プロ野球の「人的補償」は必要か 岐路迎えたフリーエージェント制度

近藤健介外野手のFA移籍に伴い、人的補償として日本ハムへの移籍が決まった田中正義投手(左)=ファイターズ鎌ケ谷スタジアム(撮影・塩浦孝明)
近藤健介外野手のFA移籍に伴い、人的補償として日本ハムへの移籍が決まった田中正義投手(左)=ファイターズ鎌ケ谷スタジアム(撮影・塩浦孝明)

プロ野球でフリーエージェント(FA)権を行使して他球団に移籍した際、移籍する選手の年俸ランクに応じて発生する「人的補償」。今オフもFA移籍に伴い、人的補償によって2人の選手が新天地へ移籍することが決まった。ただ、プロ野球選手会は「(近年の人的補償は)ベテラン選手が多く、FAの行使がしづらい」として人的補償の廃止を求めており、人的補償を含めたFA制度の在り方が岐路を迎えている。

今オフは2選手が新天地へ

プロ野球のフリーエージェント規約では、移籍する選手の年俸がチームの上位1~3位(Aランク)、4~10位(Bランク)だった場合、旧所属球団は移籍先の球団に対して選手、または金銭での補償を求めることが定められている。

旧所属球団が人的補償を求めた場合、移籍先の球団がプロテクト(凍結)した28人から外れた選手の中から1人を獲得。旧球団が金銭による補償を選択した際には、選手の年俸ランクに応じて補償する金額が変動する仕組みになっている。

今オフでは、日本ハムからFA権を行使した近藤健介外野手がソフトバンクに移籍したことに伴い、田中正義投手が日本ハムへ。また、西武からFA権を行使した森友哉捕手がオリックスに移籍したことに伴い、張奕投手が西武に人的補償として移籍した。

プロ野球や高校野球を取材しているスポーツライターの氏原英明さんは「FA制度は選手のための制度。だが、人的補償は選手のためにやっているのか、誰のための制度なのか、という側面がある」とした上で、「育成選手は人的補償の対象外になるなど(人的補償を逃れるための)〝抜け道〟もある」と指摘する。

代替案として「ドラフト指名権の譲渡を」

プロ野球選手会は昨年12月に行われた定期大会で「(人的補償は)以前は若い選手にも活躍の場が与えられていたが、(近年は)ベテランになっており、FAが使いづらくなっている」ことなどを理由に、人的補償の撤廃を求めていく方針を確認した。

ツイッターでは「自分が(旧所属球団に)必要とされていないと思うと、人的補償(で移籍する選手)はつらい」と改善を求める声や、「この制度(人的補償)を無くしてしまったら、特定の球団だけが得をする図式が出来てしまう」と制度の存続を求める声もあがるなど、意見が分かれている。

氏原さんは「人的補償の代替案として、移籍先の球団が旧球団に対し、翌年のドラフト指名権を譲渡することも今後は考えられる」とした上で、「現在のFA制度は、人的補償を含めて考え直す時期に来ているのではないか」と指摘している。(浅野英介)

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