還暦・志らく、決意の「芝浜」 談志を忘れない…12日に恒例の独演会

「落語ファンが談志という〝革命的な〟落語家を忘れないよう『芝浜』に臨む」と語る立川志らく(酒井真大撮影)
「落語ファンが談志という〝革命的な〟落語家を忘れないよう『芝浜』に臨む」と語る立川志らく(酒井真大撮影)

歯に衣着せぬ物言いで人気を集めた師匠、立川談志の〝狂気〟を受け継ぐ落語家、立川志らく(60)。今年も師走恒例の落語会「2023今年最後の立川志らく独演会」(12日午後7時開演、東京都千代田区の日経ホール)に臨む。「今年から毎年、私が69歳になるまで『芝浜』に挑む」。志らくはあえて談志のおはこを演目に選び、並々ならぬ決意で年の瀬を盛り上げる。

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年末の独演会は談志が毎年続けた人気イベント。談志は夫婦の愛情を描く人情噺「芝浜」を好んで演目に選んだ。立板に水の天才的な語り口で魅了するライバル、古今亭志ん朝と、しわがれた声で情感あふれる表現を得意とする談志。2人の「芝浜」は双璧をなす。

平成23年の談志の急死を受け、独演会は志らくが代役に。演目は「芝浜」だ。「死去1カ月後の公演の雰囲気はまさに談志追悼会。異様な空間でした。自分がどんな『芝浜』をやったかは覚えていません」

以降、志らくの独演会は今年で13回目を迎える。志らくは毎年「芝浜」をかけたわけではなく、今回は2年ぶりとなる。なぜ「芝浜」なのか。

「今年は談志13回忌の節目。違う演目をやってもしようがないでしょう」。テレビのコメンテーターや映画監督、劇団旗揚げとキャリアを重ねたことで、「自分の『芝浜』にどんな変化をもたらすかも楽しみの一つ」という。

では、なぜ69歳になるまで毎年「芝浜」を上演するのか。談志が還暦を迎えたとき、小説家の色川武大さんから「60代は落語家にとって爛熟期。一番いい時期」と言われたことが念頭にある。

「私も還暦になった。談志が愛した『芝浜』を毎年上演して私のパフォーマンスの変化を楽しんでも、お客さんは許してくれるかなと…。私の『芝浜』は談志より軽い。ジャズに例えるなら、スイングジャズでしょう」

独演会では「芝浜」のほか古典落語の大ネタの一つ「文七元結」も披露する。

(高橋天地)

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