国民の自衛官

⑥元海自潜水艦教育訓練隊 金子弘元1等海佐(65) 賞総なめの潜水艦を指揮

「潜水艦の乗務は生涯をかけるに値する仕事」と話す金子弘・元1等海佐
「潜水艦の乗務は生涯をかけるに値する仕事」と話す金子弘・元1等海佐

潜水艦「おやしお」や、遭難の際に潜水艦乗員の救出にあたる潜水艦救難艦「ちはや」の艦長などを歴任。自衛官人生約44年間の大半を海中・海上で過ごした。

「海中に潜る潜水艦は、災害時でも人命救助には使えない。ただ、国民の目に触れることがなくても、職務を遂行することが潜水艦の使命」

高校時代はパイロットを志したが体調面でかなわず、防衛大を卒業後は潜水艦乗りの道を進んだ。42歳で「おやしお」の4代目艦長となり、平成14年度には、全ての潜水艦から選ばれる「年度優秀艦」など3つの表彰を総なめにした。

23年3月の東日本大震災では「ちはや」の艦長として、5月に東北の港へ。「潜水艦と異なり、海上に浮かぶ救難艦は洋上基地にもなる。医務室もあり、ダイバーもいる。救難艦は災害時にも使えるという気付きがあった」と振り返る。

住民の要望は全て聞こうと、港内で流された寺の鐘の捜索も行った。この経験は後継の救難艦を改良する際のヒントにもなり、高精度のセンサーを持つ「ちよだ」に引き継がれた。

9月に任期終了で退官し、今後は故郷の金沢で妻と第2の人生を送る予定だ。後輩たちにはこう伝えたいという。「潜水艦は、誰の目にも触れない。けれど一生をかけて乗務する意味がある」(藤原由梨)

会員限定記事会員サービス詳細