不祥事に揺れる自民に筋を通す 浜田靖一国対委員長は党人派の兄貴分

記者団の質問に答える自民党の浜田靖一国対委員長=22日午後、国会内(春名中撮影)
記者団の質問に答える自民党の浜田靖一国対委員長=22日午後、国会内(春名中撮影)

自民党国対委員長に22日就任した浜田靖一前防衛相(68)は国会対策や防衛・安全保障、水産分野で党内外から一目置かれる存在だ。人間関係の機微を踏まえ、後輩議員や部下を大切にし、仁義を欠いた問題には激高する昔ながらの「党人派」として慕われる一面があるからだ。浜田氏がよくいう言葉は「筋が通らねえ」─。党幹部として不祥事に揺れる自民党に筋を通すことができるか。

浜田氏は無派閥議員のグループ「無派閥有志の会」の会長を務め、所属する梶山弘志元経済産業相や野田聖子元総務相らが同志だ。令和3年10月の総裁選を巡り、野田氏が出馬に必要な推薦人確保が難航した際は、友人として野田氏のため奔走した。

2次安倍晋三政権発足直後は石破茂元幹事長の腹心だった。ただ、幹事長時代の石破氏が浜田氏に相談なく、石破氏を補佐するポストを新設した対応に「筋が違う」と感じ、浜田氏は次第に距離を置くようになる。次期首相候補と目されながら、石破氏が党内基盤を固められなかった背景に、ある閣僚経験者は「浜田氏を失ったことだ」と指摘していた。

派閥に属さないからこそ、党内横断的に若手の成長を楽しむことができるのも浜田氏の特徴だ。国防族や農林水産族など期待する若手に目をかけ、一部を自身が関連する議員連盟の幹部に引き立てるなど背中を押す。平成30年には国会改革を志した小泉進次郎元環境相に乞われ、超党派の「『平成のうちに』衆議院改革実現会議」の会長に就任。その改革姿勢から党内に軋轢も生じかねない小泉氏の「弾除け役」を買って出たこともあった。

父は「ハマコー」ことタレントで元衆院議員の浜田幸一氏。気性の荒さでは父に劣らない。

「自民党国防部会をなめんじゃねえぞ、この野郎」

令和2年10月の国防部会。政府が配備を断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア(地上イージス)」の代替策を根回しなく説明された際はこう怒りのボルテージを上げていったという。同年6月に河野太郎防衛相(当時)が党に相談なく地上イージスの配備計画を打ち出したことへの不満がたまっていたようだ。

昨年8月に就任した防衛相時代、力を入れたのは老朽化した自衛隊の隊舎や宿舎の建て替えなど自衛官の待遇改善だった。赤坂議員宿舎での主食はカップ焼きそば「ペヤング」だと周囲に冗談めかすのも、外出すれば帯同するSP(セキュリティーポリス)に負担をかけるからだ。

部下を重んじる浜田氏にとって痛恨だったのが今年4月に起きた陸上自衛隊員10人を乗せた陸自ヘリコプターの事故。冷静な判断が求められる実力組織のトップには常に感情のコントロールが求められるが、事故直後の記者会見で搭乗者の名前を読み上げる直前、声を詰まらせ涙ぐんだ。

(奥原慎平)

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