千葉「正論」懇話会 習近平政権は「中国式現代化に自信」 神田外語大・興梠一郎教授

千葉「正論」懇話会の第79回講演会で講演する神田外語大教授の興梠一郎氏=12日午後、千葉市中央区の京成ホテルミラマーレ
千葉「正論」懇話会の第79回講演会で講演する神田外語大教授の興梠一郎氏=12日午後、千葉市中央区の京成ホテルミラマーレ

千葉「正論」懇話会(会長・木村理千葉銀行顧問)の第79回講演会で、現代中国論を専門とする神田外語大(千葉市美浜区)の教授、興梠一郎氏が「いま中国で何が起きているのか? ~『習近平体制』を読み解く~」と題し、3期目政権が本格始動した習氏率いる中国と米国など西側陣営の関係を中心に分析を披露した。国力を高めた中国は、独自の発展モデルである「中国式現代化」を掲げて世界での影響力拡大に動いていると指摘。参加者は熱心に耳を傾けていた。

興梠氏は、国際社会における中国の立ち位置が、かつてとは劇的に変化したと指摘。1970年代終盤に始まった改革開放を推進した鄧小平氏は「(西側陣営の盟主である)米国とは決定的な対立はしない」との方針だったとして、「西側陣営との摩擦を避け、自国の経済発展に集中するといった『臥薪嘗胆』的な姿勢だった」と述べた。こうした立場は、その後に中国の最高指導者の座に就いた江沢民、胡錦涛の両氏にも引き継がれていったとした。

習氏が最高指導者となってから10年余り。興梠氏は「(かつてと)今日の違いは、(中国は米国にとっての)脅威となり、それを隠そうとはしていない」と指摘。その上で、「独自の発展モデルとして打ち出した『中国式現代化』に自信を持ち、主張すべきは主張するという姿勢に変わった」といった見方を示した。

近年の米中対立の激化は西側陣営に経済安全保障の重要性を突き付け、各国は先端技術の軍事転用リスクやサプライチェーン(供給網)の過度な中国依存への対応策を迫られている。

そうした中でも、西側陣営は中国との経済的な「デカップリング(分断)」は困難と判断し、「デリスキング(リスク低減)」の方針だと興梠氏は説明。「相互依存の関係ができ上がっており、(もはや)断ち切れない」との事情があるとした。実際、中国は日米両国にとって最大級の貿易相手国だ。また、米国や欧州連合(EU)は経済安保の強化を通じてリスクを回避しながら、中国との経済関係は維持するつもりだ。

興梠氏は、こうした対中政策における西側陣営の二面性を直視した上で、「日本の国益を損なわないよう現実的に対応していく必要がある」と締めくくった。

興梠氏の講演会は12日、千葉市中央区の京成ホテルミラマーレで行われた。

■こうろぎ・いちろう 九州大経済学部卒業後、三菱商事中国チーム勤務を経て、カリフォルニア大バークレー校大学院修士課程修了、東京外国語大大学院修士課程修了。外務省専門調査員(香港総領事館)、外務省国際情報局分析第二課専門分析員、参議院第一特別調査室客員調査員を歴任し現職。主な著書に「中国激流 13億のゆくえ」「中国 巨大国家の底流」「中国 目覚めた民衆 習近平体制と日中関係のゆくえ」など。63歳。大分県出身。

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