私の両親は学生時代、陸上選手で、姉も800メートル走の選手。私も幼いころから足が速くて、中学1年から陸上部で練習に明け暮れました。
高2のとき、神奈川県大会の200メートル走で25秒2で優勝…。1988年にソウル五輪で金メダルを取ったアメリカの女子短距離選手、フローレンス・ジョイナーさん(故人)に憧れ、五輪選手を目指した時期もあります。
ところが、高3のとき、足の肉離れで全治2カ月の大けが。それをきっかけに五輪選手はあきらめ、スポーツトレーナーとかスポーツ関連の道に進もうと思ってました。でも、姉が内緒で応募した現在の所属事務所のオーディションに受かり、高校を卒業後、女優の仕事を始めたんです。
「天うらら」に出たときは21歳と若く、足だけはまだ速かった。事件が起きたのは、私が演じるうららが故郷・栃木に戻ったシーンです。日光で偶然、思いを寄せる男性がバスに乗り込むのを見かけ、発車したバスを走って追いかけるという設定でした。
割と平坦だけど、曲がりくねった道で、バスもそんなにスピードは出せない。とはいえ、台本には「うらら、必死になって追いかける」というト書きがあるから、懸命に走りました。ところが、本当は追いついてはいけないのに、何度やっても追いついてしまう。NGの連発でした。
陸上選手だったので、必死になって走ると、どうしてもスピードに乗ってしまう。仕方なくスピードを落とそうとすると、今度は走り方が不自然になって必死さが出ない。結局は運転手さんに頼みこんでスピードを上げてもらい、私もできるかぎり全力で走ることで乗り切りました。