「科捜研の女」インタビュー(下)プロデューサーが語る25年続く魅力 「科学が進化する限りネタは尽きない」

「科捜研の女」に出演する沢口靖子(右)と内藤剛志(C)テレビ朝日
「科捜研の女」に出演する沢口靖子(右)と内藤剛志(C)テレビ朝日

25年目にして「相棒」などミステリードラマの伝統枠「水曜9時」に参入した「科捜研の女」。season23となる今作は、どこが変化しているのだろうか。藤崎絵三プロデューサーに話を聞いた。

「前シーズンは、火曜9時の新ドラマ枠での挑戦だったので、映像をソリッドにして内容をシャープにするという振り切ったものを作りました。1シーズン通してマリコ対科学者という構図にしましたが、ちょっと難しくなってしまって、視聴者のみなさんから『マリコの感情的な部分をもう少し見たかった』というご意見をいただきました。ですから今シーズンは、ソリッドさは残しつつ、人間として成熟したマリコが、人にどう対峙していくのかという〝情〟の部分を厚くしています」

藤崎プロデューサーが、特にフィーチャーしたところはどこなのか。

「マリコは行き切った科学オタクであり、正義のためにまっすぐ進む労はいとわない人。新幹線がゴーっと突っ走るような猪突猛進な感じは、自然と強くなっていますね。そして、それに振り回される科捜研メンバーというおかしみが、大きな味の一つだと思っています」

作品の一番の特徴は科学捜査。専門的かつ高度なそれらのシステムや装置は、どのように見つけてくるのだろう。

「科学雑誌を定期購読しています(笑)。たとえば第1話で登場した電磁スペクトルドローンは、特殊な金属が埋蔵されているかどうかを掘らずに探すために、アメリカの地質学者が実際に使っているそうなんです。そういうネタを櫻井(武晴)さんはじめ脚本家さんにお伝えして、物語にしていきます。ただ、ドラマでは実際の論文や学説があるものを使うことをルールにしていて、100%SFにならないようには気を付けていますね。50%くらいは、ちょっと未来の〝あながちうそじゃない〟ものですけど。たとえばDNA検査でも血液だけで男女や年齢など分かるんですが、ミステリーとして成立しなくなるので、あえて分からないようにセーブしていることもありますよ」

実際の犯罪抑止効果もあるようだ。

「物語で、『科学があれば事件は解ける』と見せていますよね。監修していただいてる本物の科捜研の方が実際の取り調べに呼ばれたときに、刑事さんが被疑者に『この人は科捜研の人だ』と言っただけで、『もうダメだ、私がやりました』ってなったそうです(笑)。資料や証拠を提示するまでもなくね」

脚本作りにも、科学捜査という特徴は生かされる。

「ほかの刑事ドラマと比べると、科学というある種の必殺技を持っている作品です。それをどうしたら一番気持ちよくお客さんに見てもらえるか、最後の大逆転を楽しんでもらえるかが、脚本のテーマでもありますね。1話の中で何回か鑑定モンタージュが出てきますけど、そのたびに新事実が分かって物語がひっくり返るから、主人公目線の展開が起こしやすいんです。一番見やすいドラマの形は、視聴者が主人公と一緒に悩んで体験していくことですが、通常だとそれは外からの刺激しかない。でも今作では、鑑定というマリコの目線で転がしていけるんです。科学が進化していく限り、物語のネタは尽きない。時事的にも新しいものを取り入れて、少しでもお客さんが楽しんでくださるとうれしいなあと思います」

ふじさき・かいぞう>2006年入社。連続ドラマでは「科捜研の女」に加え、「遺留捜査」シリーズ(17年の第4シリーズより)「警視庁アウトサイダー」などのプロデューサーを担当。

「科捜研の女」

テレビ朝日系 毎週(水)午後9:00~9:54

脚本:櫻井武晴、戸田山雅司ほか 演出:兼﨑涼介、柏木宏紀、宗野賢一

出演:沢口靖子、小池徹平、若村麻由美、風間トオル、斉藤暁、山本ひかる、石井一彰、西田健、金田明夫、内藤剛志ほか

(おとなのデジタルTVナビ)

インタビュー(上)沢口靖子

インタビュー(中)内藤剛志

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