今年の文化功労者が21日発表され、俳優、北大路欣也(80)らが選出された。記者会見に臨んだ北大路は「一作一作に協力してくれたスタッフの思い、姿がバーとよみがえってきて、『ああ、こうやって皆さんに支えられて今日があるんだな』と思った」と振り返り、周囲への感謝を何度も口にした。
父親の俳優、市川右太衛門同様、紫綬褒章、旭日小綬章を受章している大俳優に、また一つ栄誉が加わった。
「すごいエネルギーだし、輝きだったし、力だし、あこがれ。そういう先人の背中を追いかける時期が、若いころはいっぱいありました」と先輩の活躍が糧になったと明かす。
それだけに最大限の敬意を払う。尊敬する先輩の名はと質問されると「数えきれない先人の方と接しているので、名前を挙げなかった方に失礼に当たる」と力強いまなざしで言い切った。
そんな中でも一人だけ〝特別な存在〟を口に。2014年に享年83で亡くなった高倉健さんだ。健康法を聞かれた際、20~30代にジムで筋トレをしていたとして、「高倉健さんに連れていかれた。ひっぱっていかれて『やれっ!』と。10年ぐらい続けました」と明かした。そして「つらかったですけど、それが大いに役に立ちましたね」と感謝した。
映画「八甲田山」「仁義なき戦い」シリーズ、テレビでは「銭形平次」、NHK大河ドラマ「竜馬がゆく」など演じる時代を選ばない幅広い演技が光る。「時代劇、現代劇の垣根はないです。同じ感覚でやっている。現代劇も現代劇も心は一緒。垣根を作って仕事したことは一度もないです」と自らの信条を語った。
まだまだ前に向かおうとする意欲は旺盛だ。年齢について質問が出ると、ことさら大きな声で「はいっ!」と一声あげ、笑った。続けて「歳は80ですが、精神的にはまだ60代ぐらい」ときっぱり。
単なる若作りではない。「80代をやるのは90歳になってから。通ってきた〝道〟を振り返って(その年齢のことが)わかるんです」と理由を力説した。
それができるのは〝日常〟があるからと分析する。日常の繰り返しがリズムを生むことで「1日が楽しくなる。興味がわいてくる。その1歩1歩だと思います」。好奇心が大役者をさらに進化させる。