枝野幸男さん、安保法制「政策としてダメと言わない」志位氏と「反中共」一致~夜の政論③

マッコリを味わう立憲民主党の枝野幸男前代表=東京都新宿区四ツ谷の「龍月園」(酒巻俊介撮影)
マッコリを味わう立憲民主党の枝野幸男前代表=東京都新宿区四ツ谷の「龍月園」(酒巻俊介撮影)

立憲民主党の枝野幸男前代表と、東京・四谷の老舗焼肉店「龍月園」を訪れた。枝野さんは、安倍晋三元首相の死去で世の中の構造が大きく変わり、重視してきた野党連携すら「古くなった」と語る。ただ、安全保障政策など政策が大きく違う共産党とは、今後も衆院選挙区の住み分けをしたとしても「絶対向こうに染まらない自信があるから大丈夫」と胸を張るがー。

米中が日本の頭越しに握る

卓上にチジミがやってきた。ニラとネギ、イカや赤ピーマンなどの具材を、小麦粉や粉チーズなどを独自調合した生地で、パリッとかつもっちり焼いてある。ゴマ油の香りと合わせ、ハイボールが進む。

枝野さん「夜の政論」少しだけ動画で

もう1つ聞きたいのは、安全保障政策への危惧だ。共産との連携は、立民の安保政策への不安をかき立てた面は否めない。

確か野党共闘は、集団的自衛権の限定的行使を認めた平成28年の安全保障法制への反対が求心力となったはずだが、当時より日本を取り巻く安保環境は厳しくなっている。軍拡をさらに進める中国に、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」という憲法前文の理念を求めても仕方ない。

「その認識はまったく一緒だ。でも、現在は米国が日本の頭越しに中国の習近平国家主席と握ることが多く、日本ははしごを外される。米国と中国が真正面から戦争をやると思う? 米国に捨てられない限り、日本はついていくしかない。日米同盟が基軸だ。米国は、中国と関係が悪いときは日本に付き合うが、そもそも中国と握っている期間の方が長い。そんなとき、日本が主体的に中国にケンカを売っても仕方ないでしょ。国力の差もある」

それ、左系の前で話すと騒動になりませんか。

「かなり表でいってるよ。安保法制だって、大事なのは『違憲部分を廃止する』ということだ。閣議決定を変えただけで、違憲部分はなくなる。法律改正は不要だ。安保政策としてダメだといっているのではないんですよ。立憲主義の観点からダメだといっているだけだ。これは、米国にどこまで付き合ったら許してくれるかという一点だ。米のニーズに応えればいいだけの話。憲法は内政の問題だからこちらでやる」

代表復帰後、初外遊はベトナム?

立憲民主党の枝野幸男前代表(酒巻俊介撮影)
立憲民主党の枝野幸男前代表(酒巻俊介撮影)

枝野さんは立民内でも、とりわけ中国に厳しいというイメージがある。

「中国でいえば『中共』とか『北京政府』といういい方をよくする‥実は中国に対する野党幹部のスタンスが分かる逸話があるんだけど、言っちゃおうかな」

言ってくださいよ。

「旧国民民主党と合流する前の段階だったけど、無所属だった中村喜四郎さんが声をかけ、私と共産党の志位和夫委員長、今の立民の岡田克也幹事長、野田佳彦元首相らを交えて、数回夜会合を開いたことがある。ここでは、私と志位さんが中国共産党の問題点をさんざん指摘するんですよ。岡田さんや中村さんは困った顔をする。小沢一郎衆院議員も含め、彼らは自民党で旧田中派の流れをくむ経世会出身者だ。師匠の田中角栄元首相は日中国交正常化の立役者ですよね」

枝野さんは「そういう意味では、日本はベトナムと台湾をもっと大切にすべきだ」と力を込めて語る。「特にベトナムは、中国に対して腹に一物を持っている。もし、もう1度党代表になる機会があれば、最初の海外出張先はベトナムにしよう」

おやっ?‥ガスバーナーに火が付き、卓上にはタン塩が登場した。本日の鹿児島産は、実にさっぱりとした食感だ。続いて届いたカルビも、肉の甘みをしつこくなく味わうことができる。店では、注文を受けてから肉のスライスを始め、カルビは卓上に出す直前に少しだけたれをかけて素材の良さを生かすという。

「代表」という言葉が出たが、枝野さんからバトンタッチした立民の泉健太代表は不甲斐なくみえる。立民の支持率は低迷を続け、党内では「上から指示がなかなか降りてこない」という悪口も聞こえる。

「いや、この局面で泉さんはよくやっているよ。代表は、その局面ごとに求められる資質が違う。自民が政権に復帰した後、民主党の代表に海江田万里さんが就いたでしょ。海江田さんだったから党が存続した。野党の自民総裁が谷垣禎一さんで、党が分裂しなかったのと同じさ」

泉さんはブレてはいませんか。共産との連携について、代表に選ばれた直後は「いったん白紙」といっていたはずだ。ところが、党内で立共連携を真剣に考えるよう突き上げられた今夏、一転して次期衆院選での候補者調整にゴーサインを出したようにみえる。

最初から気を使う人に野党党首の資格なし

「いや、タイミングはそこではない。岡田さんや安住淳国対委員長を党幹部に起用した昨年には、もう腹は固まっていたよ」

とても姿勢がわかりにくいですよ。

「それは、その前の代表がトップダウンに見えたからね」

確かに枝野さんは、党を立ち上げたオーナーとして、代表時代は独断で党運営に臨むことが多いとみられた。

「野党の党首がトップダウン的になるのは当たり前だ。与党と血を流さない戦争をするときに、弱い立場の野党がごちゃごちゃしていたら勝ち目がない。奇襲だろうが何だろうがやらなければならない。政権交代には、関ヶ原の戦いでなく、桶狭間の戦いが必要なんだよ。それをやり切るために、リーダーはトップダウンを認めてもらえるような構造を作れるかどうかが問われる。最初から党内に気を使うような人はリーダーになってはいけないよ」(聞き手 水内茂幸)

枝野幸男さんの「夜の政論」④は12月12日午前11時30分にアップします。

【龍月園】東京都新宿区四谷1ー20 玉川ビル1F。電話03ー3357ー1088。定休日は日曜。

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