拉致40年 家族の慟哭(4)

「不思議な力で歯車がかみ合った」…局面を打開した少女の存在

 「もう子供のことは忘れたい」「あなたの声を聞くたび持病が悪化するんだ」

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 3アベックの1人、増元るみ子(63)=拉致当時(24)=の弟、照明(61)は「北朝鮮の証拠隠滅が怖かった」と話す。大韓航空機爆破事件で逮捕された工作員、金賢姫(55)が「教育係は日本人拉致被害者」と告白したときも沈静化を祈った。「政府が必ず取り戻すと信じていた。沈黙すれば時が解決してくれるはずだと」

 平成3年、金の教育係、李恩恵は田口八重子(61)=同(22)=と判明するが、拉致被害者ではなく「スパイ」とする面白半分の報道さえあった。拉致は再び氷河期に入った。

 転機は8年。朝日放送報道プロデューサーの石高健次(66)が韓国情報機関からつかんだ情報だ。「悲惨な事件がある。13歳の少女が拉致された」。石高は7年、原敕晁(80)=同(43)=の拉致に関与した男に韓国で直当たりし、犯行を認める証言を引き出した。「拉致事件は他にもある」。確信の中で得た衝撃の情報。裏取りへ走った。

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 ところが、いくら取材しても少女を特定できない。8年末には朝鮮専門誌「現代コリア」に情報を掲載。間もなく、新潟県のある講演会で石高論文の内容を知った県警幹部が声を上げた。

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