【フルコンタクト空手】渡辺大士 男子型で初代世界一!! 女子組手で網川来夢2位、藤原桃萌4位と福岡支部大健闘/新極真会・全世界空手道選手権大会

第13回全世界空手道選手権(2023年10月14日、15日・東京体育館)

 「第13回全世界空手道選手権大会」(新極真会主催)が14、15日、東京都渋谷区の東京体育館で開催された。4年に一度、体重無差別で争われる大会には、各国の代表選手が集まり、世界一を決める死闘が組手部門で繰り広げられた。今回からは初めて型部門も行われた。日本代表は組手・型ともに男女そろって優勝という快挙を成し遂げた。男子組手は入来建武(28)(東京城南川崎支部)が初優勝し、女子組手は鈴木未紘(18)(厚木・赤羽支部)が史上最年少で制した。女子型は田中利奈(20)(岡山東支部)が優勝を飾った。日本代表として男女8人が出場した新極真会福岡支部勢では、男子型で渡辺大士(44)が初代王者に輝いたのをはじめ、女子組手で網川来夢(20)が準優勝し、藤原桃萌(24)が4位に入賞した。 (村田 和哉)

渡辺は、道場生の子供や若い指導員を引っ張ってきた

男子型/渡辺大士(日本代表・福岡支部所属) 初代世界一の栄冠をつかむ

 渡辺は決勝で、全欧州大会王者でデンマーク代表のニコライ・ラン・イェンセンを判定4―1で破り、男子型で初代世界一の栄冠をつかんだ。

 最大の関門は準決勝だった。相手は田中健太で、7月に開かれたカラテドリームフェスティバル型・日本代表選抜戦の優勝者。演武する指定型は、50挙動を行う「観空(かんくう)」で、選抜戦で敗れた時と同じ型でもあった。

 静寂と緊張感に包まれる場内で、道着が擦れる音と呼吸が響き渡り、気持ちのこもった2人の演武が続いた。判定の瞬間、審判が上げた旗の数は割れ、3―2。渡辺が僅差で上回り、決勝へ進んだ。

 決勝の指定型は「五十四歩(スーシーホ)」。観空と同じく50挙動だが、五十四歩は、いつもやってきた型で、自信をもって臨んだ。演武をやり終えた時、優勝を確信した。

44歳の空手家 再び表舞台へ 第2章始まる

 10歳の頃、「けんかに強くなりたい」と、鹿児島県・奄美大島で空手道場の門をたたいた。組手で現役を続けて、2013年の全日本ウエイト制大会を最後に引退した。

 昨年のある日、世界大会で型が始まることを知った。稽古後、福岡支部長も兼ねる緑健児師範と昼食を共にしている間も、頭から離れなかった。そして食事を終えてから、「もう一回、挑戦していいですか」と願い出た。型での現役復帰を決意し、第2章が始まった。

 再び表舞台に戻ったが、ドリームフェスティバルの日本代表選抜戦で3位に終わった。優勝できると思っていただけに、ショックは大きかった。組手をしていた頃と同じように走り込みや筋力トレーニングに重点を置いた稽古では、型で勝てないことを痛感した。

選抜戦の敗戦でたくさんの気付きを得て世界王者へ

 「負けたからこそ、たくさんの気付きがあった」。型は、正確さや技の緩急、気迫、呼吸といった総合力が求められる。「型は自分を信じ演武することが大事」と考え、死に物狂いで稽古を繰り返した。対戦相手の映像を見て研究することもしなかった。

 緑師範は「いつ電話をかけても、息が上がっていた。それほど稽古に励んでいた」と賛辞を贈った。同じ奄美大島出身で先輩の姿を長年見てきた亀山真は「昔から誰よりも稽古している」と、改めて尊敬の念を覚えた。

 渡辺は今大会、型の男子主将として日本代表を引っ張った。自身はきっこうする勝負を次々と制し、優勝をたぐり寄せた。「道場生にいつもあきらめるな、全力でやれと指導してきた。優勝で示しがついた。これからも精進していく」と、44歳の空手家は気持ちを新たにした。

▼2回戦 ○4―1 シリル・ベヒリ(スイス)

▼3回戦 ○4―1 マタス・サスナウスカス(リトアニア)

▼準決勝 ○3―2 田中健太(日本)

▼決勝  ○4―1 ニコライ・ラン・イェンセン(デンマーク)

