2006年頃からは母親(17年死去、享年85)の介護で東京から大阪に戻った。現在は独身で、父親(90)と2人暮らし。「父は今のところ自分のこともできていて大丈夫ですが、私の顔をみると逃げるんですよ。要するに『ちゃんとしなさい!』とか嫌なことばかり言うので」とユーモラスに明かす。
父親との生活では、「必要以上にお年寄りに手を貸してはいけないと学びました。優しくすると自分で動こうとしなくなり、できないことが増えてくる」と距離感を大切にする。一方で、「限りある命を後悔のないように生きるという思いが強くなった」と気付いたという。
仕事のたびに上京するなど多忙だが、「大阪ではご近所さんと『お父さん元気よね』などと日常会話でお酒を楽しんだり。仕事とはオンオフになるし、生活自体が気分転換」と好循環だ。
信条は「ルールを細かく決めすぎると逆にしんどくなる」で、おおらかな人柄も魅力。8月に還暦となる60歳の誕生日を迎えるが、日々の体幹トレーニングの成果もあり「(加齢で)視力が落ちたくらいで体にギスギス感はないです。ステージでの集中力を絶やさないように健康と気持ちのバランスは大切」と現役継続を意識する。
「これから世の中が変わったとしても、歌はどこだって歌える。さまざまなご縁でデビューからいい曲に恵まれてきたし、辞めるのはもったいない」とキッパリ。歌手人生と両親との生活で培ったしなやかな姿勢で、歌の世界と〝エンドレス〟に向き合う。
★YouTubeで人気向上
香西はYouTube動画「最近どう?」も人気。仲良しの山本譲二(73)、吉幾三(70)とお酒を飲みながら下ネタ含みの爆笑トークで盛り上がる。若者からも注目されており「私の曲を知らないだろうけれども、『香西さんですか?』と声をかけてくれて刺激になります」とにっこり。一方、印象に残る自身の楽曲は「あゝ人恋し」。レコ大を受賞した「無言坂」のB面だが、本来は「あゝ-」がA面で「私の要望でA面が変わったのですが、本当にいい曲なのでいつか再リリースでもできたら」と希望した。
■香西 かおり(こうざい・かおり)
1963(昭和38)年8月28日生まれ、59歳。大阪府出身。88年に「雨酒場」でデビュー。同曲で同年の第30回日本レコード大賞新人賞を受賞。91年に「流恋草」のヒットでNHK紅白歌合戦に初出場。93年に「無言坂」でレコード大賞を受賞。2012年にデビュー25周年記念曲「酒のやど」のヒットで5年ぶりに紅白出場。35周年記念曲は、ほかに第1弾「恋街しぐれ」、第2弾「もしや…あんたが」をリリースした。