亀田家を離れた末弟・和毅 キャリア終盤に抱く大きな野望

長男の望有くんを抱っこし、誇らしげな表情を浮かべる亀田和毅=7月30日、神戸市立中央体育館
長男の望有くんを抱っこし、誇らしげな表情を浮かべる亀田和毅=7月30日、神戸市立中央体育館

ボクシングの「亀田3兄弟」の三男で、元世界2階級王者の亀田和毅(ともき)(31)=TRYBOX平成西山=がジム移籍後初戦を華々しいKO勝ちで飾った。今後はすでに王座への挑戦権を得ている世界ボクシング協会(WBA)スーパーバンタム級でベルト奪取を目指すことになるが、一方でバンタム級世界3団体統一王者の井上尚弥(大橋)との対戦も熱望。「亀田家の最終兵器」といわれた31歳の末弟は、キャリア終盤に大きな野望を抱く。

難敵にKO勝ち

和毅は7月30日、神戸市立中央体育館でフェザー級ノンタイトル10回戦に臨み、2012年ロンドン五輪に出場経験のあるウィリアム・エンカーナシオン(ドミニカ共和国)に4回KO勝ちを収めた。相手は22戦19勝(15KO)を誇る34歳。和毅が主戦場とするスーパーバンタム級より1階級上のフェザー級で、決して簡単な相手ではなかった。それでも3回、強烈な左ボディーと連打で2度のダウンを奪うと、4回に再び左ボディーを見舞ってけりをつけた。

フェザー級ノンタイトル10回戦で攻める亀田和毅=7月30日、神戸市立中央体育館
フェザー級ノンタイトル10回戦で攻める亀田和毅=7月30日、神戸市立中央体育館

序盤、足を使って相手を翻弄した戦いに「微妙なフェイントをすごくトレーニングした。打ってきたところで一歩下がるとか、フェイントを入れるというところ。大きいパンチを打たさんようにと」と納得の表情を浮かべた。

新トレーナーとタッグ

長男の興毅(こうき)氏が会長を務める3150(サイコー)ファイトクラブを離れてから4カ月。今回の一戦に向けては、元世界ランカーの武本在樹氏がトレーナーを務めた。長く海外を主戦場にし「毎回トレーナーが変わっていた」(和毅)だけに、世界王座に挑戦した経験のある武本さんの存在は頼もしかった。

武本さんは「初めは(荷が)重かったです。お父さん(史郎さん)がおるやんと」と笑いながらも、「会ってみたら指導したいなと思った」とコンビを結成。難敵に快勝した一戦に「あんなに耳を使いながらボクシングできる選手はなかなかいない。最後まで(セコンドの)話を聞ける選手が世界を取れる選手」と評価した。

独り立ち決断の背景

興毅氏と次男の大毅(だいき)氏が現役時代、ど派手なパフォーマンスで注目を集めたのに対し、中学卒業後に単身でメキシコに渡った和毅は海外を主戦場としてきたため、国内で脚光を浴びた経験がほとんどない。昨年3月からは興毅氏のジムに所属したが、選手である自身よりも兄に注目が集まることも少なくなかった。

3兄弟が日本ボクシングコミッション(JBC)などを相手に損害賠償請求訴訟(勝訴確定)を起こしていた事情も踏まえ、興毅氏は弟との契約を解除した理由について「さまざまなリスクがある中で、ジムが運営停止を余儀なくされた場合等のリスクヘッジの意味でも、二極化することがお互いのためになるという考えに至った」などと説明。その上で「将来的には双方が成長して強靭(きょうじん)な体制となり、より強固な一枚岩になれればと思う」と送り出した。和毅自身、一人のボクサーとして国内で戦うために「亀田家」からの独り立ちが最善だと判断した。

「ファンが望むカードを」

新天地で上々の再スタートを切った和毅は試合後、かねて希望している井上戦への思いを問われ「日本人対決、ファンが望むカードをやっていきたい」と改めて切望した。

ジム移籍後初戦をKO勝ちで飾り、親交のある横綱照ノ富士(右)と記念撮影する亀田和毅=7月30日、神戸市立中央体育館
ジム移籍後初戦をKO勝ちで飾り、親交のある横綱照ノ富士(右)と記念撮影する亀田和毅=7月30日、神戸市立中央体育館

井上は目下、バンタム級で4団体統一を目指しており、スーパーバンタム級にいつ階級を上げてくるかは不透明だ。和毅は昨年末にWBA同級の挑戦者決定戦を制しており、早ければ年末にも2団体統一王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)への挑戦を目指す。

和毅は2013年に世界ボクシング機構(WBO)バンタム級、18年に世界ボクシング評議会(WBC)スーパーバンタム級暫定と2階級制覇を果たしたが、どちらも王座に就いたのは海外だった。それだけに国内での戴冠にかける思いは強い。

ジム移籍会見で「15歳でメキシコに行ったときの強い気持ちを持って、最後のボクシング人生でどこまで通用するか全力でチャレンジしたい」と決意表明した和毅。3兄弟の末弟はビッグマッチの実現に向け、さらに挑戦を続ける。(大石豊佳)

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