渡辺は優勝後、緑師範(左)からの34年間にわたる指導に改めて感謝した

【女子組手】

網川は、日本代表女子のエース鈴木との頂上決戦に挑んだ

網川来夢(日本代表・福岡支部所属) 初出場で世界2位

 網川が無差別級の世界大会初出場にして、世界2位の称号を手にした。

 3回戦の相手は、野邑心菜。全日本フルコンタクト空手道選手権(JFKO)重量級を制している実力者だったが、最終延長3―2の僅差で破り下克上を果たすと、そこから網川の快進撃は始まった。

優勝候補のグスタイタイテを撃破

 続く準々決勝では、昨年のウエイト制世界大会重量級を制した優勝候補でリトアニア代表のブリジタ・グスタイタイテが立ちふさがった。網川はひるまずに真っ向勝負を挑み、得意の膝蹴りを中心に下段回し蹴りや下突きが何度も相手をとらえた。「行けるぞ」という声援を受けて奮闘。最終延長までもつれ込み、判定で勝利し、大金星を挙げると、会場は大歓声に包まれた。

 準決勝戦は、同じ福岡支部の藤原との対決となった。大会で対戦するのは初めてだったが、一進一退の攻防の末、体重判定で破った。

 決勝のコートで向かい合ったのは、18歳の高校生で女子組手の日本代表主将を務める鈴木未紘。過去に対戦経験はなかったが、自分の力を出し切ることだけを考えて臨んだ。本戦は引き分けで延長へ。最後まで粘り強く果敢に攻め立てたが、0―5の判定で破れ、世界女王の座にあと一歩及ばなかった。「相手の方がチャンピオンになるという気持ちが強かった」と素直に負けを認めた。

控え選手スタートからの快進撃 全九州大会の敗戦は意味があった

 当初、今大会の女子組手日本代表メンバー9人に含まれていなかったが、控え選手として参加した6月の代表強化合宿の時に、正式なメンバー入りを告げられた。その後、8月の全九州空手道選手権に日本代表で参戦したものの、2回戦で敗退。自信を失いかけたが、気持ちを奮い立たせた。「ここで負けているようでは世界で勝てない」。それからは、練習量を格段に増やした。

 「全九州大会で負けたことが努力するきっかけになった」。過去の敗戦を自ら意味のあるものに変え、世界に自身の名を知らしめた。

▼2回戦 ○0―1、4―0 チェンゲ・トート(ハンガリー)

▼3回戦 ○0―1、0―2、3―2 野邑心菜(日本)

▼準々決勝 ○0―0、1―0、4―0 ブリジタ・グスタイタイテ(リトアニア)

▼準決勝 ○0―0、0―0、1―0、体重判定 藤原桃萌(日本)

▼決勝 ●0―1、0―5 鈴木未紘(日本)

藤原桃萌(日本代表・福岡支部所属) 世界4位 前回大会から躍進

 2回目の出場となった藤原が4位に食い込んだ。4年前の前回は、3回戦で姿を消していただけに、価値ある入賞となった。

1勝1敗の漢藍理と再び激突

 準々決勝では、全九州大会決勝で対戦した漢藍理と再び激突した。5月のJFKOでは敗れ、8月の全九州大会では勝利し、1勝1敗だった。全九州大会と同様に勝利を収めた。

準決勝で同門対決が実現

 続く準決勝の相手は、別のブロックから勝ち上がってきた同じ福岡支部の網川。朝や夜に、ずっと一緒に稽古をしてきた仲だ。「準決勝で絶対に当たろうね」と約束。その夢がかなった試合前に、「お互いに頑張ろう」と健闘を誓い合った。

 手の内を知っているため、藤原は全力を出し切ることを心がけた。本戦、延長戦とも、審判員5人全員が引き分けの判定。最終延長でも決着はつかなかった。大会の規定により体重判定の結果で、網川が決勝進出となった。「ボディを効かせて圧力で前に行こうと決めていたが、まだまだだった。準決勝で網川選手と対戦できたことで、稽古は間違っていなかったと思った」と藤原。悔しさをにじませながらも、表情は晴れ晴れとしていた。

 3位決定戦は、「高速パンチ」が自慢の目代結菜との対決。メディアでも盛んに取り上げられている選手でその名は知っていたが、実際に戦うのは今回が初めて。「パンチは速いだけでなく、一撃一撃も強かった」と惜しくも敗れ、4位。それでも「4年に一度の大会に、今回も出場できて良かった」と満足げに語った。

▼2回戦 ○5―0 ヴァレンティナ・クルミン(リトアニア)

▼3回戦 ○5―0 ミリヤム・ビョークルンド(スウェーデン)

▼準々決勝 ○1―0、1―2、5―0 漢藍理(日本)

