一青窈デビュー20周年「たった一人のために」 30日記念公演

歌手の一青窈=7日午後、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)
歌手の一青窈=7日午後、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)

歌手の一青窈(46)が30日、中野サンプラザホール(東京)でコンサート「一青窈 20th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE~アリガ二十」を開く。平成14年の同日、「もらい泣き」でデビューして20年になることを記念したステージだ。

歌詞を手掛け、作曲はさまざまな作曲家に託し、自ら歌ってきた。

「20年前、未来への不安はなかった」と振り返る。「売れなくたって通りで歌えばいい。声が出なくなったら詩人として生きればいい。私は、世の中や友人の出来事などをイタコのように吸い上げ、詩を書くだけ」

16年の大ヒット曲「ハナミズキ」は、13(2001)年の米中枢同時テロに遭遇した友人から届いた手紙をヒントに書いた。「ニューヨークにいる友人と友人の好きな人が、幸せであれと願った」

今年8月配信の最新曲「耳をすます」の歌詞は、芸能人や若い人の相次ぐ自殺のニュースに接した夜、20分で書き上げた。

「SNS(交流サイト)に投稿されている言葉や写真が、『生きたい』『愛してほしい』『自分はここにいるよ』という叫びに思えた。自ら命を断つことに歯止めをかけられないものかと考えて書いた」

祈りにも似た内容の歌詞には、新聞配達のバイクが登場する。そのエンジン音は希望の象徴なのだという。

「未明まで詩を書いていて聞こえてくる新聞配達のバイクの音。『私はまた次の日を迎えることができた』という印です」

作曲は、シンガー・ソングライターの森山直太朗(46)。同じ年にデビューし、家族ぐるみの付き合いがあるが、「友達だからこそ頼みにくかった」と協業はこれが初めて。

12月18日にはアルバム「一青尽図」(ひととづくしず)を出す。なんと8年ぶりの新作。ビジネス面には無頓着だ。

「5万人の大観衆より、その中でうつむいている、たった一人のために歌いたい。生涯かけて一人も救えないかもしれない。それでも私は、そういう人になりたい」

30日のコンサートは「『耳をすます』をきちんと届ける演出にしたい」と話した。

コンサートは30日午後5時半開演。問い合わせはディスクガレージ050・5533・0888(平日正午~午後3時)。

(石井健)

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