りんごの里で知られる静かな町に、猟銃の発砲音が響き渡った。長野県中野市で25日夕、猟銃と刃物を持った男が住民や警察官らを襲い、立てこもった。不要不急の外出を避けるよう市からの防災無線が流れ、住民は不安な夜を過ごした。
午後5時ごろ、現場近くにある自宅に戻ろうとした女性は警察による規制で先に進めず、大きく迂回(うかい)して帰宅。巡回中の警察官からは「カギを閉め、家から出ないように」と伝えられたという。
その後、自宅の玄関や窓を施錠し、カーテンを閉めるなどしたが、同7時ごろに警察官から「避難するように」と連絡があり、近くの中学校に徒歩で向かうように指示されたという。
「近くで立てこもり事件が起きている」。同4時半ごろ、和菓子店の男性店主は事件の一報を聞き、テレビをつけたところ、現場が店から約1キロしか離れていないことに気づいた。すぐに従業員を帰宅させるなどの対応に追われた。
男性は「現場付近は住宅街ではないか。知り合いも多く住んでいるし、けが人の状況も分からない。このような田舎で起きた事件とは思えず、現実味がない」と声を震わせた。
《男が立てこもっていた場所から、銃のようなものを持って逃げています。外に出ないでください》
市の防災無線では、警戒を呼び掛けるアナウンスが繰り返し流された。現場近くに住む男性は「パトカーが目の前を通り過ぎていった。男が逃げていると聞いて何度か外を確認しているが、とにかく不安。こっちに来なければいいけれど」と不安そうに話した。