週刊学ぼう

「撮り鉄」 目立つ迷惑行為

中高一貫校に通うはるとさん、ひなたさんの会話から、迷惑行為が目立っている「撮り鉄」の問題について学びましょう。

はると この前、駅のホームで電車を待っていたら、「点字ブロックの後ろにお下がりください」という構内アナウンスが何度も流れたんだ。ホームの端をよく見ると、カメラを構えた人がいっぱい。言うことを聞く人もいたけど、お構いなしの人もいたよ。

ひなた 鉄道の写真を撮ることを趣味にしている「撮り鉄」という人たちね。きれいでかっこいい電車の写真を見るのは私も大好きだけど、いま「撮り鉄」が列車を止めたり、沿線に住む人たちとトラブルを起こしたりする迷惑行為が社会問題になっているの。

はると 動いている列車に近づいて写真を撮るのは危ないと思うよ。古い車両が引退するというニュースなどを見て思うんだけど、どうして同じ場所に密になるほど集まってカメラを構えているんだろう。

ひなた 電柱などの障害物が写らず、列車の編成全部を写真におさめようとすると、撮影場所は限られてくるんだって。だから勝手に木を切ったり、場所取りで言い合いになったりするらしいわ。

はると もちろんマナーを守っている人たちの方が多いと思うけど。鉄道が好きだから、写真を撮っているのに、どうして傍若無人の振る舞いをするのかな。迷惑行為は罪に問われることもあるの?

ひなた 線路に入れば鉄道営業法違反、他人の敷地に無断で入れば住居侵入罪、駅員さんに暴言を吐けば威力業務妨害罪。撮り鉄同士のトラブルで相手にけがをさせ、傷害容疑で逮捕されたケースもあるわよ。

はると 回転ずし店で少年がしょうゆ差しをなめる動画が拡散し、運営会社が少年に損害賠償を求める訴訟を起こした(後に和解)けど、損害を受けた鉄道会社が「迷惑撮り鉄」相手に訴えを起こしたという話はないのかな。

ひなた 「犯人」を特定できないケースが多く、難しいようね。昭和50年代にはSL撮影の小学生がはねられて亡くなったと聞いたわ。悲しい事故が起きる前にもう一度、撮影マナーについて考えてほしいわね。

有料撮影会で共存図る

撮り鉄による迷惑行為はSNSの普及に伴って増えています。かつては、自分が撮った写真は仲間内だけで見せあったものですが、現在は、危険な場所で撮った写真でも、炎上覚悟でSNS上にアップするなど、目立ちたいという気持ちを満たそうとする行為が一部で横行しています。回転ずしの迷惑動画を投稿する行為と似ているでしょう。

鉄道会社にとって、ファンが沿線で写真を撮ることは収入につながらず、アニメやアイドルといった別のマニアとは性質が異なります。そこで有料撮影会などのイベントを企画し、ファンを満足させるとともに、収入につなげる試みを進めています。また、子供たちを集めて撮影マナーを教える講習会を開くなど、根気強く、ファンとの共存の道を探っています。

撮り鉄の撮影対象 昭和62年にJRに移行した国鉄が製造した車両のほか、臨時列車でしか走らない車両、車両メーカーから新製車両を回送する「甲種輸送」という列車も人気。また、廃止されるローカル線に集まる人たちは、別れを告げるいう意味で「葬式鉄」といわれる。

国鉄(現JR)京阪100年号事故 昭和51年9月4日、京都-大阪間開業100周年を記念するSL牽引(けんいん)の上り臨時列車が茨木駅(大阪府茨木市)構内を走行中、写真撮影の小学生が列車に接触して死亡した。当日、沿線は10万人(国鉄調べ)もの見物客であふれかえり、線路内に立ち入る人もいた。

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