権力闘争のなかで異彩放つ陰陽師 「光る君へ」安倍晴明役のユースケ・サンタマリア

安倍晴明を演じるユースケ・サンタマリア ©NHK
安倍晴明を演じるユースケ・サンタマリア ©NHK

平安時代、世界最古の長編小説といわれる『源氏物語』を書き上げた紫式部。希代の物語が生まれた背景にあったのは、想像力と情熱、1人の男性への思いだった。吉高由里子主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」。宮中での権力闘争が繰り広げられるなかで異彩を放つのが、ユースケ・サンタマリア演じる陰陽師(おんみょうじ)の安倍晴明(あべのはるあきら)だ。

「決めつけず演じる」 出演者インタビュー

 ※『光る君へ』完全読本より一部抜粋
 《数多くの映画やドラマで描かれてきた安倍晴明だが、今作では、神経質そうな雰囲気と出世欲を抱いた人間臭さあふれる人物像が印象的だ》
 晴明というと少し前に陰陽師ブームがあったので、イケメンの貴公子がサイキックパワーで魔を祓(はら)うというイメージをお持ちの人たちも少なくないと思います。ところが今作の晴明は、世渡り上手な野心家で、不思議な力があるのかないのか「どうなの!?」と思わせる描かれ方をしています。
 《藤原兼家(段田安則)から、ライバルである関白の娘・遵子(のぶこ)に子供ができないよう呪詛してほしいとの依頼を受けた。晴明は呪術の才能も持ち合わせた存在だ》
 晴明は星を見ることで政情や人の死期などを読んだりもするので、第六感のようなものが多少発達しているとは思います。ただ、晴明の言動が世の中の動向を読んだうえでのことなのか、自分の野心のみを考えてのことなのか、演じている僕自身もわからなかったんですよね。
 しかも、陰陽師指導の先生も、「これといって〝印〟を結ぶような決まった型はないですから、祈祷(きとう)のシーンもお好きなようにどうぞ」とおっしゃるんです。それを聞いたときはどうしようかと困惑しましたが、人間って思っていることとやっていることが違うときもありますし、そもそも矛盾だらけだと思うんですよね。そう腹をくくってからは、晴明像を決めつけずに演じるのもいいなと感じるようになりました。
 《脚本を担当する大石静は、本作で、権謀術数渦巻く展開を目指すことを明かしている。宮廷の官僚でありながら、呪術や占術を操る晴明の存在感は大きい》
 晴明が登場すると聞いて、派手なパフォーマンスを期待された方は少し肩透かしを食らうかもしれません。みなさまに興味を持っていただけるかというところでやっているので、予定調和とはいかない晴明をお楽しみください。
安倍晴明 陰陽寮(おんみょうりょう)に属する天文博士で、陰陽師として朱雀天皇から一条天皇まで6代の天皇に仕える。朝廷で重要な決断を要する場面では、陰陽五行説や天体観測などをもとに、その決断についての吉凶を判断する。並外れた占術や呪術の才能を持ち、常人にはない力があると畏怖(いふ)される存在。天皇や貴族の生活はもちろん、政局にも大きな影響をおよぼす。

ユースケ・サンタマリア

1971年3月12日生まれ。大分県出身。ラテンロックバンドのボーカル&司会者としてデビュー。現在は、俳優・司会者・バラエティータレントなどをメインに幅広く活躍中。大河ドラマは『麒麟がくる』に続いて2作目の出演。

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