熊野古道インバウンド急増 コロナ前上回る

JR紀伊田辺駅前の田辺市観光センターを訪れた外国人=和歌山県田辺市
JR紀伊田辺駅前の田辺市観光センターを訪れた外国人=和歌山県田辺市

世界遺産の熊野古道を歩くインバウンド(訪日外国人客)が増加し、熊野古道の旅行商品が人気の一般社団法人田辺市熊野ツーリズムビューロー(和歌山県田辺市)で、ツアーなどの申込件数が急激に伸びている。ビューローは外国人の顧客が大部分で、4月はこれまでで最高だったコロナ禍前の令和元年10月を超えたという。昨年10月に水際対策が緩和されたのに加え、古道歩きがしやすい春を迎えたことから、外国人観光客が急増したとみられる。

ビューローによると、申込件数自体は明らかにしていないが、個人旅行解禁など政府の水際対策が緩和された後の昨年11月から増加。今年3月に入ると急増し、4月は、過去最高だった令和元年10月(1210件)をすでに上回ったという。例年古道巡りの人でにぎわうのは3~5月で、5月も多くの申し込みが来ている。

熊野古道は特急が停車するJR紀伊田辺駅が立地する田辺市中心部が玄関口となっており、ここから紀伊半島南部を横断する古道を巡る。ビューローによると、欧米などの旅行者に人気があり、このうちオーストラリアが最も多く、次いで米国、英国の順という。

ビューローの赤木靖人事務局長は熊野古道について「欧米とは異なる精神文化に触れられる旅が受けている。長距離を歩き、途中、日本らしい温泉宿にも泊まれる」と説明する。外国人には、熊野三山と呼ばれる熊野本宮大社(田辺市)、熊野那智大社(同県那智勝浦町)、熊野速玉大社(同県新宮市)を巡るコースの人気が高いという。

JR紀伊田辺駅前の田辺市観光センターには、英語ができるスタッフが常駐しており、外国人旅行者を案内している。3月21~23日は確認できるだけで1日50~60人程度の外国人が訪れた。駅に特急が到着すると、外国人らでスペースがいっぱいになることもある。荷物をセンターに預け、数日かけて古道を回る外国人もいる。

田辺市内ではまちを歩く欧米人らの姿が多く見られる。市内のゲストハウスでも3、4月はほぼ満室といい、「コロナ前を上回っている。春のシーズンは期待できる」としている。

ビューローは新型コロナウイルスで大きな打撃を受け、旅行事業売上高は令和2年度が元年度の約86%減、3年度が2年度の約12%減となっていた。赤木事務局長は「5年度は期待したい」と話している。(張英壽)

会員限定記事会員サービス詳細