イスラエル首相に強い反感、攻撃と交渉で割れる世論

記者会見に臨むイスラエルのネタニヤフ首相=24日、エルサレム(ロイター)
記者会見に臨むイスラエルのネタニヤフ首相=24日、エルサレム(ロイター)

イスラム原理主義組織ハマスとの戦争が「第2段階」に入ったと宣言したイスラエルのネタニヤフ首相の手腕に、国民の注目が集まっている。ネタニヤフ氏は治安維持に定評があっただけに、ハマスの越境攻撃を許したことへの反感は極めて強い。地上作戦の成否はネタニヤフ氏の政治生命をも左右しそうだ。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、ネタニヤフ氏は28日夜、ハマスの攻撃以来、初めて記者団の質問に応じた。大きな被害が出たことの責任について問われ、「私の今の最重要任務は国を守り、兵士を完全な勝利へと導くことだ」と明言を避けた。

ネタニヤフ氏は28日夜、「ハマスの戦闘の意思に関する警告は全くなかった」とX(旧ツイッター)に投稿し、責任は軍や治安機関シンベトにあると示唆。しかし、戦時内閣の身内からも反発が出て、コメントの削除と謝罪に追い込まれた。

治安当局はハマスによる攻撃の時期を察知できなかったが、ネタニヤフ氏は警告を受けていたとの観測はある。英BBC放送(電子版)によると、ハマスが攻撃を始める3日前、エジプトから越境テロの計画があるとの情報が寄せられたが、ネタニヤフ氏は「完全な噓だ」と一蹴したという。

ネタニヤフ政権は今年、国会に対する最高裁の監視権限の縮小を進め、これに対する抗議として一部の予備役が服務を拒否した。ハマスの後ろ盾とされるイランなどがこの状況を「歴史的な好機」とみているとして、軍の情報当局がネタニヤフ氏に警告していたとも報じられた。

22日付の有力紙ハーレツは「彼は恐ろしい失敗の主犯であるのみならず、イスラエルにとって実在する脅威だ」とこき下ろす論評を掲載した。

ネタニヤフ氏は28日、ハマスの人質になった人々の家族と面会し、「全員の解放に向けてできることは全てやる」と約束した。家族の間ではガザの地上作戦を回避し、ハマスが人質解放の条件とするパレスチナ人服役囚の釈放に応じるべきだとの意見も多い。

その半面、街中ではハマス壊滅に向けて徹底的に攻撃すべきだとの意見も多く聞かれ、ネタニヤフ氏は困難な戦闘指揮を迫られている。(テルアビブ 佐藤貴生)

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