タレントで怪談家として知られる工業デザイナー、稲川淳二さんは平成23年秋、血液検査で異常が発覚した。昨年2月、前立腺がんを切除するロボット手術を受けた。開腹手術と異なり、腹部に約1センチ程度の小さな穴を複数開ける術式で、皮膚や筋肉を切開した痛みが少ないのが特徴。手術当日から歩けるほど順調に回復し、その夏のミステリーナイトツアーも無事、開催することができた。
「怪談ナイト」のツアーが終わりに近い一昨年10月の公演でした。突然、声が出なくなって。一時的に酸欠になったと思いました。もともと高血圧で、上は200を超えることもあった。自分ではそれほど心配しなかった。ただ、福岡の公演後、九州大の教授をしている高校時代の同級生らと飲んでいたら、「それは一度検査した方がいいぞ」と。それで翌日に血液検査をすることになったのです。
都内の病院で精密検査を受け、前立腺がんを告知されました。「先生、やりかけたこと、やり残したことがあるから、3年ぐらい時間をください」という気持ちで、話をしました。じたばたして、無理をして生きるのは嫌だったからです。