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2024年春闘 地方でも持続的賃上げを

 日本経済の行方を左右する2024年の春闘が始まった。歴史的な物価高の中で昨年のような高水準の賃上げを持続できるかが注目される。

 岡山県内の労働団体や経済団体、行政の関係者が集まる会議が1月末、岡山市内で開かれた。厚生労働省が各地の労働局に賃上げをテーマに開催するよう通達していた会議で、首相と連合、経団連のトップが協議して成果を上げた「政労使会議」の地方版とされる。

 岡山の会議では「所得を増やして経済の好循環を促すのは望むべき方向だ」といった発言が労使双方からあり、賃上げの必要性については、おおむね一致した。他方で経済団体からは「小規模事業者は賃上げの原資が不足して苦しんでいる」「原材料費や労務費の上昇分を販売価格に転嫁できていない」などと、厳しい現状を指摘する意見も相次いだ。

 昨年の春闘では、企業の好業績を背景に高い賃上げが実現した。連合傘下の労働組合の賃上げ率は、全国平均で3・58%だった。岡山県内でも平均3・04%と、比較可能な13年以降で最大となった=グラフ

 一方、円安などでエネルギーや食品の価格が高止まりし、実質賃金はマイナスが続いている。23年の岡山市の消費者物価指数は3・1%の上昇となり、32年ぶりの高い伸びを記録した。名目上の賃金が上がっても労働者の家計はむしろ苦しくなっているのが実情だ。持続的な経済成長のためには、物価高を上回る賃金上昇により個人消費を底上げしていくことが望まれる。

 既に全国大手の中には、賃金の大幅な引き上げを表明している企業がある。ただ地方の中小では、人材を確保するために体力を削って賃金を上げているという企業も多い。賃上げを社会全体に波及させるには、中小企業がその原資を安定して確保することが不可欠となる。

 中小に仕事を発注する大手企業は、定期的に取引条件を見直すなどして、労務費の価格転嫁を進んで受け入れる努力が求められる。転嫁を求める中小との交渉に応じなかったり、取引を打ち切ったりする大手企業に対しては、国が改善を強く促すべきだ。

 賃上げに取り組む中小企業に対しては、税制優遇や補助金などの支援措置が設けられている。地方でも活用が進むよう、国や自治体、産業支援機関などは制度の周知やアドバイスに努めてもらいたい。

(2024年02月07日 08時00分 更新)

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