バイデン氏、再選戦略は「トランプ阻止」 対決姿勢前面に

25日に発表した動画声明に登場するバイデン米大統領(ユーチューブから、ロイター=共同)
25日に発表した動画声明に登場するバイデン米大統領(ユーチューブから、ロイター=共同)

米大統領選に向けたバイデン大統領(80)の再選戦略は、2020年前回選で下したトランプ前大統領(76)が共和党の候補者指名争いを勝ち抜く可能性が高いことに立脚している。25日に発表した動画声明は、トランプ支持者による21年1月の連邦議会襲撃事件の映像を織り交ぜ、「トランプ政治」再来の阻止を前面に出した。

動画でバイデン氏は、トランプ氏を信奉する勢力を、そのスローガンである「米国を再び偉大に(Make America Great Again)」の頭文字から「MAGA(マガ)過激派」と呼び、「(彼らは)全国で手を結んで基本的な自由を奪おうとしている」と主張した。

バイデン氏は前回選でトランプ氏の再選阻止を訴え、獲得選挙人数と総得票数の両方でトランプ氏を上回った。政権への信任度が問われる昨年11月の中間選挙では、急速なインフレという逆風にもかかわらず、上院で多数派を維持した。いずれも、支持者の反エスタブリッシュメント(支配層)感情をあおって求心力を高めるトランプ氏を「民主主義の敵」と位置付けたことが奏功したものだ。

不倫関係にあったとされるポルノ女優への口止め料支払いを巡って今年3月末に刑事訴追を受けたトランプ氏はその後、共和党支持層の支持率が50%超に急伸し、同党指名争いでは現在のところ独走状態にある。バイデン陣営には、このままトランプ氏が指名を勝ち取れば、看板政策である巨額インフラ投資などの効果があらわれる来年にはバイデン氏の勝機が高まるとの計算があるとみられる。

だがこの戦略には〝穴〟もある。共和党でトランプ氏の最大のライバルと目される南部フロリダ州のデサンティス知事(44)が参戦し指名を獲得した場合、バイデン氏の老齢が際立ち、勝算が低くなるとの見方が強いためだ。

トランプ氏とデサンティス氏は政策面で共通点が多く支持層が重なる。ただ、政敵を罵倒することで人気を得てきたトランプ氏に比べ、デサンティス氏はより穏健で高学歴な層に訴求する割合が高いとのデータもある。

デサンティス氏は5月以降に出馬を宣言するとの観測が強いが、トランプ氏はすでにデサンティス氏への痛烈な批判キャンペーンを展開。バイデン氏が本選で争う可能性が高い2人の闘争の行方はまだ不透明だ。(ワシントン 大内清)

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