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本格的な冬の訪れとともに盛り上がりを見せているウインタースポーツ。そのなかでもぜひ注目してほしいのが、世界的な大会で日本人選手が数多くメダルを獲得しているスピードスケートだ。

日本でも馴染みがあるスピードスケートは、その名の通りどれだけ速くリンクを滑走しそのタイムや着順を競う競技だが、そのルールや競技の種類についてはあまり知られていない。そこでスピードスケートをより楽しく観戦するために、同スポーツの歴史や競技ルール、見どころなどを紹介していこう。

スピードスケートの歴史

まずはスピードスケートの歴史について。その始まりはヨーロッパ・オランダとされる。寒い冬の季節、凍りついた川や運河を往来するための手段としてスケートが生まれ、13世紀ごろにはオランダ人によってスケートシューズの原型が作られたという。

競技としてスピードスケートが登場したのは1763年。イギリスで行われた世界初といわれる競技会において、直線コースでタイムが競われた。1892年には国際スケート連盟(ISU)が結成され、世界選手権大会ならびにヨーロッパ選手権大会を毎年1回開催することが決められたという。

スピードスケート 写真

日本では1877年に札幌農学校(現・北海道大学)の教師として来日したアメリカ人がスケート靴を持参し、スケートを広めたといわれている。日本初のスピードスケート競技会は、1909年に長野県で行われた諏訪湖一周スケート大会で、1929年には日本スケート連盟が発足。冬に行われる数々の大会でも日本の得意競技として数多くのメダルを獲得している。2006年に行われた冬の世界的なスポーツ大会からはチームパシュートが新競技として正式採用された。

スピードスケートの概要

スピードスケートとは、1周400mのリンクをどれだけ速く滑走しそのタイムや着順を競う競技だ。滑走距離は種目によってさまざまであるが、短距離の場合、トッププレイヤーとなるとそのスピードは瞬間時速約60kmにものぼる。

「速さ」が醍醐味のスピードスケートであるが、団体戦や長距離種目となると、選手同士の「かけ引き」や、チームワークも重要なポイントになる。シンプルでありながら奥深い競技だ。

それでは、スピードスケートの競技種目やルール、見どころについて解説していく。

スピードスケートのトラックについて

スピードスケートのトラック イラスト

スピードスケートの種目について説明する前に、まずトラックについて理解しておこう。

スピードスケート競技は1周400mのダブルトラックリンクで実施される。これはインナーレーン(内側)とアウターレーン(外側)の2つのレーンからなり、さらにバックストレートというインナーレーンとアウターレーンが交差するエリアが設けられている。バックストレートで交差することで、インナーレーンもアウターレーンもそれぞれ1周が400mになる。

ダブルトラック方式とシングルトラック方式

スピードスケート競技はダブルトラックリンクにて行われるが、その競技方式は、「ダブルトラック方式」と「シングルトラック方式」の2つの分けられる。

「ダブルトラック方式」とは、2人の選手がインナーレーンとアウターレーンをそれぞれの滑走し、バックストレートで交差しながら規定の距離を滑るもので、後述する個人種目(500~10,000m)で採用されている。

一方で「シングルトラック方式」は、ダブルトラックリンクのインナーレーンのみを活用し、一つのレーンを複数の選手が滑走する。団体競技であるチームパシュートや一斉に複数人がスタートするマススタートで採用されている。また一部の大会では、個人種目であってもシングルトラック方式が採用されることもある。

それではスピードスケートの競技種目とルールについてそれぞれ詳しく説明していこう。

スピードスケートの競技種目・ルールについて

タイムを競う「個人種目」

スピードスケートにおける個人種目は「短距離走」「中距離走」「長距離走」に分類される。短距離は男女ともに500m・1,000m。中距離は男女ともに1,500m。長距離は女子が3,000m・5,000m、男子が5,000m・10,000mとなっている。
各レーン1人ずつ滑走するダブルトラック方式となっており、選手の履いているスケート靴のブレード(氷に接する部分が刃状になっている金属パーツ)の一部がゴールラインを通過した瞬間のタイムで順位が決まる。

バックストレートで交差してレーンを変える時は、外側の選手に優先権があり、それを守らないと「進路妨害」とされ失格となってしまう。

スピードスケート 写真

タイムを競う団体競技「チームパシュート」

チームパシュートとは、2チーム(各3選手)でタイムを競う団体競技で、それぞれのチームが1列に並び滑走する。シングルトラック方式が採用され、2つのチームがそれぞれフィニッシュライン側とバックストレート側から同時にスタートし、完走タイムを競う。

