評伝

与謝野馨元財務相 「命ある限り」財政再建に全霊

【評伝】与謝野馨元財務相 「命ある限り」財政再建に全霊
【評伝】与謝野馨元財務相 「命ある限り」財政再建に全霊
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 議員引退を正式に決めた平成24年9月、声帯切除のため声を失い、筆談でやりとりする中、「色紙を贈りましょう」と毛筆で次の言葉をしたためてくれた。

 『友を選ばば 書を読みて 六分の侠気(きょうき) 四分の熱』

 与謝野鉄幹の「人を恋ふる歌」の一節だった。「一匹おおかみで、ドライな印象が強いが」と尋ねたら、ニヤッとしながら鉛筆書きで「この国への思いは人一倍熱いんだ」と答えた。

 「職人気質(かたぎ)」を自任し、団体規制法や郵政民営化、C型肝炎被害者救済、社会保障・税一体改革など数々の政策を主導した。永住外国人への地方参政権付与問題に関しても大きな役割を果たした。

 12年、自民党執行部に付与を容認する動きが出る中、後に「与謝野論文」と呼ばれる見解が流れを止めたのだ。

 『外国人の地方参政権問題には憲法上問題があると考えざるを得ない。従って、拙速な結論を出すことは適当ではない』

 作成した当時は党選挙制度調査会長だったが、発表直前に落選し、お蔵入りになっていた。党内論議を憂い、「憲法をないがしろにしている」として、執行部の許可がないまま公表を決断したのだった。

 中曽根康弘元首相の「秘蔵っ子」といわれ、一時は首相候補にも挙がった。一方で幾度もがんに侵され、「死」を意識せざるを得なくなっていた。

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