「保守王国・群馬」底力 野党全敗、比例復活なし

当選し、支援者に挨拶する尾身朝子氏(右から2番目)=31日午後8時20分、前橋市(佐藤津世子撮影)
当選し、支援者に挨拶する尾身朝子氏(右から2番目)=31日午後8時20分、前橋市(佐藤津世子撮影)

衆院選は今回も自民公認候補が群馬県内5議席を独占する圧勝となり、「保守王国」の底力を見せつけた。比例北関東も県勢が自公で1議席ずつ確保した。野党各党は選挙区全敗のうえ、比例復活当選も阻まれた。今後、党勢の抜本的な立て直しを迫られそうだ。

中曽根康隆氏と尾身朝子氏の公認争いが最後までもつれた1区。保守分裂の懸念も一時浮上したが、公示直前に中曽根氏で一本化された。強固な選挙基盤にも支えられ、得票率56・32%、11万票以上を獲得し選挙区初当選を飾った。

一方、尾身氏も比例北関東で当選。記者団に対し尾身氏は「(中曽根氏は)同じ県連所属であり若い力で活動してほしい」とコメント。ただ、1区からの再挑戦を問われると「地域代表として活動してほしいという声があれば可能性としてはある」と含みを残した。

中曽根氏の勝利は野党分裂という「敵失」もあった。宮崎岳志氏と斉藤敦子氏が立憲民主の公認争いの末、宮崎氏が日本維新の会公認、斉藤氏が立民県連「支援」で出馬。共産も店橋世津子氏を擁立したため野党は一枚岩となれず3候補で野党票を奪い合った。

自民が圧倒的な強さを見せつけたのは5区と4区だ。5区は8選の小渕優子氏が76・59%、4区は4選の福田達夫氏が65・02%という高得票率をマーク。いずれも統一候補の伊藤達也氏、角倉邦良氏を退けた。岸田政権発足に伴い小渕氏は党組織運動本部長、福田氏は党総務会長という要職に就いたことも追い風になった。

2区、3区はいずれも自民公認の井野俊郎氏、笹川博義氏が54%強の得票率で勝利し、いずれも立民公認の堀越啓仁氏、長谷川嘉一氏の比例復活当選を許さなかった。

一方、自民との選挙協力関係を築いた公明は福重隆浩氏が比例北関東で当選を果たした。

「国の形」を考える機会は持てたのか

衆院選は自民が全議席を独占し、保守王国の面目躍如を果たした。開票日の選挙事務所は満面の笑みであふれ返ったが、新たな門口に立ったにすぎず、今後の仕事の中身こそ問われる。

一つは新型コロナウイルス対策だ。コロナ禍は発生から約1年半がたち死亡者は176人(1日現在)に上る。繰り返される休業要請、外出制限で経済は傷み、国難に誰もがあえぐ。

選挙期間中はどの候補者も判で押したようにコロナ対策と経済再生を訴えたが、どう行動に移すのか。有権者は経済再生、生活再建の具体的な成果を求めている。その願いにしっかり答えるべきだろう。

残念なのは、論争がコロナ禍に集中し、有権者が「国の形」を考える機会を持てたのかということだ。憲法改正や安全保障、社会保障など重要課題は棚上げになった印象は拭えない。国政選挙では本来、これらを真正面から有権者に問うべきだったのではないか。(柳原一哉)

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