1チーム3選手が同時にスタートし、女子は6周、男子は8周、最後尾の選手がゴールインした時点でタイムの早いチームが勝ちとなる。3人全員がゴールした時点で完走となるため、チームメイトと呼吸をあわせつつ、どれだけスピードに乗れるかが重要だ。

スピードスケート 写真

ゴールの着順を競う「マススタート」

マススタートは、2018年の国際的スポーツイベントから正式種目として採用された競技。多数の走者が一斉にスタートするシングルトラック方式で、全16周の着順で与えられるポイントを競う。

レースは4、8、12周目で中間ポイントが与えられ、通過順から1位が5ポイント、2位が3ポイント、3位が1ポイント。ゴールでは1位60ポイント、2位40ポイント、3位20ポイントとなり、中間ポイントと最終ポイントの合計で順位が確定する。

多くの選手が密集して滑ることから、転倒防止のためスタート直後の1周目はゆっくりと滑走することや、プロテクター装着など安全性を考慮したルールが定められている。

スピードスケート 写真

スピードスケートのフライングについて

スピードスケートの全競技に共通するルールとして、「2回目にフライングを犯した選手(チーム)が失格になる」というものがある。
1回目はやり直しとなるが、2回目は即失格となり、このとき1回目と別の選手(チーム)がフライングをした場合でも、2回目にフライングした選手(チーム)が失格となる。
他のスポーツ競技と比べてちょっと変わったルールであるが、1回でもフライングが発生すると一気に緊張感が高まる。

スピードスケートの見どころ

最後にスピードスケートの見どころについて紹介していこう。
その名の通り「速さ」に注目が行きがちだが、それぞれの種目によって見どころが異なる。

個人種目は「速さ」と「持久力」に注目

500m・1,000mの短距離走の見どころは、やはりスピードだ。特に500mは、スタート直後100mの通過タイムが9秒台と陸上男子100mの記録と同程度だが、更に加速しバックストレートでは時速約60kmにも達する。選手のスピード感あふれるダイナミックな滑りが魅力である一方で、コーナーリングにもぜひ注目してもらいたい。短距離走ではコーナーでの転倒や減速が致命的となるため、いかにスピードを落とさず滑りきることができるかが、勝敗を大きく分ける。

中・長距離走の場合は、スピードだけでなく持久力も重要だ。前半から積極的なレースを仕掛けた選手が、最後までスピードを落とさず滑りきることができるかが、勝敗のポイントとなる。強い選手ほど、一定のタイムで周回を重ねていくため、一周のラップタイムに注目してほしい。

チームパシュートは「戦術」に注目

チームパシュートは各チームの戦術にぜひ注目してほしい。先頭で滑走する選手には空気抵抗がかかるため、先頭を交代しながらレースを展開していく必要がある。どの周回で誰が先頭を担当するのか、その順番などメンバーの実力や特徴に合わせて戦術が考えられているのだ。

また、戦術だけでなく滑り方も重要だ。2番目、3番目の選手はなるべく空気抵抗を受けないよう、前の選手にくっつきつつ、脚の動きもそろえて滑走する。空気抵抗による減速ロスを最小限に抑えるために、その一糸乱れぬ美しい隊列姿にも注目したい。

マススタートはラスト1周にドラマが待っている

マススタートは、ゴール前最後の1周の厳しい競り合いが見どころだ。この競技はゴール時の獲得ポイントが1番高いため、どんなに途中の順位が高くても逆転されてしまう可能性がある。そのため、選手たちは中間ポイントを稼ぎつつ、ラストスパートに向けて備えていく。そして、最後の周回で温存していた体力をすべて振り絞り、猛スピードで滑走するのだ。そのデッドヒートの様子には、思わず胸が熱くなるだろう。

どのタイミングでラストスパートを仕掛けるのかは、その選手の特徴やレースの流れにより変わるため、スピードや持久力だけではなく、選手同士のかけ引きも見どころだ。

スピードスケート 写真

まとめ

スピードスケートはその名の通り「速さ」を競いつつも、レース中の「かけ引き」や団体戦での「チームワーク」といった要素があり、シンプルながら奥深い競技である。競技の種類や見どころを理解した上で観戦すると、スピードスケートがより一層楽しめるはずだ。

この冬開催される国際的スポーツイベントでは多くの日本人選手の活躍が期待できる。ぜひスピードスケートについて理解し、氷を駆ける選手たちを応援してみてはいかがだろう。

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