水谷豊監督、檀れい主演「太陽とボレロ」人生賛歌

監督を務めた水谷豊(左)と主演の檀れい(鴨志田拓海撮影)
監督を務めた水谷豊(左)と主演の檀れい(鴨志田拓海撮影)

俳優、水谷豊の監督3作目となる映画「太陽とボレロ」。水谷は脚本も手掛け、クラシック音楽をモチーフに人生賛歌を描き、自ら指揮者役で出演もしている。そしてアマチュア交響楽団を主宰するブティック経営者の主人公を、映画初主演となる檀れいが演じた。

脚本を書く前にタイトルの「太陽とボレロ」が浮かんだという水谷。30代のときに生のオーケストラで聞いたラベルの「ボレロ」に感動した強烈な思い出がある。「この映画のクライマックスとして、ボレロがまず浮かんだ。そして、太陽のエネルギーでどれだけわれわれは前向きに生きられるかという感謝の気持ちを表したかった」という。

初主演の檀について、水谷は「主人公のイメージにピッタリ以上だった。いろいろな表情をあんなに豊かに見せてくれ、作品にとってはうれしいことだった」と手放しで評価した。

主人公について、檀は「交響楽団のオーナーであり、家業を継いで社長としても頑張っている。介護が必要な母親を抱え、一人で何もかもを背負っている女性。つらいことも、悲しいことも全部のみ込んで、誰かのために頑張っている人」と語った。

和やかで、笑顔が絶えなかったという撮影現場。監督の笑い声が入ったためNGになることもあった。檀は「監督の笑い声が演じているこちらにも聞こえてくるので役者としてはうれしいが、笑いをがまんしながら芝居を続けるのが大変だった」と振り返る。

ラストコンサートのシーンは、水谷の強い要望で吹き替えなしで撮影された。楽団員を演じた森マリアや町田啓太、田口浩正らはそれぞれバイオリンやトランペット、オーボエなどの楽器を実際に演奏している。

「本当に演奏していると魅力的に見えるけれど、吹き替えだと見ていて分かってしまう。最初から出演者には、吹き替えは使わないので皆さん自身で演奏してほしいと話してあった。コロナ禍で撮影が延期になったので1年以上、楽器を練習する時間があったと思う」と水谷は理由を明かした。

また劇中、「白鳥の湖」など多くのクラシック音楽が流れるが、世界的指揮者、西本智実が主宰するイルミナートフィルハーモニーオーケストラが演奏したものだ。

檀は、本作について「なかなかいないメンバーが交響楽団に集まっているので、それだけで見どころ満載。クラシック音楽もストーリーに沿ってふんだんに流れるので、映画ファンにもクラシックファンにも楽しんでいただける作りになっている」と評した。(水沼啓子)

あらすじ とある地方都市でアマチュア交響楽団を主宰する花村理子(檀れい)は地元企業のオーナー、鶴間(石丸幹二)らの支援を得て長年活動を続けてきたが、運営資金不足から解散という苦渋の決断を下す。ラストコンサートを計画するも、さまざまな問題が立ちはだかる。

6月3日から東京・丸の内TOEI、大阪・梅田ブルク7などで全国公開。2時間13分。

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