政界徒然草

どうなる「残業代ゼロ法案」? 蓮舫民進党など野党が「働き方改革」めぐり臨時国会で激論狙うも「無風」濃厚のワケ

【政界徒然草】どうなる「残業代ゼロ法案」? 蓮舫民進党など野党が「働き方改革」めぐり臨時国会で激論狙うも「無風」濃厚のワケ
【政界徒然草】どうなる「残業代ゼロ法案」? 蓮舫民進党など野党が「働き方改革」めぐり臨時国会で激論狙うも「無風」濃厚のワケ
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「同一労働同一賃金を実現する。詳細なガイドラインを先般策定したが、その根拠となる法改正を次の国会に提出する考えだ」

「先日、経済界と労働界が史上初めて罰則付きの長時間労働規制を導入することで合意した。これに基づき労働基準法の改正案を次の国会に提出をする予定だ」

安倍晋三首相は6月24日、神戸市の神戸ポートピアホテルで開かれた神戸「正論」懇話会の設立記念特別講演会でこう述べ、働き方改革関連法案を秋の臨時国会に提出する方針を明らかにした。

働き方改革関連法案は、同一労働同一賃金を実現するための労働者派遣法、パートタイム労働法、労働契約法の3法の改正と、長時間労働是正に向けた残業上限規制を強化する労働基準法の改正が柱となる。今年3月末に取りまとめられた働き方改革実行計画に基づく労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関、労政審)の議論もほぼ終わり、今後、法制化の作業が本格化する見通しだ。

秋の臨時国会では働き方改革関連法案をめぐり与野党の激しい論戦も予想される。蓮舫代表率いる民進党などの野党が問題視しているのが、働いた時間ではなく成果で賃金を決める「高度プロフェッショナル制度」の創設を含む労基法改正案との関係だ。

この改正案は、平成27年4月に国会提出されて以来、ずっと継続審議となっているが、働き方改革実行計画で「この法改正について、国会での早期成立を図る」と明記された。働き方改革関連法案に一本化し、改めて国会提出するとの見方がもっぱらだ。

しかし、これまで野党は「残業代ゼロ法案」と批判してきた。それだけに、働き方改革関連法案との一本化方針に対しても「セット販売だ」(民進党の長妻昭元厚労相)などと強く反発している。野党も「同一労働同一賃金の実現」や「長時間労働の是正」という部分は欲しいが、抱き合わせで「残業代ゼロ」までは欲しくないというのだ。

ただ、野党にとって、特に民進党にとって気になるのは党最大の支持団体である連合の動向だ。働き方改革実行計画を取りまとめた政府の働き方改革実現会議に神津里季生会長がメンバーとして加わり、労基法改正案の早期成立を明記した実行計画も承認している。連合として改正案に賛成したといわれてもしようがない状況にあり、一本化された働き方改革関連法案が大きな波風も立たずに成立する可能性も出てきている。

神津氏は今年4月の記者会見で、労基法改正案について「いま出されている内容のままでいいとはとても思えない。ただ、連合としては是々非々ということもあるし、前に進めるべき内容もあって悩ましい」と指摘した。その上で、働き方改革関連法案との一本化に対し「何を最後に大事にしていくかが問われる」と述べ、改正案が修正されて一本化されるのならば賛成に回るとの含みを残した。自民党の厚労族議員は「連合とは昨年の段階から内々に改正案の修正で話ができている」と打ち明ける。

さらに、神津氏が10月の任期満了をもって退任し、後任に逢見直人事務局長が就任するとの見方が強まっていることも大きい。逢見氏は27年6月に首相公邸で安倍晋三首相と極秘に面会するなど安倍政権との関係は良好で、「逢見氏が会長ならば働き方改革関連法案の無風成立もあり得る」(政府高官)との声も上がる。

秋の臨時国会をめぐっては、安倍首相が神戸「正論」懇話会の講演で、自民党総裁として衆参両院の憲法審査会に党の憲法改正案を提出する意向を表明しており、これに反発する野党が働き方改革関連法案の審議でも対決姿勢を鮮明にする可能性がある。連合にはしごを外された民進党をはじめとする野党がどう出てくるか、秋の臨時国会は働き方改革も注目だ。

(政治部 桑原雄尚)

労働基準法改正案

労働時間ではなく仕事の成果に応じて賃金を決める新たな労働制度「高度プロフェッショナル制度」の導入を柱とする平成27年4月に国会提出された改正案(継続審議中)。対象者は厚生労働省令で「年収1075万円以上」と定め、研究開発者や為替ディーラーなど高度な専門業務に限定する。同時に働き過ぎを防ぐため、「年間104日以上の休日確保」など健康管理面で必要な措置を講じることも盛り込んでいる。

第1次安倍晋三政権で「ホワイトカラーエグゼンプション」の名称で同様の制度の導入を目指したが、野党が「残業代ゼロ法案」と批判したイメージが広く浸透し、法案提出が見送られた。

このほか改正案では、あらかじめ決めた労働時間より長く働いても一定の残業代しか払われない裁量労働制の対象職種を新商品開発の立案などに拡大する。過労対策として年5日の有給休暇の取得ができるよう企業側に義務付けることも明記した。

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