▼準決勝 ●0―0、0―0、0―1、体重判定 網川来夢(日本)

▼3位決定戦 ●1―0、0―4 目代結菜(日本)

福岡支部の先輩後輩対決を終えて笑顔を見せる藤原(右)と網川

身長が20センチ以上高いセシンスキーに挑む多田

入賞逃すも最後まで奮闘

福岡支部から日本代表で出場した8人のうち、5人は入賞できなかったものの、最後まで諦めずに技を繰り出した。

【男子組手】

多田成慶(日本代表・福岡支部)初出場で5回戦進出 セシンスキーと奮戦

 活躍が期待された多田成慶は、無差別級の世界大会は初出場ながら、同支部の日本代表男子で唯一、5回戦まで勝ち進んだ。2日目の4回戦では、8月の全九州大会で優勝したカザフスタン代表のアンジェイ・キンザースキーを撃破した。5回戦の相手は、リトアニア代表で身長193センチのエドガー・セシンスキー。多田は「福岡支部の男子で残っていたのは自分だけだったので、みんなのかたきを討つ気持ちで挑んだ」と奮戦したが、敗れた。

▼2回戦 ○5―0 ンー・パーク・チョン(マカオ)

▼3回戦 ○一本(下段回し蹴り)チンギス・サギンディコフ(キルギス)

▼4回戦 ○2―0、5―0 アンジェイ・キンザースキー(カザフスタン)

▼5回戦 ●0―4 エドガー・セシンスキー(リトアニア)

尊敬する先輩の渡辺と同じ世界の舞台に立った亀山

亀山真(日本代表・福岡支部所属)4回戦で無念の一本負け

 亀山真は、闘志がみなぎり、3回戦は出稽古で福岡支部を訪れていたデンマーク代表のサミュエル・ハラスを延長の末に4―0で下した。「一緒に稽古をしてきたが、本当に強い相手だった」と亀山。続く4回戦は、優勢の試合展開に持ち込んだが、カザフスタン代表のアントン・ジマレフの一撃に崩れ落ちた。左上段膝蹴りを受けて一本負け。亀山は「国外選手の心が折れない強さを感じた」と唇をかみしめた。

▼2回戦 ○合わせ一本(下段回し蹴り、下段回し蹴り) 牟奇偉(中国)

▼3回戦 ○0―0、4―0 サミュエル・ハラス(デンマーク)

▼4回戦 ●一本(上段膝蹴り) アントン・ジマレフ(カザフスタン)

こん身の下突きを放つ江口

江口雄智(日本代表・福岡支部所属)このままでは終われない 再起を誓う

 前回7位の江口雄智も、初日の3回戦までは順当に勝ち上がったものの、2日目の4回戦でジョージア代表のダヴィット・ムスカラゼに延長0―3で敗北。「練習通りの動きを試合で出し切れるようにもっと稽古に励む」と、来年のJFKOに向けて再起を誓った。

▼2回戦 ○合わせ一本(中段突き、中段回し蹴り) スリャ・バハドゥール・ブダトキ(ネパール)

▼3回戦 ○5―0 楊宇(中国)

▼4回戦 ●0―2、0―3 ダヴィット・ムスカラゼ(ジョージア)

大坪は国外選手に臆せず立ち向かった

大坪裕希(日本代表・福岡支部所属)初出場 3回戦で激闘を繰り広げるも惜敗

 無差別級の世界大会初出場となった大坪裕希は、初戦の相手に上段膝蹴りで一本勝ち。3回戦では、スウェーデン代表のアリ・ハイデルと激闘を繰り広げた。最終延長までもつれ込んだが、判定2―3で惜敗。「もっとやれることはあった。決め切る技がなかった。フィジカルの重要性も実感した」と課題を口にした。

▼2回戦 ○一本(上段膝蹴り) サヌル・ショシャ(南アフリカ)

▼3回戦 ●1―1、0―2、2―3 アリ・ハイデル(スウェーデン)

男子型に出場し、演武を披露する山野

【男子型】

山野翔平(日本代表・福岡支部)初戦突破するものの2回戦で敗退 最善尽くした

 山野翔平も初戦を突破したが、2回戦でウクライナ代表のヤロスラフ・コファルチュクに1―4で敗れた。大会を通しては、「100%出し切れたとは言えないが、最善を尽くした」と語った。

▼1回戦 ○5―0 ネストル・クバス・アルバラド(ホンジュラス)

▼2回戦 ●1―4 ヤロスラフ・コファルチュク(ウクライナ)

(2023/10/26紙面掲載)

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