第28回　徳島 えりかさん

世界遺産の話をすると周りはみんなハッピーになる！

――　平日朝の顔から日曜朝の顔へ。4月から、日本テレビ系情報番組「シューイチ」MCとして活躍の場を広げる徳島えりかさん。アナウンサーのお仕事の中で、世界遺産を勉強されたことや資格が役立ったことはありますか？

　局のアナウンサーは、海外ロケに行くような機会はあまりないのですが、2016年のオリンピック取材で、リオ・デ・ジャネイロを訪れた時のことをよく覚えています。ブラジルの世界遺産について現地の方に話をしたら、とても喜ばれたことがありました。その時に、世界遺産ってどの国の人も誇りに思っていて、国内外問わず話のきっかけになるし、みんながハッピーになる話題だなと実感しました。

　今はなかなか海外も国内も旅行に行きづらい状況ですよね。コロナ禍で旅番組などもできない中、以前MCを務めていた朝の情報番組「ZIP！」の企画で、絶景ライターの方たちとGoogleストリートビューで世界遺産を巡るというコーナーを担当しました。Webサイト上ではありますが、「白神山地」などは山道の中まで実際に歩いているように見ることができるんです。2018年の世界遺産登録時に水卜アナウンサーと一緒に訪れた、長崎の隠れキリシタンの里「奈留島の江上集落」もあわせて紹介しました。その時も、ただの旅行好きではなく「世界遺産検定2級を持っている徳島がご紹介します」と肩書に裏付けられ、どれだけ心強かったことか！

水卜さんとはプライベートでも仲良しで、これから世界遺産登録を目指す青森の「三内丸山遺跡」や、滋賀の「比叡山」にも行きました。厄払いに（笑）。

――　日テレ公式YouTubeの自己紹介動画でも世界遺産の話をされていますね。

　自己紹介やプロフィールで「世界遺産が好き」「検定2級」とアピールすると、よく盛り上がります。特に建築が好きなのですが、先述の「ZIP！」の企画でも紹介した、バルセロナの「カタルーニャ音楽堂」は印象的でした。シャンデリアのように垂れ下がるステンドグラスから光が入る構造が見事なのですが、そこでピアノコンサートを聴いたんです。世界遺産の光の中で聴くピアノの演奏は、その空間すべてが音と光で満たされ、とても素晴らしかったです。

もし自分に理系の頭があれば、建築の道に進みたかったと思うこともありました。いつか世界中のコルビュジエ建築巡りもしてみたいですね。

就活の資格欄に「世界遺産検定2級」と書きたくて

――　趣味に留まらず検定資格を取得しようと思われたきっかけは何ですか？

　受検したのはもう10年前になります。大学3年で就活を意識するようになった時、資格欄に漢検や英検以外にも、何かちょっと面白い資格を書いて面接の話題にできればいいなと思ったんです。当時、世界遺産検定は今ほど知られていませんでしたが、私は旅行好きな両親に連れられ子供の頃から割と世界遺産を見てきて、世界遺産は身近な存在でした。大学受験も世界史で受けていたし、いけるんじゃないかと思い、検定2級に挑戦することにしました。

――　その結果、見事に1回でクリアされました。試験勉強はどのようにされましたか？

　基本的には公式テキストです。世界遺産とは人類にとって普遍的な価値があること、登録されるにはきちんと構成要件が整っている必要があること、その土地の文化や歴史、風習などと結びついていることなどが良く分かりました。独学すると面白くてどこまでも広がっていきそうだったので、テキストをベースに重要項目をノートにまとめていきました。また世界遺産を訪れた人のブログを見たりして、ビジュアルを頭に入れてからテキストを読むと名前や知識が一体化して覚えやすかったです。

すごく写真が多くて見ているだけでも楽しかったです！10年でまたずいぶん増えたんですね。

――　勉強した中で印象に残っている遺産はありますか？

　ちょうどこの受検勉強の最中に、チリの鉱山で大きな落盤事故が起きました。自分なりに調べてみると、20世紀初頭のチリには世界最大級の銅山があって、かつて鉱山労働者が住んでいた『セウェル鉱山都市』※という世界遺産があることが分かりました。カラフルな住宅が残るかわいらしさと、往時は賑わっていたであろう廃坑の物哀しさを感じる遺産です。そうしたら、なんと！　試験の最終問題でその遺産が出題されたんです。まさにヤマが当たった！（笑）　その時世界で起きていた事と、自分で調べて勉強した事が繋がった気がしました。
※『セウェル鉱山都市』は2級公式テキスト最新刊には掲載がありません。

――　今まで行かれた中で特に心に残っている遺産はどこですか？

　イギリスの「ストーンヘンジ」を訪れた時はとても神秘的な体験をしました。何もない原っぱに巨大な石がドーンと佇んでいて、これを立てた当時の人たちは、いったい何を考えながらこんな巨石を立てたんだろうと、ただボーっと考え込んでしまったんです。そしたら突然、夕立が降って来て、降った時と同じように突然止んで、澄んだ空気の中を夕陽が沈んでいって……。あぁ、昔の人たちもこんな夕陽を見ながら、こんな風にぼんやり考え事をしていたのかなぁと、なんだか急にその時代の人たちと気持ちが繋がったような驚きの感覚がありました。

行くまでは「ただの石？」くらいに思っていたのですが、ロンドンからバスで2時間、延々と続く草原を歩くと突然巨石があらわれ、なんだか異世界にきたようでした。

あまり知られていない遺産もしっかり勉強して紹介していきたい

――　アナウンサーとして、今後どのように資格を活かしていきたいですか？

　もし世界遺産の話をする機会があれば、メジャーな遺産よりちょっとクセのある、「えっ?　そんな世界遺産があるの？」と思われるような所を紹介していきたい。検定2級の後ろ盾をもって「世界遺産の建物なんですよ」と紹介すると、「すごい建物なんです」と言うだけでなく、より興味を持ってもらいやすいと感じています。世界遺産って、ひとつのことを知ったら知識が連関してどんどんつながっていく。世界遺産をフックに、歴史や文化、そこに暮らす人たちの生活もあわせてちゃんとお伝えできる、そんなアナウンサーになれればと思っています。

上空から見た「グランドキャニオン」は、地球の大きさをまざまざと見せつけられ、人間の力を超えた何か大きなものを感じました。