DeNAからドラフト1位指名された松尾汐恩(しおん)捕手(18)=大阪桐蔭高=が9日、大阪市内のホテルで入団交渉に臨み、契約金1億円、年俸1100万円で合意した。背番号は通算2432安打を放った石井琢朗チーフ打撃コーチ(52)が現役時代に付けていた「5」に決定。松尾は走攻守の3拍子そろった捕手として〝自分色〟の番号とし、正捕手の座をつかむことを誓った。
無限の可能性を秘めた18歳の捕手に、最大級の評価ともいえる背番号が用意された。「5」。大きな期待が込められた数字に、松尾は背筋を伸ばした。
「いい番号をもらったと思っています。偉大な先輩方が築き上げてきた番号だと思うので、自分も頑張りたいと思います」
球団(前身を含む)では1989年入団の谷繁元信(江の川高、現石見智翠館高)以来、34年ぶり2人目となる捕手の1位指名。背番号5は、捕手のイメージが薄い番号だが、それも新たな捕手像を期待されてのものだ。松尾は「これからそう(ふさわしいと)思っていただけるようになれたら」と力強かった。
元は遊撃手で、大阪桐蔭高2年時に捕手に転向。走攻守の3拍子がそろい、俊敏な身のこなしを武器とする、まさに既存の捕手像を覆す才能の持ち主だ。ベイスターズの背番号5といえば、現役時代に通算2432安打、358盗塁をマークした石井チーフ打撃コーチ。ともにプレーし、1998年の日本一メンバーだった進藤達哉編成部長(52)は「石井コーチは名球会にも入った選手。それを超えてくれ、と。そういう選手になってほしい」と、込めた思いを明かした。
現在、母校でトレーニングを続けている松尾は、憧れの存在として日本代表「侍ジャパン」でもプレーする牧を挙げ「いつも動画を見ています。軸がぶれない打撃は参考にさせてもらっているので、(話を)聞きに行きたい」と弟子入りを志願した。9月にU18W杯を終えてから約9キロ増量し、現在の体重は82キロ。食事の量を増やし、プロ仕様の体づくりにも励んでいる。
「『(最初の)3年間を頑張ってレギュラーを取れるように』と言っていただきました。自分の長所である積極的な打撃とスピード感のあるプレーを生かして頑張りたいと思います」。松尾は偉大な背番号にふさわしい、スピード感あふれるニュータイプの捕手として、プロの世界で活躍することを誓った。(湯浅大)
★契約金の使い道は? ドラフト1位での入団ということもあり、松尾は高校生ながら契約金1億円、年俸1100万円の好条件で契約に合意。「自分がそんなにいただいていいのかと思った。ありがたいですし、光栄です」とほほ笑んだ。使い道はまだ考えていないというが、幼少期からお世話になった人たちに思いを巡らせ「何らかの形で(恩返しを)やっていきたいです」と語った。
■松尾汐恩(まつお・しおん) 2004(平成16)年7月6日生まれ、18歳。京都府出身。大阪桐蔭高で2年春から4季連続で甲子園に出場。2年夏から捕手としてチームを牽引し、21年秋の明治神宮大会、22年春の甲子園優勝に貢献。高校通算37本塁打。U18W杯では日本代表の正捕手として銅メダルに輝いた。178センチ、82キロ。右投げ右打ち。