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松田龍平 2.5世帯住宅が変えた、ひきこもり男の暮らし

「連続ドラマW 0.5の男」に主演する松田龍平(鴨志田拓海撮影)
「連続ドラマW 0.5の男」に主演する松田龍平(鴨志田拓海撮影)

連続ドラマW 0.5の男 WOWOW 日曜午後10時

自由気ままに暮らしていた、実家暮らしの40歳のひきこもり男。家の建て替えをきっかけに、両親と妹夫婦と2・5世帯住宅に住むことに。新たな家族関係が生まれたことで、マイペースな生活も変化せざるをえなくなって-。

「0・5がいることで、普段は生まれないような会話や衝突、気づきがある。家族をのぞき見しているような気になれるコメディーです」

自室にひきこもり、日夜オンラインゲームにいそしむ、立花雅治を演じる。沖田修一監督とは、映画「モヒカン故郷に帰る」以来7年ぶりのタッグだ。

「沖田さんの作品ということですごく楽しみにしていました。ひきこもって40歳というと真っ暗なイメージだけれど、1話は雅治が爆笑しているシーンから始まる。表面的な部分だけ見るとポジティブだけれど、ひきこもっているプレッシャーみたいなものも描かれていて、そのバランスが脚本の面白さ」と語る。

中高年のひきこもりが社会問題となり、「8050問題」という言葉もよく聞くが、雅治はオンラインゲーム上ではちょっとしたカリスマ。母親の作り置きごはんで空腹を満たし、人間関係に煩わされることもなかった。

おいの蓮(加藤矢紘、左)が通う保育園の保育士、瞳(西野七瀬、右)と再会した雅治
おいの蓮(加藤矢紘、左)が通う保育園の保育士、瞳(西野七瀬、右)と再会した雅治

だが、新しい家では1階の奥の部屋をあてがわれ、妹家族に気を使い、夜中にキッチンに行くのも恐る恐るだ。「改築前の家の方が居心地が良かった。あのままだったら(ひきこもりが)行けるところまで行ったかもしれない。だから、雅治にとって2・5世帯住宅は新しい風になったのかな」。家の様子が断面図のように映し出され、家族の生活を観察しているような気持ちになる演出も面白い。

「普通」から少しはみだした存在は、家族にとっては救いにもなる。めいの恵麻は中学校になかなかなじめない。おいの蓮は保育園に行き渋る。そんな2人にとって、雅治は「どこか逃げ場所になった」と感じられる人。仕事もせず、ひょうひょうとした雰囲気の雅治の存在が、図らずも安心感を与えているのだ。

映画や舞台、ドラマとオファーが絶えないのは、どんな役を演じても唯一無二の存在感を放つからだろう。たたずまいだけで絵になる男は先月、40歳の誕生日を迎えた。「こういう役がやりたいとかはないですが、今決まっている仕事に縁を感じて、いい仕事ができたら」

(油原聡子)

まつだ・りゅうへい>昭和58年生まれ。東京都出身。平成11年に映画「御法度」で俳優デビュー。映画「舟を編む」(25年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞などを受賞。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」、ドラマ「カルテット」(TBSテレビ)など出演作多数。

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