様から
寄せられたご質問の⼀部に、
デザイン設計部⻑の⽮野がお答えします。

好きなものがたくさんあって捨てるのが苦手なのですが、たくさんものがあってもステキなお家にするにはどうしたら良いですか?

(40代 / 東京都)

私も同じです。収納のスペースをたっぷりとるというのが通常のご提案だと思いますが、私の提案は、「隠す収納」と「見せる収納」を考えて設計してもらうことをお勧めします。
季節など、時によって、見たかったり、傍に置いておきたい、飾りたいものはかわりませんか?そんな時に、「見せる収納」で大好きなものを都度模様替えして気分転換したり、季節を楽しんだりすることができます。
また、「隠す収納」に収納するものについては置かれる「所在」をしっかりと定める、お持ちのものの納める場所の番地を決めると整理整頓も楽しめるようになると思います!

家を建てる場所、どんな住まいにしたいかまだ漠然としています。今後、家族が増えたりと変化がある可能性も考えた上で、「自分たちらしさ」を大切にするために、どのように家づくりをしていくとよいですか?

(30代 / 東京都)

「自分は、自分の家族と共にどんな暮らしを営んでいきたい?」そんな問いかけから始めてみるのはいかがでしょうか?それぞれの時間を大切にしたいか?家族といつも一緒に過ごすことが大事なのか?仕事を大切にしながらも趣味をきわめたいのか?などなど。
想像から、住みたい場所が決まってきそうです。都会?公園のそば?山の中?そうなれば、マンション、お庭付き、平屋、住まいの形が見えてくる。
それでも決められないときには、どんな風にも変化できるようにきれいな美しい器をまずつくることから始めてみませんか?

空間づくりやデザインのアイデア・イマジネーションの源となっているモノやコトがありましたら、教えていただきたいです。わたしも感性や感覚を磨いていけたらなぁと思っています。

(30代 / 東京都)

少し大げさになってしまうかもしれませんが、空間づくりやデザインのアイデアは、この地球上のすべてにあるような気がしています!
旅に出て見つけた異国の街並みやカフェ、インテリア。はたまた、カプセルホテルでみるびっくりするくらいのコンパクトなアイデア。
一輪挿しのお花が可愛い窓辺。築100年以上の伝統的な家づくりなど、日々の暮らしの中には素敵なアイデアがいたるところに隠れています。是非楽しんで日々きょろきょろしてみてください。

自分と家族の好きな暮らし方が違った時、どうやって折り合いをつけていますか?

(40代 / 大阪府)

喧嘩は健康的ではないので、それぞれのお部屋をまずは持つことをお勧めしますが、それがかなわない場合は、お互いが気に入る「居場所をつくって」みるのはいかがでしょうか?

パートナーの大好きなコレクションを壁一面に飾れる棚をつくってみるとか、一人夕日を眺めながらお茶を楽しむ小さなコーナーなど。
独立した部屋でなくても、ちょっとした居場所がお互いにあるだけで豊かな暮らしが見えてくるような気がします。「どんな場所がほしい?」そんな会話から、すこしずつ、理解が深まるかもしれません。

SUMUFUMU CHANNEL 建築実例や家づくりのポイントを、動画で紹介します

積水ハウスが運営する家づくりのお役立ちサイト。
会員登録いただくと、今回のイベント動画もご覧いただけます。

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日々、機微。

「自分らしい暮らしってなんだろう」。

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life knit design

暮らすほどに愛着が増す
「長く住み続けたい家」へ
一人ひとりの感性を編み込む
積水ハウスの新しい住まいづくり

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