気温上昇で雪崩事故頻発、専門家「地形見て防げる」 羊蹄山や利尻山で死亡事故

雪崩が起きた北海道倶知安町の羊蹄山=11日午後1時50分(共同通信社ヘリから)
雪崩が起きた北海道倶知安町の羊蹄山=11日午後1時50分(共同通信社ヘリから)

3月に入り、気温が上昇する中、各地で雪崩による死亡事故が相次いでいる。11日には北海道俱知安(くっちゃん)町の羊蹄山でスキーをしていた外国人男女2人が死亡した。いわゆる「春山」を楽しむ登山客やスキー客が増える時期だが、専門家は「地形に注意すれば事故は防げる」と呼びかける。

羊蹄山の雪崩事故は11日午前10時ごろ、北側斜面の5、6合目付近で発生したとみられる。未整備の場所を滑るバックカントリースキー中の外国人とみられる男女6人のうち、3人が巻き込まれ、2人が死亡した。この日の俱知安町の最高気温は、3月下旬並みの5・3度だった。

このほか、3日に北海道・利尻山で発生した雪崩で女性1人が死亡し、男性1人が足を骨折した。2日には鳥取県・大山の雪崩で3人が巻き込まれ、うち男性2人が行方不明となった。同日に長野県では10人が巻き込まれる雪崩も起きた。

日本雪氷学会北海道支部は羊蹄山と利尻山の現地調査を行い、羊蹄山については新雪の層が滑り落ちる「表層雪崩」で、長さ約2キロ、幅10~20メートルに及んでいたと明らかにした。また、利尻山の雪崩は2月の暖気の影響で一度解けた雪が再び凍り、その上に新たに積もった不安定な雪の層が大規模に崩れた可能性が高いと指摘した。

雪崩は気温が上昇する春先に起きる印象が強いが、表層雪崩は気温が低い冬場にも起き、雪崩事故の多くを占める。積雪が全て崩れる「全層雪崩」は融雪期に起きやすいが、発生数自体は少ない。春先は週末を中心に山に入る人が増え、急激な積雪増加のタイミングと重なることで雪崩に巻き込まれるリスクが増えるとされている。

気象庁によると、長野県の北部、中部や栃木県北部では13日も雪崩注意報が出ていたが、14日以降も注意報級の危険度が高い状態が続くとみられる。週末にかけて、全国的に気温が上昇するとの予報も出ている。

日本雪崩ネットワークの出川あずさ理事は、雪崩事故に巻き込まれるのを防ぐために「雪崩地形」を重視する。雪崩は、①傾斜30度以上②風の影響で雪が堆積③急激な傾斜変化のある形状④植生が少ない-といった地形で起きやすい。

出川理事は「地形を見極め、安全度の高い場所を選んで進むことが重要。リスクの高いところに行く場合でも、集団で入らないなどのリスク回避行動を取れば大きな事故は防げる」と注意喚起している。

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